バファローズが悲願の日本一、佐々木朗希の完全試合、そして村上の56本塁打&三冠王……【SLUGGER編集部が選ぶ2022年プロ野球10大ニュース】<SLUGGER>

バファローズが悲願の日本一、佐々木朗希の完全試合、そして村上の56本塁打&三冠王……【SLUGGER編集部が選ぶ2022年プロ野球10大ニュース】<SLUGGER>

20歳の佐々木(左)と22歳の村上(右)が、ともに快挙を達成。球界に新時代がやってきたことを感じさせるような一年だった。写真:THE DIGEST写真部

2022年のNPBでは、さまざまな話題や出来事が生まれた。SLUGGER編集部が独断と偏見で選んだ「プロ野球10大ニュース」を紹介しよう。

●10位
秋山翔吾が広島で日本復帰

 2020年からMLBでプレーしていた秋山だが、今季はメジャーでの出場がないまま6月にパドレスから戦力外通告されて帰国を決断。古巣の西武やソフトバンクも手を上げる中、「今までしたことのない経験が出来る」との理由で、新天地はセ・リーグの広島に決めた。だが、44試合で打率.265、5本塁打といまひとつの成績に終わり、来季の本領発揮が期待される。

●9位
現役ドラフトが初開催

 埋もれている選手に一軍での出場機会を与えるため、選手会がかねてより要望していた現役ドラフトの導入が決定。12月9日に初めて実施された。もっとも、ドラフトに拠出する選手は球団側が選択するシステム。「これでは戦力外レベルの選手しか動かないのでは」との懸念もあったが、実際には陽川尚将(阪神→西武)のような実力派や、まさに趣旨に沿う「チャンスを欲しがっていた若手」である細川成也(DeNA→中日)が指名されるなど、まずまずの成果があった。チームを移った12人の来季の活躍が注目される。
 
●8位
異例の9球団がドラフト1位指名公表

 新人ドラフトでは毎年、事前に1位指名選手を公表するチームがいくつかある。だが今年は、9月末に巨人が浅野翔吾(高松商)の指名を真っ先に宣言すると、それに追随するように1位指名を公言するチームが続出した。結局、阪神、DeNA、ロッテを除く9球団に上り、しかも全員異なる選手だった。目玉となる選手が不在で、他球団の動きを牽制するための戦略が多発した形だったが、「誰の名前が呼ばれるか分からないというドラフトの醍醐味が失われた」と嘆く声も聞かれた。

●7位
BIGBOSSフィーバーもむなしく……日本ハム9年ぶり最下位

 15年以上も球界から離れていた新庄剛志が日本ハムの新監督に就任。登録名は「BIGBOSS」で、「優勝なんて目指さない」「今年1年はトライアウト」と従来の監督とは異なる発言を連発して話題となった。「勝敗を度外視する」との公言通りの采配の結果、9年ぶりの最下位。故障のジョン・ガントを除く支配下登録選手68人は全員一軍公式戦に出場するなど新旧交代を促進した一方、観客動員はリーグ5位の129万人と寂しい数字で、監督のパフォーマンスは人気増にはつながらなかった感も。
 ●6位
山本由伸が史上初の「2年連続投手五冠」

 昨年、勝利数・勝率・完封数・奪三振数・防御率の5部門でリーグ1位という、史上8人目の偉業を成し遂げた山本由伸(オリックス)。いまや「日本のエース」となった彼は今季も快投を続けた。15勝、勝率、205奪三振、防御率1.68は単独1位、2完封も1位タイで、2年連続五冠という史上初の快挙を達成した(完投数も昨年に続き1位で、実質的には六冠)。6月18日の西武戦ではノーヒットノーランも達成し、もちろんMVP投票でも2年連続1位。投手の連続MVPは稲尾和久(西鉄/58~59年)、山田久志(阪急/76~78年)に次ぎリーグ史上3人目で、24歳にしてすでに球史有数の投手に達したと言ってもおかしくない。

●5位
根尾昂(中日)が異例の投手転向

 大阪桐蔭高時代は、投打両方で素質を評価されていた根尾。18年のドラフトでは中日から遊撃手として指名されたが、外野に回されたりと起用法が定まらなかった上、何より肝心のバッティングが振るわず、レギュラーに定着できていなかった。すると5月21日、立浪和義監督は根尾をマウンドへ送り出す。ここで150キロの速球を披露したこともあり、投手への転向が正式に決まった。投手から野手への転向はいくらでも例があるが、その逆は極めて少数で、成功例もほとんどない。今季は25試合で防御率3.41とまずまずの成績を残したが、来季以降はどうなるだろうか。
 ●4位
驚異の投高打低で史上最多5回のノーヒッター

 投手のレベルが上がったのか、打者が下がったのか、あるいはその両方か。今季は例年になく投高打低の傾向が強かった。とりわけパ・リーグでは1試合の平均得点が3.50まで低下し、これは統一球時代の11~12年を除くと、1967年(3.47)以来の低水準。リーグ打率.240も、66年の.238以来の低さだった。

 その結果、4月10日の佐々木朗希(ロッテ)の完全試合を皮切りに、2リーグ分立後最多となる5回のノーヒッターが達成された。しかもうち4回はパ・リーグのカード(西武に至っては2度も食らってしまった)、残る6月7日の今永昇太(DeNA)も対戦相手は日本ハムで、しかも指名打者制ありの試合だった。この他、9回まで無安打だったが延長戦に入って安打が出た”ノーヒッター未遂”のケースも2試合あった。

 
●3位
オリックスが26年ぶりの日本一

 オリックスのリーグ優勝はあらゆる点で異例だった。首位に立ったのはわずか3日間で、優勝マジックは一度も点灯せず。だが、シーズン最終日の10月2日に、106日間にわたって1位に立っていたソフトバンクと同じ76勝65敗2分に並び、直接対決で15勝10敗と勝ち越していたために優勝が決まった。

 これは史上初の珍事で、最終日のV決定もパ・リーグでは63年の西鉄以来。2年連続のマジック点灯なしも初という記録づくめのVだった。得失点差は+32で、ソフトバンク(+84)に大差をつけられながらも、投手5冠の山本由伸を筆頭とした投手陣で優勝。主砲・吉田正尚を除けば迫力に欠けた打線をカバーした。

 クライマックスシリーズもソフトバンクに1敗しただけで勝ち抜き、2年続けてヤクルトと対戦した日本シリーズは、2敗1分の劣勢から4連勝。オリックスとしては26年ぶり、そして「バファローズ」の名を冠するチームとしては、近鉄が4度挑戦して果たせなかった日本一を初めて実現させた。
 ●2位
佐々木朗希(ロッテ)が28年ぶりの完全試合を達成

 4月10日のオリックス戦で、佐々木は今後二度とお目にかかれないような驚異的投球を繰り広げた。最速164キロの豪速球とフォークに打者はバットにまともに当てられず、初回2死に吉田正尚から空振り三振を奪ったのを皮切りに、4回1死まで8者連続空振り三振。次のブレイビック・バレラからも見逃し三振を奪ってプロ野球タイ記録の9者連続に並ぶと、続く吉田は再び空振り三振で新記録を達成。その後も13者連続まで記録を伸ばした。

 8回にも5度目の3者三振で1試合18奪三振とし、95年に野田浩司が記録した日本記録の19個が目前に迫った。9回は最初の2人が内野ゴロで新記録の可能性は潰えたものの、最後の打者・杉本裕太郎は三振でタイ記録達成。史上16人目、1994年の槙原寛己以来28年ぶりの完全試合を実現した。今季は12打席に1度しか三振しなかった吉田から3三振を奪ったのも凄かった。
  
 佐々木は次の登板となった17日の日本ハム戦でも、8回まで14奪三振で一人の走者も出さず、連続イニングパーフェクトは17回にまで達した。この時点で投球数は102。2試合連続完全試合の可能性もあったが、0対0の試合展開だったこともあり、疲労を考慮した井口資仁監督が降板を指示。前人未踏の「2試合連続完全試合」の夢が潰えたことには賛否両論が渦巻いた。
 ●1位
村上宗隆(ヤクルト)が56本塁打&史上最年少三冠王

 今年の村上の活躍は史上最高と言ってもいいかもしれない。打率.318/56本塁打/134打点でプロ野球史上8人目、セ・リーグでは1986年のランディ・バース(阪神)以来36年ぶりの三冠王。22歳での達成は史上最年少であった。内容的にも非の打ちどころがなく、本塁打数はリーグ2位の岡本和真(巨人)と3位の丸佳浩(巨人)の本数を合計した57本より、1本少ないだけ。打点に至っては、2位の牧秀悟(DeNA)と大山悠輔(阪神)に47点もの大差をつけた。

 そして周知の通り、シーズン最終打席で放った56号本塁打は、64年の王貞治が記録した55本を抜き、日本人登録打者としては史上最多となった。7月31日の阪神戦では第3打席から3打席連続本塁打、続く8月2日の中日戦でも最初の2打席連発で、5打席連続本塁打の新記録も樹立した。過去に4打数連続は21度あったが、誰も超えられなかった5打数連続の壁をいとも簡単に乗り越えた。

 確かに、2013年にウラディミール・バレンティン(ヤクルト)が打った60本塁打には届かなかった。OPSも同年のバレンティンは1.234で、今季の村上の1.168を大きく上回る。ただ、13年のセ・リーグはOPS.699で、今季(.678)よりかなり高かったことは考慮すべきだろう。2年連続のMVPにも満票で選出され、オフの契約更改では史上最速で年俸5億円超えも達成(6億円の3年契約)。3年後にメジャーリーグ挑戦も条件に盛り込まれた。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
 

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