【キャンプ展望:日本ハム】背番号「1」は誰がつかむ?清宮、万波、野村、二刀流ルーキーの矢澤…気になる新庄監督の禅譲先<SLUGGER>
2023年01月31日 06時30分THE DIGEST

就任2年目を迎える新庄監督。背番号「1」は北海道移転後の日本ハムでは第1号で、その後は森本稀哲、陽岱鋼、斎藤佑樹の3人しかつけていない。写真:THE DIGEST写真部
就任1年目の昨シーズンだけでは、適任者は現れなかったようだ。
日本ハムの指揮官・新庄剛志は、今季も現役時代と同じ背番号「1」をまとう。
就任時、新庄監督は背番号「1」の後継者探しをチームの課題として挙げていた。会見では次のように語っている。
「スター候補(となる選手)を僕が育てて、その子に背番号『1』をつけさせたい。それまでの間は僕が1番をつけまーす」
一見、おちゃらけた言い草にも聞こえたが、先に「自分が育てる」と語っているところに指揮官の覚悟が見える。
優勝は至上命題だが、育成においても手腕を発揮することができなければ仕事を果たしたとは言えないと、自身にプレッシャーをかけているようにも見えた。
候補となる選手はすでにいるし、新たに入団した選手たちもそこに入ってくるだろう。後は指揮官の考え方次第だ。
新庄監督は、おそらく「1」を早いうちに与えてしまうのではなく、育ててからという考えなのだろう。その方が余計なプレッシャーをかけることもないし、自他ともに「1」がふさわしいと認められるプレーヤーになってから背負うことに意味があると考えているのではないか。
ファンが最も期待を寄せているのは、やはり清宮幸太郎だろう。17年のドラフトで、7球団競合の末に当たりくじを引いたスター候補。同世代の村上宗隆(ヤクルト)はすでに日本球界トップクラスの選手となっているが、清宮も昨季、ようやく覚醒を感じさせる打撃を見せた。
高校時代からのバットスウィングを改良し、下から上にすくい上げるスウィングに変更。それが功を奏して初めて規定打席に到達し、18本塁打もマークした。打率が.219と低調で得点圏打率も低く、まだ確固たるレギュラーとまでは至っていないが、今季の活躍次第では新背番号「1」候補として一気に名乗りを挙げる可能性はある。
その次の候補となるのが、万波中正だ。
昨季は100試合に出場し、清宮と同じく2ケタ本塁打をマークするなどプチブレイクを果たした。こちらも打率.203と確実性はまだまだだが、地肩の強さや思い切りのいいスウィング、ユニークなコメントなどに新庄監督の現役時代と重なるところがある。「スター性」という点でも可能性のある一人だ。
3人目に挙げられるのが、今季から背番号「5」を背負う野村佑希だ。背番号「24」からの”昇格”で、「1」の候補からは外れた感もあるが、日本ハムの次世代を背負っていく打者であることは間違いない。昨季は93試合で6本塁打と持ち前の長打力は見せられなかったが、打率は.279をマーク。得点圏打率は.301と勝負強さも見せた。
世代の近い3人の争いに割って入りそうなのが、ルーキーの矢澤宏太と加藤豪将だ。
矢澤は「12」、加藤は「3」と、ともに入団早々から若い番号を当てがわれた。今後の活躍によっては「1」にふさわしい選手になる可能性を秘めている。
ドラフト1位の矢澤はプロでも二刀流を続ける予定。背番号「1」は投手、野手どちらにも似合う番号だ。
加藤は29歳のオールドルーキーだが、アメリカでのマイナー経験が豊富で、日本球界に新しい風を吹かせてくれるような存在だ。13年のMLBドラフトでは2巡目の高順位で指名された選手が日本でスター選手になる。そんなサクセスストーリーには「1」がふさわしいかもしれない。
新庄監督は「1」をつける選手の条件として、走攻守の三拍子が揃っていることやビジュアル、トーク力など、合計6つの項目を設けているという。冗談半分かもしれないが、それだけ多くの点で「認める」存在を作ることが、新庄監督にとっても、チームにとっても、大きな意味を持つことになる。
いつまでも指揮官が「1」をつけているようでは、日本ハムの未来は明るいとは言えない。新庄監督から禅譲される選手が現れた時こそ、本当の意味でチームが新しい時代に突入すると言えよう。
背番号「1」をめぐる争い。2023年の日本ハムはそこからスタートする。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
日本ハムの指揮官・新庄剛志は、今季も現役時代と同じ背番号「1」をまとう。
就任時、新庄監督は背番号「1」の後継者探しをチームの課題として挙げていた。会見では次のように語っている。
「スター候補(となる選手)を僕が育てて、その子に背番号『1』をつけさせたい。それまでの間は僕が1番をつけまーす」
一見、おちゃらけた言い草にも聞こえたが、先に「自分が育てる」と語っているところに指揮官の覚悟が見える。
優勝は至上命題だが、育成においても手腕を発揮することができなければ仕事を果たしたとは言えないと、自身にプレッシャーをかけているようにも見えた。
候補となる選手はすでにいるし、新たに入団した選手たちもそこに入ってくるだろう。後は指揮官の考え方次第だ。
新庄監督は、おそらく「1」を早いうちに与えてしまうのではなく、育ててからという考えなのだろう。その方が余計なプレッシャーをかけることもないし、自他ともに「1」がふさわしいと認められるプレーヤーになってから背負うことに意味があると考えているのではないか。
ファンが最も期待を寄せているのは、やはり清宮幸太郎だろう。17年のドラフトで、7球団競合の末に当たりくじを引いたスター候補。同世代の村上宗隆(ヤクルト)はすでに日本球界トップクラスの選手となっているが、清宮も昨季、ようやく覚醒を感じさせる打撃を見せた。
高校時代からのバットスウィングを改良し、下から上にすくい上げるスウィングに変更。それが功を奏して初めて規定打席に到達し、18本塁打もマークした。打率が.219と低調で得点圏打率も低く、まだ確固たるレギュラーとまでは至っていないが、今季の活躍次第では新背番号「1」候補として一気に名乗りを挙げる可能性はある。
その次の候補となるのが、万波中正だ。
昨季は100試合に出場し、清宮と同じく2ケタ本塁打をマークするなどプチブレイクを果たした。こちらも打率.203と確実性はまだまだだが、地肩の強さや思い切りのいいスウィング、ユニークなコメントなどに新庄監督の現役時代と重なるところがある。「スター性」という点でも可能性のある一人だ。
3人目に挙げられるのが、今季から背番号「5」を背負う野村佑希だ。背番号「24」からの”昇格”で、「1」の候補からは外れた感もあるが、日本ハムの次世代を背負っていく打者であることは間違いない。昨季は93試合で6本塁打と持ち前の長打力は見せられなかったが、打率は.279をマーク。得点圏打率は.301と勝負強さも見せた。
世代の近い3人の争いに割って入りそうなのが、ルーキーの矢澤宏太と加藤豪将だ。
矢澤は「12」、加藤は「3」と、ともに入団早々から若い番号を当てがわれた。今後の活躍によっては「1」にふさわしい選手になる可能性を秘めている。
ドラフト1位の矢澤はプロでも二刀流を続ける予定。背番号「1」は投手、野手どちらにも似合う番号だ。
加藤は29歳のオールドルーキーだが、アメリカでのマイナー経験が豊富で、日本球界に新しい風を吹かせてくれるような存在だ。13年のMLBドラフトでは2巡目の高順位で指名された選手が日本でスター選手になる。そんなサクセスストーリーには「1」がふさわしいかもしれない。
新庄監督は「1」をつける選手の条件として、走攻守の三拍子が揃っていることやビジュアル、トーク力など、合計6つの項目を設けているという。冗談半分かもしれないが、それだけ多くの点で「認める」存在を作ることが、新庄監督にとっても、チームにとっても、大きな意味を持つことになる。
いつまでも指揮官が「1」をつけているようでは、日本ハムの未来は明るいとは言えない。新庄監督から禅譲される選手が現れた時こそ、本当の意味でチームが新しい時代に突入すると言えよう。
背番号「1」をめぐる争い。2023年の日本ハムはそこからスタートする。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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