名捕手・古田敦也が植え付ける「バッテリーで勝つ」理論。セ界3連覇に欠かせない教えの真意は?【ヤクルト】
2023年02月07日 11時36分THE DIGEST

直に古巣の後輩たちのボールを受け取った古田氏。時折、檄を飛ばす姿は現役時代のそれだ。写真:岩国誠
昨季にセ・リーグ連覇を果たした東京ヤクルトスワローズ。2月6日、彼らの春季キャンプに臨時コーチとして参加する球団OBの古田敦也氏が合流した。
3年連続で臨時コーチとなった古田氏。合流初日となった6日はあいにくの雨となったが、ブルペンではWBC代表に選出された高橋奎二、そしてリリーフとして去年44試合に登板した4年目右腕の大西広樹の球を受けた。
「高橋奎二くんがね、何球か受けさせてくれるというので、受けさせてもらいました。ボール自体は悪くなかったですが、WBC球を投げていて、まだしっくりきていないようで『まだまだです』と言ってましたね。僕に簡単に捕られたのが悔しかったんじゃないですかね。ただ、去年の強化試合でも非常に良かったですし、あと1か月あるのでしっかり調整して日本のために頑張ってくれるんじゃないかと思っています」
高橋に対しては、キャッチボールと座って最初の数球を捕球したところで、こちらもWBC代表に選出された中村悠平と交代。しかし、昨年もボールを受けた大西に対しては、座って20球弱のボールを受け、ミット越しに現在のボールの質を確認。すると今度は打席に立って「しっかり投げろ!」と厳しい激を飛ばした。
「大西も去年、結構活躍はできたと思うので、今年はもう一段階飛躍の年。いいボールと悪いボールがちょっとはっきりしていて、自分でもいろいろと課題を持っていて、それを聞いたので克服できるようにと」
ちょうどその時だった。取材に訪れていた松坂大輔氏を呼び寄せた古田氏は、悩める大西へスライダーの指導を依頼。
伊藤智仁コーチも交え、豪華な顔ぶれから極意を伝授された大西は「感覚的な部分ですが、松坂さんから教わった感覚通りに投げた方が良かったので、しっかり投げ込んで自分のものにしたいと思います」と、手応えを感じていた。
3年前、古田氏が春季キャンプで初めて臨時コーチ就任したその年に、ヤクルトは最下位からリーグ優勝を達成。そして去年は連覇を成し遂げた。ゆえに今回はどのようなテーマで指導にあたるのかは興味深い。同氏は言う。
「二連覇していますけど、高津監督もバッテリーを含めた強化がチームにとって必要だと話していました。ちょっとずつ良くなってきたから、今の結果があると思うんですが、(去年は)オリックスに負けてしまった。また、新たな思いで今年を迎えて、とくに僕の担当はバッテリーということなので『バッテリーで勝つんだ』ということを伝えていきたいですね」 バッテリーで勝つ――。それは、臨時コーチ1年目から、古田氏が強く打ち出していた発言だ。その真意はどこにあるのか。
「どうしても守りの部分はピッチャーのイメージが強いと思います。ピッチャーが良かった、悪かったで、試合内容が評価される。だから『キャッチャーで勝つんだ!』っていう意識付けです。その意識によって、例えば、試合前の準備段階でも『このバッターを抑えるにはどうしたらいいか』と真剣に考える。
『前はやられたから、違うことをしないといけない』とか、そういうアイディアが出てきて、それを今度はピッチャーに『こういう球があったら、もっと抑えられるんじゃないか』と伝えるようになる。そういうコミュニケーションが大事で、結局は勝つためにどんなアイデアがあるかっていることを、キャッチャーから提案していかないといけない。そういう本当のコミュニケーションを、自信を持ってやれる責任が、キャッチャーには必要ということですね」
そんな古田氏の指導を受け、確かな成長を遂げたのが背番号27を継承し、チームの正捕手へと成長した中村悠平だった。
「中村もそれまでは、出たり出なかったりした時期もあったし、ベンチと勝負する部分があった。それが経験を積んで、自分で判断して思い切ったサインで相手がびっくりすることをやったりする。キャッチャーは相手の嫌がることをやるのが大事なことなので」
今年の浦添キャンプには中村のほか、去年74試合に出場した3年目の内山壮真、6年目の松本直樹、7年目の古賀優大が、捕手として参加。期間は12日までと短いが様々な方法で「バッテリーで勝つ」術を植え付けていく。
取材・文●岩国誠
[著者プロフィール]
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。
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3年連続で臨時コーチとなった古田氏。合流初日となった6日はあいにくの雨となったが、ブルペンではWBC代表に選出された高橋奎二、そしてリリーフとして去年44試合に登板した4年目右腕の大西広樹の球を受けた。
「高橋奎二くんがね、何球か受けさせてくれるというので、受けさせてもらいました。ボール自体は悪くなかったですが、WBC球を投げていて、まだしっくりきていないようで『まだまだです』と言ってましたね。僕に簡単に捕られたのが悔しかったんじゃないですかね。ただ、去年の強化試合でも非常に良かったですし、あと1か月あるのでしっかり調整して日本のために頑張ってくれるんじゃないかと思っています」
高橋に対しては、キャッチボールと座って最初の数球を捕球したところで、こちらもWBC代表に選出された中村悠平と交代。しかし、昨年もボールを受けた大西に対しては、座って20球弱のボールを受け、ミット越しに現在のボールの質を確認。すると今度は打席に立って「しっかり投げろ!」と厳しい激を飛ばした。
「大西も去年、結構活躍はできたと思うので、今年はもう一段階飛躍の年。いいボールと悪いボールがちょっとはっきりしていて、自分でもいろいろと課題を持っていて、それを聞いたので克服できるようにと」
ちょうどその時だった。取材に訪れていた松坂大輔氏を呼び寄せた古田氏は、悩める大西へスライダーの指導を依頼。
伊藤智仁コーチも交え、豪華な顔ぶれから極意を伝授された大西は「感覚的な部分ですが、松坂さんから教わった感覚通りに投げた方が良かったので、しっかり投げ込んで自分のものにしたいと思います」と、手応えを感じていた。
3年前、古田氏が春季キャンプで初めて臨時コーチ就任したその年に、ヤクルトは最下位からリーグ優勝を達成。そして去年は連覇を成し遂げた。ゆえに今回はどのようなテーマで指導にあたるのかは興味深い。同氏は言う。
「二連覇していますけど、高津監督もバッテリーを含めた強化がチームにとって必要だと話していました。ちょっとずつ良くなってきたから、今の結果があると思うんですが、(去年は)オリックスに負けてしまった。また、新たな思いで今年を迎えて、とくに僕の担当はバッテリーということなので『バッテリーで勝つんだ』ということを伝えていきたいですね」 バッテリーで勝つ――。それは、臨時コーチ1年目から、古田氏が強く打ち出していた発言だ。その真意はどこにあるのか。
「どうしても守りの部分はピッチャーのイメージが強いと思います。ピッチャーが良かった、悪かったで、試合内容が評価される。だから『キャッチャーで勝つんだ!』っていう意識付けです。その意識によって、例えば、試合前の準備段階でも『このバッターを抑えるにはどうしたらいいか』と真剣に考える。
『前はやられたから、違うことをしないといけない』とか、そういうアイディアが出てきて、それを今度はピッチャーに『こういう球があったら、もっと抑えられるんじゃないか』と伝えるようになる。そういうコミュニケーションが大事で、結局は勝つためにどんなアイデアがあるかっていることを、キャッチャーから提案していかないといけない。そういう本当のコミュニケーションを、自信を持ってやれる責任が、キャッチャーには必要ということですね」
そんな古田氏の指導を受け、確かな成長を遂げたのが背番号27を継承し、チームの正捕手へと成長した中村悠平だった。
「中村もそれまでは、出たり出なかったりした時期もあったし、ベンチと勝負する部分があった。それが経験を積んで、自分で判断して思い切ったサインで相手がびっくりすることをやったりする。キャッチャーは相手の嫌がることをやるのが大事なことなので」
今年の浦添キャンプには中村のほか、去年74試合に出場した3年目の内山壮真、6年目の松本直樹、7年目の古賀優大が、捕手として参加。期間は12日までと短いが様々な方法で「バッテリーで勝つ」術を植え付けていく。
取材・文●岩国誠
[著者プロフィール]
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。
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