侍ジャパン、2連戦の打者陣チェック! 難敵SB相手に強烈な存在感を示したのは? 無安打も山田、村上、山川の内容に明暗?

侍ジャパン、2連戦の打者陣チェック! 難敵SB相手に強烈な存在感を示したのは? 無安打も山田、村上、山川の内容に明暗?

試合ではノーヒットに終わったが、ダルビッシュとのライブBPで柵越えを放つなど、力は発揮していた。写真:梅月智史

第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に挑む侍ジャパンが直前合宿を27日に打ち上げた。
 現役メジャーリーガーのダルビッシュ有(パドレス)が参加する異例のキャンプは、連日2万人弱ほどの観客を集めて、大いに盛り上がった。過去最高クラスとも呼び声が高い、今年の侍ジャパンだが、直前合宿の最終クールでは2試合の対外試合をこなした。かつてないほどの合宿期間をとった今回はそれだけでも本気度を示すが、さて、選手たちの仕上がり具合はどの程度まで来たのか。主力選手たちの合宿でのパフォーマンスを振り返りながらその仕上がり具合を検証していきたい。
 本稿では、福岡ソフトバンクホークスとの強化試合2戦を通じて気になった8人の打者たちの出来について振り返っていく。 文=氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

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近藤健介(福岡ソフトバンクホークス)
4打数4安打 1打点 3得点 2四球 三振 0
 6つの打席は全て出塁をマーク。仕上がりの良さを見せた。1戦目は4番・村上宗隆の後を打ったが、村上が三振に倒れた後に回った打席でつなぎ、あるいは四球で歩かされた後も適時打を放って“主砲の後ろ”の役目を果たした。出塁、つなぎ、打点と全てでチームに貢献した。

 2番に入った第2戦でも3打席、全て出塁。2点ビハインドの5回表は先頭・山田哲人の四球を安打でつなぎ好機を拡大している。初戦が終わった後に「まだ変化球の対応ができていない」と課題を挙げたが、1打席目に、ソフトバンクの藤井皓哉のカーブをセンターへ弾き返した。課題を口にしてさっそく一発回答するなど順調に来ている。外野陣はメジャー組がいるため熾烈なレギュラー争いになるが、強烈な存在感を示している。


岡本和真(読売ジャイアンツ)
7打数3安打 4打点 1得点 
 本職のサードだけでなく左翼を守れることを合宿中にアピール。控えが濃厚と言われている中、猛烈なアピールでレギュラー争いに名乗り出た印象だ。特に、一塁での出場となった初戦は4回1死満塁から右中間を破る適時二塁打。それも初球の変化球を打ち返す芸を見せての鮮やかな一打は仕上がりの良さを印象付けた。続く打席も満塁で迎えたが、左翼前へ弾き返す適時打。今度はストレートを引っ張ってのもので対応力の良さも光った。

 3番に入った2戦目は1点ビハインドの1死3塁でセカンドゴロを打って、走者の生還をアシストした。本来岡本が求められるのは長打であり、弱気な打席にも見えたが、それでも、状況に応じたバッティングができるところを見せつけた。キャラクターも明るく、アピールに成功している。

【PHOTO】「背高っ!!」「顔小っちゃい」選手をより近くで感じられるサブグラウンドでの練習も大盛況!侍ジャパン宮崎キャンプ村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ)
4打数0安打 1三振 3四球
 ダルビッシュのライブBPでホームランを放つなどココというところでの一打のインパクトはさすがだが、合宿中の調子自体は本来のものから程遠かった。ソフトバンクとの2試合でも4打数無安打と快音を残すことはできなかった。ただ、調子がイマイチにせよ3四球を選べているところからもどん底というほどではなく、ボールの選球はしっかりできていると言える。

 おそらく、「強打者の宿命」とも言えるが、国内では村上にストライクを真正直に投げてくるケースは極めて少なくなってきているのではないか。さらなる進化を考えていくと2打席で1球だけのストライクをとらえていくくらいの勝負をしてかなくてはいけないかもしれない。実践が少ない中で、どうアジャストしていくか。マークが厳しくストライクが来ない中で「たったの1球」を仕留めていく。いずれにせよ、それができた時には村上はさらなる強打者の階段を駆け上がっていることだろう。

 山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)
6打数0安打 1得点 0打点 4三振 1四球
 強化試合の2試合の結果だけを見ると昨季の不調をそのまま引きずっているかのようだが、内容は極めていい。絶頂期の山田に戻りつつある。いつでも長打が飛び出そうな怖い雰囲気はある。もともと、天才肌のように見えて練習の虫でバットの振り込む量はチームトップクラス。足を上げてフルスイングしていくスタイルだけに、実戦が遠ざかっていると「対投手」へのアジャストに時間をかけなければいけない。

「実戦がなかった分、自分のことをしっかり練習できた」と山田は合宿を振り返っている。試合の回数をこなしていくうちに、芯で捉える確率は増えてくるだろう。“三振はホームランの必要経費”。ここでの4三振を意味があるものにして「国際大会に強い」が山田が甦ってくるはず。


山川穂高(埼玉西武ライオンズ)
4打数0安打 1得点 1四球 1三振
 侍ジャパンのムードメーカーとも言える。守備練習では大きな声を張り上げ、打撃練習では爽快な打撃を飛ばして球場を盛り上げた。一方、最後まで球場に残って打ち込みをするなど常にバットを握っている。取材対応、ファンサービス、何においても存在感は際立っていた。強化試合では4打数無安打と元気がなかった。

 練習では「2017年のいい時の感覚に近いものがある。それを試合に出せるかどうか」と言っていただけに、結果につなげたいところ。1戦目は間合いが取れていたが、2戦目はやや悩みに入っている感じだ。試合に入る前に、ダルビッシュとライブBPで対戦。全く手が出ず、その感覚が試合の打席にも影響した印象だ。「一発を期待されていると思う」と自分の役割を誰よりも理解している。ムードメーカーだけに、「苦しいところでの一発」で状況を打開してくれる選手であることは間違いない。
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 中野拓夢(阪神タイガース)
4打数3安打 1打点 2四球

 二遊間を守れるユーティリティでバックアップする役割での選出の印象があったが、強化試合2試合で、強烈に存在感をアピールした。2試合で4打数3安打だが、1戦目のタイブレーク練習でも適時打を放っており、実質、5打数4安打2打点と大活躍している。

 小柄ながら、バットを振り上げるスイングでゴロを転がすタイプではない。その分、力強さが必要になるが、しっかり仕上げてきたようで、どんなボールにもタイプできていて、安打を量産している。2021年に盗塁王を獲得した足も健在。守備面では正遊撃手の源田壮亮に敵わないが、攻撃面でのアピールが続けばスタメン奪取も十分にあり得る。

中村悠平(東京ヤクルトスワローズ)
4打数1安打 0得点 1四球 0打点
 東京五輪で正捕手を務めた甲斐拓也に待ったをかける。インサイドワークに優れ、投手の良さを引き出すタイプの捕手として、その力をいかんなく発揮している。ダルビッシュの2回目のBPでもバッテリーを組み、上手く操っていた。バッティングの面で大きいのは期待できないが、どんな球に対してもセンター方向にきっちり打ち返す打撃は徹底できていた。2試合での凡打内容も中身のあるものばかりだった。

 ダルビッシュとのライブBPでも安打性を放つなど自分のポイントをしっかり熟知している印象だった。数少ない送りバントもしっかり決めて役割をこなす。ベンチは対戦相手や投手によって捕手を選んでいく可能性もあり、現状「正捕手は決まっていない」。2年連続、ヤクルトをリーグ制覇に導いたインサイドワークは侍ジャパンでも発揮してくれそうだ。


周東佑京(福岡ソフトバンクホークス)
6打数2安打 2得点 0四球 1打点
 自身の役割を本当によく理解している。内外野を守れるユーティリティとしてもともと必要不可欠な存在だったが、試合の苦しい場面で足を、見せてくれそうだ。強化試合では1戦目の8回裏に2死から二塁打で出塁。続く打者のセカンドゴロの間に飛び出してしまうが、相手のミスを誘って生還。

 途中出場した2戦目は5回表、無死1、3塁から代走として一塁走者に。投手の暴投から二塁を狙うと、これが相手守備のミスを誘った。1点を呼び込むだけでなく、自身も三塁まで進み、続く岡本和真のセカンドゴロの間に生還。周東の足で2点を奪ったと言えた。同点の9回には1死から左翼前安打で出塁。盗塁を試みると、これが相手のミスを誘って三塁に到達。源田の適時打で生還した。「足」で強烈なインパクトを残している。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
【動画】SB2連戦で好調をアピール! 岡本和真の先制タイムリー二塁打

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