異例の古巣・西武への“出戻り”。佐藤龍世が松井監督もうなる守備の“ユーティリティ”を最大発揮も「あそこで打たないと」

異例の古巣・西武への“出戻り”。佐藤龍世が松井監督もうなる守備の“ユーティリティ”を最大発揮も「あそこで打たないと」

犠牲フライで打点を挙げ、好守も見せた佐藤。しかし、最終回の打席で課題が見えた。写真:榎本誉士

埼玉西武ライオンズは8日、今シーズン初のホームゲームを人工芝を新しく張り替えたベルーナドームで開催。マスク着用の元、解禁となった声援が響き渡る中、攻守で存在感を見せたのは、2021年に日本ハムへトレードされ、昨シーズンオフに再び西武へ戻ってきた佐藤龍世だった。

「ライオンズに戻ってきて、初のベルーナドームでの試合だったので、まずは1本(ヒットが)欲しかった」と話した佐藤龍。1点を追いかける7回裏、この回から登板した中日5番手・谷元から、連打を送りバントで1死二、三塁で打席が回ってきた。

「いい流れで打席が回ってきましたし、試合も均衡していたので、まずは1点。最低限のバッティングを狙っていきました。(外野を)越えてくれと思ったんですが、ちょっと上がりすぎたかな」

 ライオンズ名物「チャンステーマ」の前奏が流れ始める中、外角低めへの速球を逆らわずに右中間へ。犠牲フライには十分の飛距離で、チームは同点に追いつき、レフトスタンドから大きな歓声が沸き起こった。

「ライオンズファンの方々の熱い声出し応援、本当に励みになりますし、気合が入ります!」
  再びライオンズのユニフォームに袖を通してのベルーナドーム。気持ちが昂らないはずがない。しかし、プロ入り5年目を迎える26歳は、努めて冷静に打席に立っていた。

「ヒットになればいいんですけど、欲を持たずに。引っ張りに行って欲を出さない。谷元さんは横(変化)のピッチャーだったのと、セカンドも前に出ていたので、ちょっと詰まってポテンヒットくらいの気持ちでいきました」

 アピールするには絶好の場面。若い頃なら我欲を出して、強引に引っ張り、ただアウトを増やしていたかもしれない。時にはそういうガムシャラさも必要だろう。しかし佐藤龍は、1点を追いかける終盤であること、相手投手のタイプ、内野手の位置などをしっかり把握し、状況に適した打撃でチームに得点をもたらした。 そして3回表には、8番・龍空が変化球を引っ掛けたボテボテのサードゴロを、前進しながら捕球しジャンピングスロー。「昨日の練習から新しい芝の感触もしっかりチェックできていましたし、いい感覚でゴロをさばくことができました」と、しっかりとした準備で一塁へのストライク送球。守備でも存在感を見せた。

「動きも非常に良かったですね。B班(高知・春野キャンプ)スタートでしたが、しっかりとやってきてくれたのかなと思います。(今日は)サード、ファースト、セカンドと龍世に守ってもらいましたけど、これもいろんなことを想定しながら。いろんなパターンがあるよっていうことね」

 試合後、松井稼頭央監督もその動きを評価し、今後もユーティリティ的な起用の可能性を示唆。ライオンズ復帰戦で好アピールを見せた佐藤龍だったが、1点反省も忘れていなかった。

「あそこで打たないとですね」
  9回2死一塁から、代走・西川愛也が盗塁を決め、カウントは3-1。絶好のバッティングカウントだったが、結果はショートフライ。試合は引き分けで終わった。

「真っ直ぐを狙いに行きました。インコースだったんですけど、もっとコースとかは割り切って。最悪空振りでもいいところを、自分のどこかで『ボール球を空振りしたくない』っていうのがあったので、引きつけた結果あそこに飛んでしまった。いい勉強になったので、こういうミスをしないようにしたいです」

 現在、内野手はレギュラー候補筆頭の一塁・山川穂高、遊撃・源田壮亮のほか、昨年ユーティリティ的に起用された呉念庭(台湾)がWBCに参加するため不在だが、開幕一軍枠を争う内野手のライバルは多い。そう質問すると「やることは変わらない」と、その眼に力を込める。

 思い起こせば5年前。新人として、初めて訪れた旧若獅子寮の玄関先。報道陣に持ってきたものを尋ねられ、友人たちから送られた大漁旗を初々しい表情で広げた。当時、「31」だった背番号は「58」に変わった。北の大地で心境や意識の変化もあっただろう。異例ともいえる短期間での古巣復帰をどうチャンスに変えていくのか。佐藤龍世のライオンズ第二章は始まったばかりだ。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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