野球少年に戻った時に現れた“真価”。大谷翔平の素晴らしさが詰まったイタリア戦「魂を持ってやるんだ」【WBC】

野球少年に戻った時に現れた“真価”。大谷翔平の素晴らしさが詰まったイタリア戦「魂を持ってやるんだ」【WBC】

投打で“チームを勝たせる”プレーを披露した大谷。海外記者も驚かせるハイパフォーマンスだった。写真:鈴木颯太朗、(C)Getty Images

「二刀流はチームを勝たせるためにあるんだということだけを願ってる」

 去る3月8日の記者会見で、栗山英樹監督が大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)について語った言葉だ。これは2013年に花巻東高校からドラフト1位で日本ハムに入団した彼の二刀流継続を後押しし、メジャー移籍をするまでの4年間、さまざまな障壁を乗り越える天才を見つめてきた指揮官だからこその考え方と言えよう。

 3月16日に東京ドームで行なわれたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のイタリア代表戦。日本代表が9対3で快勝したこの試合で大谷が見せたプレーは、まさしく栗山監督が願ったものだった。

 負けたら終わりのノックアウトステージで「3番・DH兼投手」で先発した大谷は、投打で球場のムードを変えた。
  まず、投げては一球ごとに「ウォリャッ!」「オッシャッ」と叫び、気迫を前面に押し出した投球で4回2/3(71球)を投げて2失点ながら5奪三振をマーク。本人が「テンポよくある程度、球数を抑えながら投げられた」と振り返ったように、スライダーとMAX164キロを記録した4シーム、そしてスプリットを駆使し、イタリア打線を翻弄した。

 一方で打っては1安打に終わったものの、その一本は敵将マイク・ピアザが「本当に驚いた。我々の守備を瞬時に理解して、抗おうとしたんだ」と脱帽した、まさかのバントヒットだった。

 3回裏1死一塁の場面、長打を警戒し、ライト寄り守備シフトを敷き、イタリアナインの守る三塁方向はがら空きだった。ここを大谷は見逃さなかった。相手投手の投球と同時にスッとバントを寝かせて行なった“奇襲”は、結果的に相手のエラーを誘って1死一、三塁という好機演出に繋がった。全ては「リスクを回避しながら、なおかつハイリターンを得られるチョイス」が生んだワンプレーだった。

 チームを勝たせるために投打で違いを生み出した。その出色のパフォーマンスは、二刀流の真価を発揮したと言えるものであり、観る者を興奮させるものだったのは間違いない。事実、この日の東京ドームも彼の一挙手一投足に熱狂。それは米記者たちが「凄い」と驚きを持って伝えたほどの異様なムードだった。 試合後、栗山監督は「翔平らしい」と“愛弟子”のプレーを、目を細めながら、どこか感慨深げに振り返った。

「ずっと彼を見てきて、翔平らしさが出るときっていうのは、実はああいうときで。投げる、打つは別として、『この試合は絶対勝ちにいくんだ』と、野球小僧になりきった時に彼の素晴らしさが出る。翔平の話ってあんまりしないですけど、そういう彼の想いって見てる人も感じてくれたと思う。そういう魂を持ってやるんだっていうところが見れたのは良かったと思う」

 思い返せば、メジャー史上初の「30本塁打以上&2桁勝利」「投打でのダブル規定到達」と快挙を達成した昨季も、“野球少年”のような姿を見せた時ほど大谷の異能ぶりは発揮された。とりわけ筆者が印象深いのは、昨年6月9日のボストン・レッドソックス戦だ。

 当時のエンジェルスは球団ワーストの14連敗中。名将ジョー・マッドン監督を更迭し、ヘッドコーチだったフィル・ネビン(現監督)を監督代行とするなど、泥沼にハマっていた。そのなかで二刀流で先発した大谷は、打っては逆転2ランを放ち、投げても7回、1失点、6奪三振の熱投を披露。マウンド上で幾度となく叫び、気迫でチームを鼓舞し続ける姿には、強いインパクトを受けた。
  もちろん代表と所属チームでは求められる役割は異なる。しかしながら、とにかく勝つために自分がなんとかするという姿勢は変わらない。そして、そんな大谷の気迫はチームにも伝播する。16日のイタリア戦で、打率1割台で苦しんでいたなかで、5回裏にタイムリーツーベースを放った村上宗隆(ヤクルト)は言う。

「今日に懸ける想いは伝わってきました。僕らも負けたら終わりでしたし、大谷さんの作ってくれた勢いに乗っていけました」

 ここから侍ジャパンはマイアミに移って準決勝に挑む。対戦する可能性がある相手は、いずれも大物メジャーリーガーたちを擁した強国ばかりだ。しかし、そんな“野球の本場”を舞台にしたビッグゲームでこそ、極限のプレッシャーのなかで結果を残してきた大谷に期待をせずにはいられない。

取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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