“弟分”から“兄貴分”へ――阿部慎之助の背中を追いかける攻撃型捕手・大城卓三の目覚ましい成長【密着女子アナが見た巨人】

“弟分”から“兄貴分”へ――阿部慎之助の背中を追いかける攻撃型捕手・大城卓三の目覚ましい成長【密着女子アナが見た巨人】

本塁打は早くも10本。自身初の20本塁打到達も夢ではない。写真:産経新聞社

“打てる捕手”と聞いて、皆さんは誰を思い浮かべるだろう?

 巨人なら、通算406本塁打を放った阿部慎之助(現一軍ヘッドコーチ兼バッテリーコーチ)さんが代表格。通算400本塁打達成は、球団では王貞治さん、長嶋茂雄さんに次ぐ3人目で、捕手としては史上初。球界屈指の“打てる捕手”として、数々の記録を数々打ち立ててきた。

 そして今、その偉大なレジェンドの背中を追い、“打てる捕手”として存在感を高めているのが、大城卓三選手だ。

「(阿部さんは)大きな存在です。身近にいるから、守備のことも攻撃のことも聞けるので、少しでも近付けるかな」

 阿部慎之助を目標にし、その本人から直接アドバイスをもらって、距離を縮めるための努力をしている。今季の大城選手は、ここまで62試合(先発マスクは60試合)に出場し、スタメンから外れたのは5試合のみ。2年ぶりの5番を務め、クリーアップを担った試合もある。

 本塁打も現在、チーム2位の10本放っている(セ・リーグの捕手では、阿部慎之助以来の3年連続2ケタ本塁打)。その中でも印象的だったのが、5月20日の中日戦でのプロ入り初の満塁本塁打だ。 打った瞬間、それと分かる特大アーチに「完璧に捉えることができました。」と、本人も満足げに振り返っていた。グランドスラムは、プロ入り初どころか人生初だったようで、「思い出に残るホームランになったし、嬉しいです。」と喜んでいた。

 大城選手は、2017年ドラフト3位で「打撃が魅力の捕手」として入団した。その期待に応えるべく、ルーキーで開幕一軍入りを果たし、開幕戦代打で出場し、初打席・初安打を記録した。さらに、開幕3戦目では、8番・捕手として先発出場。開幕カードでルーキーが先発マスクをかぶるのは、巨人では、こちらもまた阿部慎之助さん以来17年ぶりのことだった。大城選手は華々しいデビューを果たしたのだ。

 私が巨人の担当リポーターになったのも18年からだったので、同期入団の同じ“ルーキー”として、大城選手が頑張る姿に刺激を受けていた。

 プロ入りしてから大きな怪我は一度もなく、不振で二軍に降格したのも昨年の一度だけ。ほとんど一軍の戦場にいて、成長曲線を描いている。プロ2年目には、勝負強い打撃を買われ、本職ではない一塁で起用されたこともあった。

 3年目にベストナインを受賞、4年目にはリーグトップの盗塁阻止率.447を記録するなど、守備でも成長を見せた。そして、6年目の今年はWBC日本代表のメンバーに選出された。

「(アメリカの)球場の雰囲気やスケールの大きさ、世界ってこんなに凄いんだな」。純粋な子供のような表情で振り返っていた。
  ダルビッシュ有(パドレス)投手の球をブルペンで受けた時には「初めて受けた球だった。」と、度肝を抜かれた。大谷翔平(エンジェルス)選手の飛び抜けた打撃力を目の当たりにした時は「もっと自分もやらないといけない。」と、大きな刺激を受けた。

 そして、捕手仲間でもある中村悠平(ヤクルト)選手と甲斐拓也(ソフト)選手をベンチから見ていて、試合中によくマウンドに行って、投手に声をかける姿を勉強した。点を取られても引きずらない「気持ちの切り替え」の部分も学んだ。

 そして何より、ダルビッシュ投手が常々みんなに声をかけていた「チームとして、楽しくやろう」という言葉で、プレーを楽しむマインドを思い出した。「本当に自分にとっていい経験になったし、凄いところで(野球を)やらせてくれて、感謝しかない」

 WBCでの経験は、本人の大きな財産となった。そして、自分が体感したその経験をジャイアンツの若い選手たちに伝えているとも話していた。

 大城選手が入団した頃は、捕手陣に阿部慎之助さんや炭谷銀仁朗選手、小林誠司選手がいて、大城選手はいわゆる“末っ子”だった。高校・大学の先輩でもあるエース菅野智之投手と初めてバッテリーを組んだ時に「緊張した~」と、初々しく漏らしていたのも覚えている。 そんな“弟”だった大城選手が、今では「WBCの経験をもっと口に出していきたい」と話し、若い投手陣を引っ張り、積極的にマウンドやベンチで声をかけている。「若い投手が多いので、その投手の良さを引き出せるように(リードしたい)」「自分が守る時は勝ちにこだわりたい」と堂々と話すその様子は“兄”の姿に変わっていた。

 原辰徳監督は、阿部慎之助の姿に重ねるのは「まだ早いかもしれないけれど」と言いつつ、「相手チームはあまりいい存在ではないと思っているのではないでしょうか」と期待を込めながら語っている。

 巨人の“打てる捕手”は壁が高いが、大城選手は着実に一つ一つ階段を上っている。

「昨年は悔しい思いをしているので、ジャイアンツの一員として、優勝、日本一を目指したい。今度はジャイアンツのために戦いたい。」

 さぁ、今日も戦場に向かう背中を私たちは声援で後押ししよう。

文●真鍋杏奈(フリーアナウンサー)

まなべあんな。ホリプロ所属。フリーアナウンサー。ラジオ日本「ジャイアンツナイター」リポーターやYouTube「プロ野球OBクラブチャンネル」MCを担当。その他、社会人野球、高校野球の番組を務める。

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