夏の補強戦線で「オールイン」のエンジェルスが急失速、「一歩後退」のマリナーズが急浮上...なぜ2チームにこれほどの差がついたのか<SLUGGER>
2023年08月16日 06時00分THE DIGEST

トレード市場で積極的に補強を展開したエンジェルスだが、結果は......(C)Getty Images
今から約2週間前、エンジェルスとマリナーズはほぼ同じポジションにいた。7月31日時点の勝敗はエンジェルスが56勝51敗でワイルドカード3位から3ゲーム差、マリナーズは55勝51敗で3.5ゲーム差という状況だった。
しかし、トレード・デッドラインで両チームは対照的な道を選んだ。
すでにルーカス・ジオリトらを補強していたエンジェルスがロッキーズからランダル・グリチックとCJ・クロン、メッツからドミニク・リオンを獲得して「オール・イン」の姿勢を鮮明にしたのに対し、マリナーズはクローザーのポール・シーウォルドとベテラン外野のAJ・ポロックを放出。プレーオフ進出を完全にあきらめたわけではないとはいえ、「現状維持」どころか「一歩後退」という形になった。
それから約2週間の両チームの戦いぶりもまた対照的だ。エンジェルスは8月1日からまさかの7連敗を喫するなど、8月は3勝9敗とまさかの急失速。とりわけ痛かったのは4日からのホームでのマリナーズ4連戦に全敗したことで、これによってほぼ息の根を止められる結果となった。
一方のマリナーズは、そのエンジェルス戦4連勝も含めて8月は8勝4敗。ワイルドカード争いではエンジェルスだけでなくレッドソックス、ヤンキースも抜いて3位まで2ゲーム差に迫っている。
なぜ両チームにこれほどまでに差がついたのか。要因は大きく分けて2つある。
①エンジェルスの投手力不足
エンジェルスはデッドライン・トレードでジオリト、レイナルド・ロペス、そしてリオンを獲得した。だが、チームの現状を踏まえれば、先発もリリーフもさらに戦力底上げを図るべきだった。
先発陣は大谷翔平に次ぐ2番手以降が明らかに弱く、ブルペンもカルロス・エステベス、マット・ムーア以外は頼りない状態だった。しかもエステベスの投球内容が不安定になっていたことを踏まえれば、ジオリトとロペスだけでは足りないのは目に見えていた。
加えて、同地区のライバルであるレンジャーズがマックス・シャーザーとジョーダン・モンゴメリー、アロルディス・チャップマンを、アストロズがジャスティン・バーランダーとケンドール・グレイブマンを補強。結果、3チームの中で投手力が最も劣るエンジェルスが結果的に最も小幅な補強に終わってしまった。
しかも、ジオリトは移籍後2試合続けて炎上。他の投手も乱調で、8月のチーム防御率はMLBワーストの6.53と、投手陣は完全に崩壊してしまった。②そもそものチーム力の差
こう書いてしまうと身も蓋もないが、そもそもマリナーズとエンジェルスでは地力に差があったと言わざるを得ない。
もっと言えば、「若い力」の差だ。8月のマリナーズを見ると、フリオ・ロドリゲス、カル・ラリー、ジョージ・カービー、7月下旬に昇格したばかりのケイド・マーロウと若手選手の活躍が目立つ。そもそも、シーウォルドを放出したのも、24歳のアンドレス・ムニョスにクローザーとして使える目処が立ったからで、そのムニョスは8月に入って4回連続セーブ成功を記録している。
対してエンジェルスは、ただでさえ若手選手の層が薄い上にザック・ネトが故障で離脱、ミッキー・モニアックも8月に入って快音が消えた。投手陣でも、リード・デトマーズが大炎上してチェイス・シルセスの健闘をかき消してしまっている。 つまり、たとえデッドライン時点でほぼ同じ成績だったとしても、マリナーズは主力にまだ上がり目のある選手が多い、言わば余力を残した状態で、対照的にエンジェルスはアップアップで何とか水面に顔だけ出しているような状態だった。それだけに新加入選手の活躍に期待したいところだったが、ほとんど不発。ついに力尽きて、どんどん沈んでいってしまった格好だ。
デッドライン時点で19.5%だったエンジェルスのプレーオフ進出確率は、今では1.6%にまで萎んでしまった。一方、マリナーズは35.1%にまで上昇。この、あまりにも厳しい現実をペリー・ミナシアンGMはどのように受け止めているのだろうか。
構成●SLUGGER編集部
しかし、トレード・デッドラインで両チームは対照的な道を選んだ。
すでにルーカス・ジオリトらを補強していたエンジェルスがロッキーズからランダル・グリチックとCJ・クロン、メッツからドミニク・リオンを獲得して「オール・イン」の姿勢を鮮明にしたのに対し、マリナーズはクローザーのポール・シーウォルドとベテラン外野のAJ・ポロックを放出。プレーオフ進出を完全にあきらめたわけではないとはいえ、「現状維持」どころか「一歩後退」という形になった。
それから約2週間の両チームの戦いぶりもまた対照的だ。エンジェルスは8月1日からまさかの7連敗を喫するなど、8月は3勝9敗とまさかの急失速。とりわけ痛かったのは4日からのホームでのマリナーズ4連戦に全敗したことで、これによってほぼ息の根を止められる結果となった。
一方のマリナーズは、そのエンジェルス戦4連勝も含めて8月は8勝4敗。ワイルドカード争いではエンジェルスだけでなくレッドソックス、ヤンキースも抜いて3位まで2ゲーム差に迫っている。
なぜ両チームにこれほどまでに差がついたのか。要因は大きく分けて2つある。
①エンジェルスの投手力不足
エンジェルスはデッドライン・トレードでジオリト、レイナルド・ロペス、そしてリオンを獲得した。だが、チームの現状を踏まえれば、先発もリリーフもさらに戦力底上げを図るべきだった。
先発陣は大谷翔平に次ぐ2番手以降が明らかに弱く、ブルペンもカルロス・エステベス、マット・ムーア以外は頼りない状態だった。しかもエステベスの投球内容が不安定になっていたことを踏まえれば、ジオリトとロペスだけでは足りないのは目に見えていた。
加えて、同地区のライバルであるレンジャーズがマックス・シャーザーとジョーダン・モンゴメリー、アロルディス・チャップマンを、アストロズがジャスティン・バーランダーとケンドール・グレイブマンを補強。結果、3チームの中で投手力が最も劣るエンジェルスが結果的に最も小幅な補強に終わってしまった。
しかも、ジオリトは移籍後2試合続けて炎上。他の投手も乱調で、8月のチーム防御率はMLBワーストの6.53と、投手陣は完全に崩壊してしまった。②そもそものチーム力の差
こう書いてしまうと身も蓋もないが、そもそもマリナーズとエンジェルスでは地力に差があったと言わざるを得ない。
もっと言えば、「若い力」の差だ。8月のマリナーズを見ると、フリオ・ロドリゲス、カル・ラリー、ジョージ・カービー、7月下旬に昇格したばかりのケイド・マーロウと若手選手の活躍が目立つ。そもそも、シーウォルドを放出したのも、24歳のアンドレス・ムニョスにクローザーとして使える目処が立ったからで、そのムニョスは8月に入って4回連続セーブ成功を記録している。
対してエンジェルスは、ただでさえ若手選手の層が薄い上にザック・ネトが故障で離脱、ミッキー・モニアックも8月に入って快音が消えた。投手陣でも、リード・デトマーズが大炎上してチェイス・シルセスの健闘をかき消してしまっている。 つまり、たとえデッドライン時点でほぼ同じ成績だったとしても、マリナーズは主力にまだ上がり目のある選手が多い、言わば余力を残した状態で、対照的にエンジェルスはアップアップで何とか水面に顔だけ出しているような状態だった。それだけに新加入選手の活躍に期待したいところだったが、ほとんど不発。ついに力尽きて、どんどん沈んでいってしまった格好だ。
デッドライン時点で19.5%だったエンジェルスのプレーオフ進出確率は、今では1.6%にまで萎んでしまった。一方、マリナーズは35.1%にまで上昇。この、あまりにも厳しい現実をペリー・ミナシアンGMはどのように受け止めているのだろうか。
構成●SLUGGER編集部
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