こたつでみかん!? 楽天の独創的なファンサービスは、笑顔と感謝が行き交う場所

こたつでみかん!? 楽天の独創的なファンサービスは、笑顔と感謝が行き交う場所

こたつでファンと時間を共有するのも楽しみの一つ。撮影:松山ようこ

各球団がファンと交流するためのイベント、「ファン感謝祭」をオフシーズンに行なっているのは、多くの方に知られるところだろう。真剣勝負を見る時とは違い、選手たちの素顔に触れられる、貴重な時間だ。

 通称「ファン感」と言われるこのイベントで、特徴的なのが楽天だ。お笑い芸人、サンドウィッチマンの司会による球場内でのイベントはいつも大盛況で、選手たちへ絶妙なイジリ。笑いの絶えない”ショー”的要素にあふれている。

 このファン感で”楽天らしさ”をより感じることができるのが、球場外でのイベントだ。1周すると選手たちがクラフトビール売り場でビールを注いでくれたり、芋煮をふるまっていたり、仮設テントでファンの似顔絵を描いていたり(腕前は……)とにかく距離が近いのだ。

 さらには、引退セレモニーを控えた今江敏晃がチームのグッズ売り場にやってくるわ、見上げればラジオに生出演中の則本昂大や松井裕樹が、ブースの窓から手を振ってくれたり…。球場の外周は、少し歩くだけで選手たちとじかに触れ合う体験ができる。

 選手が訪れると、あちこちで歓声とどよめきがおこる。なかでも何事かというほどの大歓声を起こしたのは、来季からヤクルトでプレーする嶋基宏が登場した時だ。楽天の生え抜きで、最も人気を集めてきたキャプテンに、「嶋さ〜ん」「ありがと〜う」と、悲鳴にも似た声援が響きわたった。
 ●リラックスするベテランと緊張気味のファンが座談するこたつ

 外周イベントで、異彩を放っていたのが「こたつステーション」だ。広々としたテントに入ると、畳が敷き詰められた広間になっており、こたつとストーブが鎮座する。考案者は、楽天のみんなの“兄貴”で、選手兼任コーチに就任した渡辺直人だ。

 誰に対しても分け隔てなく、距離感を感じさせない渡辺は、ファンともリラックスした様子でみかんを食べながら歓談。最初は緊張気味だったファンも、次第に前のめりになって、どっと笑いが起きるようになるのだ。

 このこたつステーションには、”王子”、岸孝之も参戦。近寄りがたい雰囲気は微塵もなく、王子どころか、まるで近所のお兄さんかのような親しみやすさで、いたって自然体でファンの子供たちと接していた。
 ●ハーバード大出身ハーマンの野球解説、ブセニッツのわるーい日本語

 外国人選手はシーズンが終わると帰国するため、残念ながら不参加。その代わりに、担当通訳がステージに駆り出されてトークショーを行っていた。いつも外国人選手の話しを日本語にして伝える球団通訳は、身の回りの世話に至るまで誰よりも多くの時間をともに過ごす。出てくる“裏話”は、多くのファンを釘付けにした。

 例えば、ハーバード大学出身で話題を呼んだハーマンは、野球用語を日本語でかなりマスターしているとか。通訳の佐野氏いわく、「右方向、左方向、ゲッツーなど、普通に使っています」。かなり貪欲に学んでいるようで、耳にするたびに「どういう意味だ」と聞いてくるのだとか。

 さらに、「引退したら自分は解説はできるよ。日本で1試合ぐらい担当させてもらいたいな」と話していたそうで、集まったファンを大いに沸かせた。頭脳明晰なハーマンの新解説をいつか聞きたいものだ。
  また、アメリカ・ジョージア州出身のナイスガイ、ブセニッツはなぜかケンカ言葉を習得中だとか。佐野氏いわく、「ケンカをふっかけるフレーズをたくさん知っているんです。選手に聞きまくって覚えてるみたいで。このあいだも、則本選手にわざとぶつかりに行って、『やんのかコラ』って殴り合いコントみたいなやり取りをしていました」

 おかげで笑いも起きるし、コミュニケーションも深まるとのこと。ちなみに、最近覚えたのは「オモテデロ」だそう。ナイスガイの意外な一面に、会場は大笑いとなった。

 選手との距離がぐっと近くなるファン感謝祭は、準備も運営も、毎年スタッフ総動員で行われている。たくさんの選手にあちこちで会えるのも、一人ひとりにマネージャーとしてスタッフが付き、分刻みのスケジュールで選手が動いているのだ。

 選手はファンと近づくことでモチベーションが上がり、ファンはセンスとチームをさらに応援したくなる。幸福のサイクルがおきる楽天の「ファン感」だった。

【PHOTO】大盛り上がりの楽天ファン感の様子はこちら!

取材・文●松山ようこ
【著者プロフィール】
翻訳者・ライター。『SLUGGER』では笑撃ランキングなど面白ネタ収集を担当。インタビュー仕事も多く、野球選手はじめ幅広くスポーツ選手やさまざまな分野の著名人を取材する。

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