「球界で最も楽しい選手」ワイルド&セクシーな魅力を持つハビア・バイエズって誰?【MLB珍獣図鑑】

「球界で最も楽しい選手」ワイルド&セクシーな魅力を持つハビア・バイエズって誰?【MLB珍獣図鑑】

いわゆる「ブンブン丸」で四球をほとんど選ばない代わり、18年は二塁打・三塁打・本塁打すべてリーグ7位以内と長打を量産した。(C)Getty Images

 規格外のパワー。超絶テクニック。そして何より、個性的なキャラクターの“珍獣”が数多く集まっているのがメジャーリーグの魅力。全米各地に生息している多種多様な愛すべき“珍獣”たちを紹介していこう! 今回紹介するのは、3月に発売された野球ゲーム『MLB The Show 20』のパッケージにも選ばれたハビア・バイエズ(カブス)だ。

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 ナショナルズ時代のブライス・ハーパー(現フィリーズ)が、ドナルド・トランプの大統領選のスローガンをもじった"Make Baseball Fun Again"を提唱したのが4年前。今、ハーパーと同じくらい、いや、ある意味では彼以上にファンを楽しませているのがバイエズだ。

 彼の魅力は何と言っても野性味あふれるダイナミックなプレースタイル。MLB好きにはもうおなじみだろうが、改めてYouTubeやMLB.comで彼のプレー動画を見てほしい。打撃も守備も走塁もとにかく派手でアグレッシブ。打っては豪快に振り回し、塁に出れば常に先へ進もうとチャンスをうかがう。

 いくつかあるバイエズの得意技の一つがホームスチールだ。2016年のドジャースとのリーグ優勝決定シリーズでは、三塁牽制の間に迷いなくホームに突っ込んで見事に成功させた(この時、マウンドに立っていたのは前田健太だった)。

 もう一つの売りが守備での超高速タッチだ。セカンドやショートを守っていて、捕手からの送球を受けて盗塁を試みた相手走者を刺す時の動作がまさに光の速さ。送球が少し逸れても、目にもとまらぬ速さで相手がベースに触れる前にタッチしてしまう。バイエズのおかげで、カブスの捕手陣は盗塁阻止率をかなり上げてもらっているはずだ。

  特に驚愕だったのが、プエルトリコ代表として代表した17年のWBC、ドミニカ共和国戦で見せたノールックタッチ。この時、バイエズは捕手のヤディアー・モリーナからの送球が来る前にアウトを確信。モリーナのほうを見て右手を大きく掲げながら、まったく相手走者(ネルソン・クルーズ)に視線を送ることなく左手でタッチしてみせた。このプレーを含め、YouTubeには彼のタッチプレーだけを集めた動画があるのだからすごい。

 ただ思い切りがいいだけの選手なら他にもいる。バイエズの魅力は、野生動物さながらの勘の鋭さも備えている点にある。チームの主砲アンソニー・リゾーいわく「他のほとんどの選手が考えもしないようなプレーに挑むかどうか、とっさに判断する能力がある」。打席では基本ブンブン丸でほとんど四球を選ばないが、相手守備の隙を突くセーフティバントを決めることもしばしば。得意の高速タッチにしても、相手走者がどんな角度で二塁に向かってくるのかあらかじめ想定し、それに応じて送球を受ける場所を決めるのだという。

 豪快さと思い切りの良さ、そしてゲームの機微をつかむ繊細さを併せ持つバイエズについたあだ名は“エル・マーゴ”。スペイン語で「マジシャン」を意味する。また、『SB Nation』は18年7月のタイガース戦で鮮やかな本盗を決めたプレーを「セクシー」と評した。どちらもバイエズにぴったりの形容詞だ。

  セクシーと言えばバイエズは、かつて『ESPNマガジン』の名物企画「Body Issue」で一糸まとわぬ見事なヌードを披露して話題になった。タトゥーもバイエズの自慢だ。左腕には16年の世界一を記念して入れたカブスのロゴ、胸には大きく「BAEZ」の文字、首の後ろにはMLBロゴ。他にも両親の名前やプエルトリコの旗、ライオンなどさまざまなタトゥーが彫られているが、バイエズが最も誇りにしているのは、左肩に刻まれた妹ノエリーの顔だろう。

 1歳年下のノエリーは二分脊椎という先天性の難病を抱えて生まれ、当初は生後数時間の命と診断された。しかし、彼女は強靭な生命力の持ち主だった。2日後、今度は余命1週間と言われたが、それも乗り越えた。バイエズ一家はノエリーにより良い医療を受けさせるため、05年にプエルトリコからフロリダへ移住。バイエズはプロ入りの際に得た契約金で、ノエリーの車椅子が出入りできるようカスタマイズされたミニバンを買った。ノエリーは母親や他の兄たちとそのミニバンに乗り、マイナーでプレーするバイエズを応援するため全米を旅した。14年のバイエズのメジャー初昇格を見届けたノエリーだったが、15年4月に21歳で生涯を閉じた。「彼女は決してあきらめちゃいけないことを教えてくれた」。バイエズのバイタリティあふれるプレースタイルは、その教訓を忘れていないからかもしれない。

  昨年までカブスの監督だったジョー・マッドン(現エンジェルス監督)は、バイエズの将来性について「外角のボール球に手を出さなくなったら、マニー・ラミレス級の打者になれる」と言うが、少なくともエンターテイナーとしてはすでにマニーと肩を並べていると言っていい。実際、17年には名物コラムニストのジョー・ポズナンスキーからは「MLBで最も楽しい選手」に認定され、18〜19年はカブスで唯一、2年連続でオールスターに選ばれた。今や人気面では、リゾーや16年MVPのクリス・ブライアントを凌駕しているとの声すらある(ちなみにマッドンは、これについて、「リンゴかポールかジョンかジョージを選ぶようなものさ」と絶妙な例え)。

 18年は初のタイトルとなる打点王を獲得。また、どれだけ勝利に貢献しているかを示すWAR(Wins Above Replacement)はリーグ9位の5.8を記録した(Baseball Reference版)。19年もリーグ10位の6.0。両年ともリーグトップにはやや届かなかったが、どれだけファンを魅了しているかを示す「Fun Above Replacement」という指標がもし存在したら、ぶっちぎりの両リーグトップになるはずだ。

文●久保田市郎(スラッガー編集長)

※『スラッガー』2018年9月号より加筆修正のうえ、転載


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