【2010年代30球団通信簿:ア・リーグ西地区】大谷のエンジェルス、イチローが在籍したマリナーズは苦戦。一方、サイン盗みに手を染めたアストロズは?

【2010年代30球団通信簿:ア・リーグ西地区】大谷のエンジェルス、イチローが在籍したマリナーズは苦戦。一方、サイン盗みに手を染めたアストロズは?

13年にア・リーグへ所属を変えた頃は弱小球団だったアストロズは、データ分析を駆使して強豪チームへと生まれ変わったが、サイン盗みなど数々の問題があったのも事実だ。(C)Getty Images

チームの「成功の基準」は予算規模や戦力状況、それまでの歴史などによってそれぞれ違う。そうだとしても、究極の目標がワールドチャンピオン獲得にあることだけは共通している。2010年代におけるア・リーグ西地区5球団の歩みを振り返りつつ、5段階評価の通信簿形式でディケイドを総括してみよう。

※A=よくできました、B=まずまずです、C=可もなく不可もなく、D=がんばりましょう、E=ガッカリです

▼ヒューストン・アストロズ
【評価】よくできました(A)

 2011年から3年連続100敗以上を喫したが、17年から今度は3年連続100勝をクリア。ディケイドの始まりと終わりでこれほど一変したチームは他にないだろう。すべてが変わったのは11年オフ、新オーナーのジム・クラインがジェフ・ルーノーをGMに招聘してからだった。一時はローカルテレビ視聴率でゼロ%を記録するなど徹底的な低迷期を経て、ルーノーGMはドラフトや育成を通じて徐々にチームを強化。17年には創設以来初のワールドチャンピオンをもたらした。

 アストロズの躍進は、10年代に球界全体に浸透したデータ革命の「光と影」を象徴している。もちろん「影」とは、勝利至上主義の果てに行き着いたサイン盗み問題のことだ。ルーノーGMが解任された今、アストロズは20年代における新たなアイデンティティを確立できるだろうか?
 ▼ロサンゼルス・エンジェルス
【評価】ガッカリです(E)

 2000年代は球団史上初の世界一を達成した02年を含めて計6度のプレーオフ出場。11年オフにアルバート・プーホルスを獲得し、12年はマイク・トラウトが大ブレイク、同年オフに今度はジョシュ・ハミルトンの補強にも成功した。00年代に続く黄金時代到来と思いきや、結果的に10年代のプレーオフ出場は14年の1回のみと失望の結果に終わった。

 補強の失敗やトラウト以外の若手の伸び悩みもあったが、意外なことにディケイド通算のレギュラーシーズン勝利数は822で世界一3度のジャイアンツ(821)をわずかに上回る。再建モードに突入することなく戦い続けた結果と見るべきか、それともどっちつかずの状況を放置した結果と見るべきなのか。いずれにしても、球界の至宝トラウトの類稀な才能が大舞台で発揮される機会を浪費した罪は大きい。
 ▼オークランド・アスレティックス
【評価】よくできました(A)

 2012年から2度の地区優勝を含め3年連続プレーオフ進出。14年は途中補強でジョン・レスターらを加えるなど大勝負に出た。だが、ワイルドカード・ゲームで敗退すると、今度はジョシュ・ドナルドソンやジェフ・サマージャら主力を次々に放出してチームを解体。3年連続最下位を経て、18年から再浮上してプレーオフに返り咲いた。

 勝負の時期と雌伏の時期を適切に見極め、それに合わせて潔く(?)チームを作り替えるビリー・ビーンの手法は、スモールマーケット球団ならではの戦略だが、結果として資金力で勝るエンジェルスやマリナーズより好成績を残しているのだから、やはりすごい。ただし、プレーオフでは5回連続で初戦敗退。「プレーオフの結果は時の運」と断言するビーンに、野球の神様が意地悪をしているのかもしれない?
 ▼シアトル・マリナーズ
【評価】ガッカリです(E)

 2010年代に一度もプレーオフ出場を果たせなかった4チームの1つ(他はホワイトソックス、マーリンズ、パドレス)。10年間の総年俸11.7億ドルは30球団中14位と、決してお金がないわけではないにもかかわらずこの結果は、端的に言ってチーム作りがかなり拙いことの証左だろう。

 13年オフには10年2億4000万ドルの大盤振る舞いでロビンソン・カノーを獲得したが、プレーオフの切り札にはならず。00年代に続いてドラフトでの失敗も相次ぎ、15年9月にGMに就任したジェリー・ディポートが何十件ものトレードを成立させても、全体の戦力はさほど上向かなかった。再建モードへ移行した19年は、前年に復帰したイチローが現役引退、10年にサイ・ヤング賞を獲得した"キング"ことフェリックス・ヘルナンデスもこの年を最後にマリナーズを去ることになった。
 ▼テキサス・レンジャーズ
【評価】がんばりましょう(D)

 2000年代後半から戦力が整い始め、若手と中堅、ベテランがうまく噛み合った10年に悲願のリーグ初優勝。主砲ジョシュ・ハミルトンはMVPに輝き、ドラッグ中毒から立ち直ったその半生が大きな注目を浴びた。翌年はワールドシリーズ優勝まであと1ストライクに迫り、その年のオフには総額1億ドル以上を投じてダルビッシュ有を獲得。黄金時代到来を期待する声も多かったが、その後は思ったほどには(?)躍進できず、3度のプレーオフはすべて初戦で敗退した。

 13年オフにイアン・キンズラーと交換でプリンス・フィルダーを獲得した件に代表されるようなトレードの失敗に加え、ディケイド前半のドラフトから戦力を輩出できなかったのも痛い。とはいえ、10年間で5度のプレーオフ進出は、それまでのチームの歴史を考えれば上々の結果だろう。

文●久保田市郎(スラッガー編集長)

※『スラッガー』2020年3月号より転載

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