【2010年代30球団通信簿:ア・リーグ東地区】貧乏でも育成と工夫を駆使したレイズが最高評価、10年間の勝率が30球団1位のヤンキースは意外にも……?

【2010年代30球団通信簿:ア・リーグ東地区】貧乏でも育成と工夫を駆使したレイズが最高評価、10年間の勝率が30球団1位のヤンキースは意外にも……?

ベッツの活躍もあってレッドソックスは18年に世界一となったが、彼は19年オフに財政上の理由でドジャースへ放出された。(C)Getty Images

チームの「成功の基準」は予算規模や戦力状況、それまでの歴史などによってそれぞれ違う。そうだとしても、究極の目標がワールドチャンピオン獲得にあることだけは共通している。2010年代におけるア・リーグ東地区5球団の歩みを振り返りつつ、5段階評価の通信簿形式でディケイドを総括してみよう。

※A=よくできました、B=まずまずです、C=可もなく不可もなく、D=がんばりましょう、E=ガッカリです

▼ボルティモア・オリオールズ
【評価】可もなく不可もなく(C)

 1998年から14年連続負け越しが続いていたが、有望株時代にトレードで獲得したアダム・ジョーンズ(現オリックス)を中心に、生え抜きのマニー・マチャド(現パドレス)、マット・ウィーターズ(現カーディナルス)らが台頭。2012年に負け越し記録を止めるとともに97年以来のプレーオフ進出を果たすと、14年と16年にもポストシーズンへ駒を進めた。

 だが、ディケイドを通して見ると先発投手の育成失敗が響いた。ドラフト全体5位以内で指名した3投手――ディラン・バンディ(現エンジェルス)、ケビン・ゴーズマン(現ジャイアンツ)、ブライアン・マティスはいずれも大成せず、バンディも含めマイナーでの故障も後を絶たなかった。15年オフに主砲クリス・デービスと結んだ7年1億6100万ドルの契約延長も大失敗となり、17年からは3年連続地区最下位と再び低迷期へ。18年の年間115敗は球団歴代ワースト、19年の108敗はワースト3位タイと派手に負けている。
 ▼ボストン・レッドソックス
【評価】まずまずです(B)

 まさに山あり谷ありの10年間で、12年からの6年間は地区最下位か優勝かの両極端なシーズンが続いた。それでも、ディケイドで2度の世界一はジャイアンツに次ぐ多さで、トータルとしては合格点だろう。12 〜 15年8月までGMを務めたベン・チェリントンがGM補佐時代も含めてドラフト/育成に携わったムーキー・ベッツ(現ドジャース)、ザンダ・ボガーツ、ジャッキー・ブラッドリーJr.、アンドリュー・ベニンテンディらが順調に主力へ成長。チェリントンの後を継いだデーブ・ドンブロウスキがデビッド・プライス(現ドジャース)やクリス・セールらを補強した。

 ディケイド後半は「経営合理化」に進むヤンキースを尻目に総年俸球界トップに躍り出るまでになったが、コアとなったのはあくまでベッツら生え抜選手たちだった。20年代は、脆弱化したマイナー組織の再建がまず大きなテーマとなる。
 ▼ニューヨーク・ヤンキース
【評価】がんばりましょう(D)

 10年間すべて勝ち越し、ディケイド通算勝率.569は30球団1位。しかし、7回出場したプレーオフではワールドシリーズ進出すらかなわなかった。ディケイド間でリーグ優勝がなかったのは1920年代以降では初。他の球団では合格点でも、ヤンキースの基準では「失われた10年」という評価にならざるを得ない。

 ホーヘイ・ポサーダ(11年)を皮切りにマリアーノ・リベラ(13年)、デレク・ジーター(14年)、アレックス・ロドリゲス(16年)と一時代を築いた選手が続々と引退。これを受けて球団は世代交代に踏み切り、16年夏のトレード市場では売り手に回る思い切った決断を下した。すると翌年、アーロン・ジャッジ、ルイス・セベリーノらが一斉に開花。16年夏にアロルディス・チャップマンとの交換で獲得したグレイバー・トーレスもスターに成長し、20年代こそ帝国復権が実現しそうだ。
 ▼タンパベイ・レイズ
【評価】よくできました(A)

 この10年間の総年俸6.7億ドルは30球団最低。それでいて、レギュラーシーズンの勝利数は3倍近い年俸規模を誇るレッドソックスと互角の数字を残した。2014〜17年は4年連続で負け越し、14年を最後にジョー・マッドン監督&アンドリュー・フリードマンGMが他球団に引き抜かれるなど苦しい時期もあったが、球界随一の投手育成能力と先進的なアプローチはディケイドを通じて健在。18年は新機軸オープナーを導入して話題を呼ぶと、昨年は96勝を挙げて6年ぶりのプレーオフ進出を果たした。

 しかし、プレーオフでは4回連続して地区シリーズで敗退。00年代から取りざたされていた新球場建設問題はディケイドの終わりになっても解決が見えていない。20年代こそ"スモールマーケット球団の雄"という位置付けから脱却できるか。
 ▼トロント・ブルージェイズ
【評価】可もなく不可もなく(C)

 ブルージェイズの2010年代は15、16年の2年間に凝縮されていると言っても過言ではない。15年は夏のトレードでデビッド・プライス(現ドジャース)、トロイ・トゥロウィツキら大物獲得に成功。勢いに乗って22年ぶりの地区優勝を果たすと、プレーオフでもリーグ優勝決定シリーズに駒を進めた。これでトロントの野球熱に久々に火が付き、翌年は観客動員が最後に頂点に立った1993年以来初めて300万人を突破。この年もリーグ優勝決定シリーズまで進出した。

 だが、それ以外の年はプレーオフ争いに絡むこともなく、存在感を発揮できずにいる。19年は95敗を喫し、観客動員は4年間でほぼ半減してしまった。その一方でブラデミィール・ゲレーロJr.やボー・ビシェットら未来のスター候補が登場。彼らは30年近く遠ざかっている世界一をトロントにもたらすことができるだろうか?

文●久保田市郎(スラッガー編集長)

※『スラッガー』2020年3月号より転載

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