仙台六大学の“ドラフト候補生“はこの3人!プロ注目の「杜の都の三銃士」を紹介

仙台六大学の“ドラフト候補生“はこの3人!プロ注目の「杜の都の三銃士」を紹介

今年のドラフトの注目株。左から元山、宇田川、山野。写真:大友良行

新型コロナウイルスの猛威は「杜の都・仙台」にも襲いかかっている。

 69年創立の仙台六大学は東北福祉大、仙台大、東北学院大、東北大、東北工業大、宮城教育大の6校で構成され50年以上の歴史がある。歴代優勝校は、福祉大が優勝72回とダントツ。続いて学院大が18回、仙台大が6回と続く。

 仙台六大学は感染症防止のため開幕日を大幅に変更、暫定的に6月13日に伸ばした。グラウンド閉鎖で練習が出来ない選手たちは、この過酷な環境のなかでも来るべき時に備えて準備を進めている。今回は同リーグから3人の有力ドラフト候補を紹介しよう。

●元山飛優(東北福祉大/遊撃手)
180p・78s、右投左打、大阪府出身、佐久長聖高
 左右に打ち分けるバッテイング。安定した送球と機敏な動きで、広い守備範囲を誇る三拍子揃った大学トップクラスの遊撃手。中学時代は名門・生駒ボーイズ(大阪)に所属し、全国大会のジャイアンツカップにも出場してベスト16に進出した。

 佐久長聖高では、高1夏に1番三塁手、3年夏は3番遊撃手で甲子園に出場。卓越した選球眼と勝負強い打撃で注目されたがプロ志望届は出さなかった。
 「どうしても高卒だと、下位指名になりがち。それならば大学に行って上位指名を狙った方がいいと思いました。それに野球ばかりでなく、友人が欲しかったのも大きな理由です」

 福祉大では1年春からベンチ入り。2年から3番を任されて、打率.486、打点12で首位打者とMVP、ベスト9に輝いた。3年春も打率.438で打撃2位、打点王12とベスト9。通算52試合、打率.356、出塁率.466、長打率.563、打点44と、申し分ない実績だ。足も速く一塁到達は4秒22、セーフティーだと3.9秒と健脚を誇る。

「打率とかは、あまり気にしません。結果は付いてくるものなので。今季の目標は、自身2回目の日本一です。秋にはドラフト1位指名で、将来は”世界一の遊撃手”と言われるようになりたい」と夢は大きい。「自分がルールだと勝手に決めています。137人の部員を主将としてまとめていくには、先頭に立って引っぱるのではなく、皆を押し上げていく必要があります」とも言うが、その位の気迫が必要なのだろう。
  冬の練習でも、昨年は下半身、今年は上半身を重点的に鍛え上げた。体脂肪率も12%まで落とした。「おかげでめちゃめちゃ調子がいいです。バットもよく振れています」。

 そんな元山を大塚光二監督は次のように見ている。

「昨年、大学日本代表に選ばれてから人が変わったようです。良い主将としてチームを率先して引っぱっています。今までは、自分のことを淡々とやる選手だったのが、後輩たちに声を掛けながら、プレーで表現できるようになりました。元々もの怖じしない性格で、何でも出来ちゃう子でしたが、この冬、ウエイトなどで体幹を鍛えたことで、守備も今まで以上によくなった。今までは、三遊間の当たりに体があがっていましたが、入って行く時のスピードがアップ、踏ん張って投げられるようになりました。冬トレは、打撃にも活きてきました。右方向には大きな当たりを打てるので、つい引っぱてしまいがちでしたが、反対方向にも対応出来るようになりました。日本一のショートと言ってもいいでしょう」と高く評価する。
  そんな元山だが、小学生の頃はスポーツに全く興味が無かった。父親が部品製造業に携わっていたのでオートバイ関係の道に進む事になっていた。それが、あまり意識しないで入った生駒ボーイズで当時コーチだった中本浩(亜細亜大→パナソニック→バルセロナ五輪日本代表)と巡り会った。いち早く元山の素質を見抜いて、かなり厳しく投打にわたって指導。「恩師は多いですが、中本さんには感謝の限りです」。メキメキと力を付け、今の元山が出来上がったとういわけだ。

 理想の選手については「王貞治さん(元巨人)やイチローさん(元マリナーズ)みたいな”象徴”になれればと思います。好きな選手は柳田悠岐選手(福岡ソフトバンクホークス)です。ゲーム中でも余裕があるし、味方にとって、心強い存在だと思えるので」。意識的に目標は高いところに置いて、自からを鼓舞している。

 現在コロナ疎開で、大阪の実家に戻っているが、広間で柔らかいスポンジボールを使って中学2年生の妹さんにティーを上げてもらい打撃練習と素振りを繰り返し、開幕に備えている。

 仙台大の宇田川投手とはラインで連絡を取り合う友人だ。

「1年時からお互いに意識はしていましたが、正式には昨年の大学日本代表選考会で知り合いました。同じプロの道を目指しているので負けるわけにはいきません。いい刺激になればと考えています。今度、焼き肉を奢ってもらうことになっています」と楽しそうに笑った。
 ●宇田川優希(仙台大/投手)
184p・95s、右投右打、埼玉県出身、八潮南高

 MAX152qの大型本格派右腕。父親は日本人で母親はフィリピン人。5人兄妹の3番目だ。

 小学2年から野球を始めスタートは外野手、小5から投手を務め、市内大会で凖Vへ導いた。中学時代は普通の選手で、野球仲間に誘われて進学した八潮南高も県大会初戦敗退の弱小チームだったが、3年時に状況が変わった。

 春の県大会1回戦・杉戸高戦で15三振を奪い完投勝ち。2回戦の北本高戦では、8回2/3を投げて勝利投手になると、3回戦の正智深谷高戦で延長15回212球を一人で投げ抜き、引き分け再試合に持ち込む。翌日は途中登板して本塁打を打つも敗れてしまったが、この時142qを出し、豪腕ぶりを発揮すると、プロ野球のスカウトがマークするようになり、一躍クローズアップされた。
  その噂を聴いた仙台大の森本吉謙監督が「荒削りだが、真っ直ぐとスライダーがいい。将来性がある。間違いなく逸材だ」と熱心に誘い、宇田川がプロ志望届を出さずに同大への進学を決めたのだ。

 宇田川は、大学入学の当時を振り返る。

「250人近くの部員がいるのでビックリしました。でも一人一人が能力あるし、上背もある。自分には技術的のことや筋肉など足りないものばかり。高校と大学野球の違いがわかりました」

 食トレで20s体重を増やし、ウエイトで鍛え、ジャンプなど体のキレを作りあげた。

 リーグ戦初登板は1年春。球速も146q、秋には147qとアップした。スライダー、カット、カーブでカウントをとり、得意のストレートとキレのあるフォークで打ちとるピッチングが身上だ。

 大学での成績は、通算28試合で7勝1敗、76回で奪三振99個、奪三振率11.72、防御率1.78。昨春は、5試合28回1/3を投げ、打者100人から35奪三振、被安打13防御率0.64の成績を残し、同リーグから敢闘賞を受けた。昨年、大学日本代表候補合宿にも呼ばれたが、最終選考で落とされた悔しさが残る。
  宇田川は、最終学年に賭けるその決意のほどを語る。

「目標は156qを投げ、福祉大を倒し、優勝して神宮のマウンドに立ちたい。秋には160qまで出したい。ライバルは、福祉大のプロ注目の元山飛優と山野太一。時々携帯で連絡をとりあってプレーのことを話しあっています。好きなプロ選手は千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)です。理由はストレートが速いし、フォークはキレるし、三振を多く獲れるピッチャーだから憧れています」

 森本監督に宇田川投手について聞いてみると次のような答えが返ってきた。

「エースとしてチームを勝たせる投手になることを期待しています。投げ下ろしてくるフォークは、特殊で角度があって、しかも動いてくる。四球も少ない。先輩である馬場皐輔投手(阪神タイガース)と同じようなタイプです。緘黙と見られがちですが、仲間うちでは明るいムードメーカーで、精神面も安心できます。野球の取り組み方も貪欲に考えながらやっています。先発、中継ぎ、抑えなど、どんな場面でも見本となる行動をしてくれることを望んでいます。それがエースというものですから。とりあえず本人が実力をつけて、宿敵福祉大を破り、結果としてプロに行けるようになれば、いいのですが」

 宇田川は新型コロナに、どう対策しているのだろうか。

「満足な練習は当分できないので、室内で軽く立ち投げやウエイトをしてコンディションを整えています。野球から離れていると、どうしてもストレスが溜まるので、散歩したり、好きな音楽を聴いたりして気分転換を図っています」
 ●山野太一(東北福祉大/投手)
172p・74s、左投左打、山口県出身、高川学園高(山口)

 プロ注目の本格派左腕は、上背はないが、身長180pの投手と同じぐらいの腕の長さがある。その分、ゆったりしたフォームで、腕のしなりが大きく、リリースポイントが前になり、キレのある球を投げられる。加えて、体重移動を上手く使い、スリークオーター気味に力のあるストレートを投げ込む。

 小学校から野球をはじめ、中高一貫校の高川学園で高2の夏からエース。3年夏には同校野球部創部115年で甲子園に初出場し、初戦で履正社の寺島成輝(ヤクルト)と投げ合うも8回5失点で敗戦投手となった。手も足も出なかったこと、大観衆の中で投げられたことで、もっと上でやってみたいと考え、その時からプロを意識するようになったという。

 福祉大に進学した1年春にMax149qを記録。6試合31回を投げ4勝0敗、防御率.29で新人賞を獲得し、華々しいデビューを飾った。2年春は防御率1.13で4勝を挙げてベスト9。全日本大学選手権で2試合に登板し、チームは優勝して大学日本一を達成する。3年春秋は、ともに5試合ずつ投げ、計10勝0敗。特に春は、MVP、最優秀投手賞、ベスト9に加え3年連続大学選手権出場を果たした。

 リーグ通算25試合、150回2/3、防御率1.13で19勝0敗という成績は見事と言うほかない。打者の手元で大きく変化するスライダー、ゆっくり曲がるカーブ、チェンジアップなど緩急をつけた組み合わせで、クレバーな投球をする。
  大塚監督は、山野についてこう語る。

「身長は170pちょっとだが、腕が長い。そのリーチをいかしたマウンドさばきもいいし、コントロールのいいピッチングができる。1、2年の頃は、5回頃で代えても素直に応じたが、3年になったら『7回まで投げさせてください』と懇願してくる。実際は完投したいみたいですが。欲が出てきたのでしょう。入ってきた時から教えることはなかった。ほとんど出来上がっていました。うちは投手が47人いますが、よく練習するので投手陣のお手本になっています。伸びしろはまだまだあります。性格上、目の当たりにライバルがいれば競い合うでしょうから、今後もっと伸びますよ。セットアッパーには向いていない気がします。プロに行ったら、先発で5、6回投げるタイプだと思います」と元プロ選手の観点から語る。

 さらに「大学ナンバー1左腕と言ってもいいでしょう。持っている雰囲気は杉内俊哉(元福岡ソフトバンク)に似ています。真面目だけど、おちゃらけた部分もあって、みんなと仲良くやっているようです」と付け加えた。
  最終学年の目標を山野は語る。

「2年時に、大学日本一を獲りましたが、自分たちの時代でもう一度投げて、日本一を獲りたい。リーグ戦では、通算30勝が目標です。また、去年1年間で連続無失点記録を70回記録しましたが、もう一回それ以上の記録に挑戦したいです。それらを実行することによって、今まで世話になった人々に恩返しできるような形でプロに行きたいです」と決意のほどを固める。

 目標とする選手は、同大の先輩にあたる津森宥紀投手(福岡ソフトバンクホークス)だ。

「1学年上の方なので間近で見てきました。度胸とマウンドでの姿に信頼度があって、野球を続けていく上で、影響力を与えてもらいました。自分もああいうふうに思われる投手になりたいです。今永昇太投手(DeNAベイスターズ)の投球もYouTubeで研究しています」

 仙台大の宇田川とはじゃれ合う仲だ。「携帯で、野球の話ばかりです。パワーピッチャーで相手を力でねじ伏せるのが羨ましい」と言う。

   ◆    ◆    ◆

 元山、宇田川、山野ともライバル関係だが普段、仲は良く3人揃ってのプロ入りを望んでいる。

 杜の都・仙台に”野球のある風景”が戻ってくるのは、いつだろうか――。3人は、プロの世界へ飛び立つ準備を、すでに完了。「リーグ戦開幕」を今か今かと待ち侘びている。

取材・文●大友良行

文●大友良行

【著者プロフィール】
おおとも・よしゆき/元大手新聞社の報道写真記者。事件事故取材の傍らメジャーリーグやサッカーW杯などの欧州サッカーを取材。現在は、全国の大学野球、春夏の甲子園をはじめとする高校野球、都市対抗を中心に社会人野球などを深く取材している。目標は、毎年ドラフト指名選手の85%以上を撮影収集すること。著書に「野球監督の仕事(共著・成美堂出版)」、「CMタイムの逆襲(東急エージェンシー)」などがある。

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