筑波大が誇るWエース!首都大学リーグの注目“ドラフト候補生“を紹介

筑波大が誇るWエース!首都大学リーグの注目“ドラフト候補生“を紹介

加藤(左)はMAX147qを投げ込み、変化球を内外に出し入れする完成度の高い投手。村木(右)はストレートを軸に、スライダーと落差の大きなフォークとカーブ、ツーシームをコーナーに投げ分ける。写真:大友良行

新型コロナ感染症の猛威は、首都大学リーグにも影響を及ぼしている。

 全国に「緊急事態宣言」が発令されたこともあり、同リーグは開幕を6月21日まで延ばした。1試合総当たりの勝率制で優勝を争うことになるが、今後の状況によっては、再延期、中止もあり得るという。

 そんな状況下で、ドラフト候補たちはプロへの想いを胸に、気持ちを切らさず、じっと耐え忍びながらマウンドに立つ日が来るのを待ち望んでいる。今回は筑波大が誇るWエースを紹介しよう。

●加藤三範(筑波大/投手)
181p・82s、左投左打、岩手県出身、花巻東高
 セットポジションから大きなテイクバックを取り、スリークォーター気味に伸びのあるMAX147qのストレートを投げ込む。スライダー、フォーク、チェンジアップなどの変化球を内外に出し入れする完成度の高い投手だ。ピンチになっても落ち着いたマウンド捌きで動じない。通算28試合3勝4敗。78回で奪三振が78、防御率0.58。特に2年秋は、8試合28回を投げ、奪三振30、失点3とリリーフで活躍し、ベスト9に選ばれた。その冬、日本代表候補合宿にも呼ばれた逸材だ。

 二人の兄の影響を受け、小学1年から野球を始めた。しかし、小6の時に、東日本大震災があり学校が流されてしまった。「もう野球は辞めよう」と思っていた2011年7月に『復興支援プロ野球オールスター戦』が仙台で開催され、被災者無料招待試合に地元出身の菊池雄星投手(現マリナーズ)が登板したのを観て強烈な感動を受け、野球続行を決意した。

 中学時には、軟式中学東北大会でエースとして準優勝。高校は花巻東に進み、2015年夏に2年生で甲子園出場を果たすと、3試合のうち敦賀気比、仙台育英戦の2試合に先発した。

 大学1、2年は、中継ぎ、抑えで活躍。代表候補合宿にも呼ばれた。3年春秋は、ヒジの骨折で登板ゼロだったが、今は完治して春先の練習試合で投げはじめている。

 そのあたりを含め、巨人の内田強スカウトは、こう見ている。

「リリースポイントがしっかりしているので全て同じように投げられる。フォームがきれいでオーソドックスだが、ボールはそこそこ速いです。手術後なので、スピードが戻ればもっと良くなります。上手くなろうという気持ちが伝わってくる。向上心を持って取り組んでいるようです。ヒジの回復待ちですね」
  では、川村卓監督は、どう見ているのか。

「気持ちを前面に出すタイプです。腕が遅れて出てくるので、そんなに速くないボールでも打者がタイミングを取りにくくなるのが特徴です。昨年一年間、棒に振ったのでその分、今季は頑張ってくれるでしょう。でも無理はさせません。そこまで要求はしていないが、近いうち力いっぱい投げられるようになるでしょう。徐々に調子も上がってきているようなので。監督として、投手にケガをさせないことを念頭に於いてやっています」

 ”選手ファースト”での采配が同監督の信条だ。

「高校野球では、球数制限を取り入れていますが、大学1年生ならともかく、2年生になると体が成人になってくるので、必ずしも当てはまらない部分もあります。小中学生の頃に、ケガをしていない子の方が珍しいのが現状です。その子を見ながら、球数だけでなくフォームの問題も含めて、調べながら進めています。うちの大学は、そういうことを研究することができますから。加藤も中学時のケガが影響して足首を痛めながら入学してきました。村木も腰に持病がありました。みんながケガなく野球をできればと、つくづく思います」

 加藤にライバルを訪ねてみたら、こう答えてくれた。

「同僚の村木です。ライバルと言うよりは、チームになくてはならない存在。佐藤隼輔投手(3年、仙台高)からも刺激を受けています。最後のシーズンなので大学選手権に出たい。ドラフトは、その先にあります」

 目指すは地元出身で高校OBの菊池投手だ。
 ●村木文哉(筑波大/投手)
184p・87s、右投左打、静岡県出身、静岡高
 MAX147qの右腕は、ストレートを軸に、スライダーと落差の大きなフォークとカーブ、ツーシームをコーナーに投げ分ける。

 2歳上の兄の影響で、小学校から野球をはじめた。中学2年から投手になり、甲子園へは1年夏にベンチ入りしたものの出番は無し。しかし4万人の大観衆に感動し、「野球の魅力に取り憑かれた」という。高2年春にも出場して初の甲子園マウンドに立ち、立命館宇治戦で完投し、7対1で勝利投手になった。忘れられない思い出だ。

 大学では、1年春から主にリリーフで登板した。秋季中盤から先発に回り、2年春からは先発一本。加藤と二人で投手陣を支える。

 通算成績は35試合で157回を投げ、17勝9敗。防御率2.41で昨春はベスト9に選ばれている。

 野球をやっていて大きな影響を受けた人がいる。元南海ホークスの大久保学投手(現・広島如水館高監督)だ。

 静岡高のOBでもある大久保に、村木は高1年時からたくさんのことを教わり成長してきた。ピッチングフォームを見て「プロに行けるぞ」と言われ、頑張れる環境を作ってくれたことに今でも感謝していると言う。

 村木の野球に取り組む姿を、川村監督は次のように語る。

「静岡高という名門で甲子園など、大きな大会にも出ているし、経験は豊富です。いろんなボールを使い別け、クレバーなピッチングをする。安心して見ていられます。決め球が落ちるボールなのですが、昨年はそれが決まらず持ち味を出せなかった。上でやるためには、その辺を磨いていかないと。今年は村木を筆頭に、投手陣が充実しています。あとは、4人目の投手を育て上げれば、優勝という先が見えてくるのですが」
  その村木がライバル視している選手は誰なのか。

「加藤と1年下の佐藤です。近くにいい選手がいるので、お互いに負けないようにと思ってやっています。課題は、真っ直ぐのスピードをもっと上げたい。そうしないと変化球が活きてこないので。巨人ファンなので菅野智之投手に憧れます。自分たちが入学してから一度も大学選手権に出たことがありません。まずリーグ優勝して、全国を目標に、最終的にはプロでやりたいです」

 筑波大を見続けてきている巨人の内田強スカウトは、「3月中旬にオープン戦は見ましたが、真っ直ぐがもう少し速ければと思いました。スライダーに自信を持っているし、カウントに関係無くフォークを投げることが出来るので、ゲームを作れます。ただフォークの落差がまだ小さい。あれで空振りが取れるようになればいいのですが。プロに入ったら、先発か中継ぎか、どこで使うかです。コントロールはいいですし、投げ方もいい。技術的には、問題ありません。いい投手だと思います」と語る。

 今は新型コロナウイルス感染防止のため、大学の施設は一切使用禁止で、全体練習もできない。そのため選手たちは、それぞれ自主的にトレーニングして待機中だ。

「仕方がないですね。前向きに捉えて、テレワークなどを使い、別の形で『野球』をしています。体育専門学群の准教授として指導者も育てなくてはならないし」と川村監督。
感染症の収束がどうなるかもまったく分からない状況だが、Wエースは、気持ちを切らさず、じっと耐えながらマウンドに立つ日を待ち望んでいる。

文●大友良行

【著者プロフィール】
おおとも・よしゆき/元大手新聞社の報道写真記者。事件事故取材の傍らメジャーリーグやサッカーW杯などの欧州サッカーを取材。現在は、全国の大学野球、春夏の甲子園をはじめとする高校野球、都市対抗を中心に社会人野球などを深く取材している。著書に「野球監督の仕事(共著・成美堂出版)」、「CMタイムの逆襲(東急エージェンシー)」などがある。

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