なぜA-RODはメッツ買収に乗り出したのか? 見え隠れする“永遠のライバル”ジーターへの対抗心

なぜA-RODはメッツ買収に乗り出したのか? 見え隠れする“永遠のライバル”ジーターへの対抗心

婚約者のJ-LOとメッツ買収に乗り出したA-ROD。パートナーとなる出資者を探すことが次のステップになる。(C)Getty Images

アレックス・ロドリゲスと婚約者のジェニファー・ロペス、A-RODとJ-LOの大物セレブカップルが、ニューヨーク・メッツのオーナーに名乗りを上げたことが話題を呼んでいる。

 長年メッツを所有してきたフレッドとジェフのウィルポン親子は、球団を売りたがっている。A-RODが買収に興味を持っているという話も、前から出ていた。2月半ば、球団所有権の80%をヘッジファンド・マネージャーのスティーブ・コーエン――すでに8%の所有権を持つ――へ売却する交渉が決裂。その時点ですでに『ニューヨーク・ポスト』はA-RODが買収を検討中と報じていた。

 どうやら、A-RODは本気らしい。今月20日、『バラエティ』誌の電子版が、A-RODとJ-LOがJPモルガン・チェースと組んで出資者を集める意向と報じた。

 もしかすると、A-RODはデレク・ジーターになりたい、あるいはジーターに勝ちたいのではないだろうか。
  A-RODとジーター、そしてノマー・ガルシアパーラは、1990年半ばに相次いでデビューし、カル・リプケンJr.に続く“大型遊撃手トリオ”と称された。3人の中で最も成功したのは、数字の上ではA-RODだ。ジーターもA-RODと同じく3000安打&300盗塁を達成したが、A-RODの696本塁打は、ジーターとガルシアパーラの合計を上回る(260本+229本=489本)。A-RODはMVPに3度選ばれたが、他の2人は受賞していない。

 けれども、ファンのリスペクトを勝ち得たのはジーターだった。ヤンキースひとすじで20年プレーし、5度のワールドシリーズ優勝を経験。ジーター自身、大舞台での印象的な活躍も多く、強いヤンキースの象徴的存在であり続けた。多くの女性と浮名を流しながらもスキャンダルとは無縁で、ファンだけでなくメディアや選手仲間からも尊敬を勝ち取っていた。
  一方、A-RODはどんなに優れた個人成績を残してもジーターにはなれなかった。ワールドシリーズ優勝は1度だけ。その年のポストシーズンはよく打ったが、他の年は活躍どころか打線のブレーキになることもしばしばだった。また、たびさかなる薬物スキャンダルやダーティプレー、これ見よがしの態度のせいで、周囲から本当の意味での敬意を得ることはできなかった。

 A-ROD自身が認めているように、彼とジーターはかつて「血を分けた兄弟のように」親しかった。だが2001年、A-RODが雑誌のインタビューで「ジーターは凄い選手に囲まれて恵まれている。彼がチームを引っ張らなくてもいいからね」と語ったのを機に二人は疎遠となり、A-RODが04年にヤンキースに加わってジーターと三遊間を組むようになっても表面上の関係にとどまった。

 現役生活の最後も対照的だった。14年開幕前にその年限りでの引退を表明したジーターは1年かけて「さよならツアー」よろしく全米を回り、行く先々で喝采を浴び、ヤンキー・スタジアムでの最終戦ではサヨナラ安打を放つ千両役者ぶり。対してA-RODは球団から「肩叩き」されるような形で16年途中に引退を表明し、寂しくフィールドを去っていった。
  17年秋、ジーターは他の投資家たちとともにマイアミ・マーリンズを買収し、CEOに就任した。A-RODがメッツのオーナーになれば、ジーター率いるマーリンズと同じナ・リーグ東地区で戦うことになる。

 ただ、A-RODがメッツを手に入れるまでのハードルは低くない。マーリンズの買収額は12億ドルだったが、メッツにはその倍額が必要だろう。コーエンの交渉中に報じられていたメッツの資産価値は26億ドル。今月初旬、『フォーブス』誌は24億ドルと発表した。『バラエティ』誌によれば、A-RODとJ-LOの資産は2人合わせて7億ドルだという。

 それでも、A-ROD率いるメッツとジーター率いるマーリンズの対決を見てみたいという思うファンは多いはずだ。メッツは今季の地区優勝候補に挙げられ、マーリンズは数年後が楽しみなチーム。現役時代の因縁が新たなライバル関係を生むことになれば、球界は大いに盛り上がるはずだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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