神奈川大学リーグの注目選手はこの3人!今季の“ドラフト候補生”を紹介

神奈川大学リーグの注目選手はこの3人!今季の“ドラフト候補生”を紹介

左から関、藤村、渡部。いずれも今冬のドラフトで指名される可能性を秘めた選手だ。写真:大友良行

日常とは違う――。グラウンドの周辺からも、打球音や選手たちの元気な掛け声が聞こえてこない。静かなものだ。

“野球のある風景“を見られないのは『前代未聞』『空前絶後』のこと。すべてが新型コロナウイルスに奪われてしまった。神奈川大学リーグの3人のドラフト候補選手たちは、今どんな状況で開幕を待っているのだろうか。

●関龍摩(関東学院大/外野手)
181p・80s、右投右打、福井県出身、福井商業高

 神奈川リーグでイチ押しの走攻守3拍子揃った好選手。ミートが上手なバランスのとれた中・長距離打者だ。

 野球を始めたのは、物心ついた頃から。3歳上の兄の影響が大きい。中学生の時、兄が福井商で甲子園に出場し、「自分も」と入れ替わりに同校へ進んだ。最後の夏の県大会決勝で接戦の末、北陸高に5対6で敗れ、「満塁のチャンスが2回も回って来たのに打てなかった」。口惜しくて、納得できるまで野球を続ける決意で、関東学院大の扉を叩いた。

 大学1年春から11試合にスタメン出場し、打率.347。秋には21安打を放ち.477で首位打者に輝いた。以後クリーンアップを打ち続け通算67試合で打率.387、出塁率.477、長打率.551と際立った活躍を見せ、17年秋、18年春、19年秋に3回のベスト9に選ばれている。19年秋は16打点を上げ打点王も。学生日本代表候補にも2回名を連ねるなど、十分過ぎるほどの成績を残している。
  同大の三森俊貴監督は、関のことを以下のように見ている。

「どんなタイプの投手にも対応できる能力があります。ハイアベレージ打者と言ってもいいでしょう。3年夏に神奈川リーグ選抜チームでオランダの『ワールドポート野球大会』に行かせましたが、そこでアメリカ、台湾、オランダなどと対戦してきました。打ちまくって首位打者になったのですが、決勝でオランダに負けました。海外の野球を垣間見たことと、勝負処で活躍したので、一段と逞しくなって帰ってきました。

 今季は、3番を打たせます。副主将として数字にこだわらず、声掛けプレーでチームを引っ張る姿勢がいいです。ラストシーズンにかける強い想いがあるようです」

 プロもバッテイングに注目している。DeNAの河原隆一スカウトの見方はこうだ。

「シャープに振れている。実戦向きの打撃センスを持っています。典型的な中距離打者としては、文句なしです。後は送球の精度を高めることぐらいですかね」

 関が目標としてきたのはイチロー(元マリナーズ)だ。

「自分の打撃に自信を持っているし、ヒットにする技術がすごいです。詰まっても前に落としてポテンヒットにする。投手の嫌がることができるので。率も残しながら、長距離も打てる選手です。好きなプロ選手で言えば長野久義選手(広島カープ)。打って、守って、走れるからです」と言う。

 福井越前市の実家で過ごす今は、どんな練習をしているのだろうか。

「ちょうど兄も帰ってきているので、手伝ってもらいながら、キャッチボールや素振りをして、トレーナーから与えられたメニューをこなしています。下半身強化のためのランニングと走り込み。それにスクワット、メディシンボールを使った上半身の強化。バトミントンの羽根を打つ練習などを繰り返しています。今季は、最後ということもありますし、頑張って、納得できる結果を残してドラフト指名を待ちたいです」
 ●藤村哲之(横浜商大/投手)
180p・82s、左投左打、愛知県出身、愛工大名電高

 プロ注目の左腕だが、リーグ戦初勝利は3年秋になってからだ。

 MAX144qのストレートとチェンジアップ、カットボールを駆使し、7試合49.1イニングで50奪三振。3勝1敗で初のベスト9にも選ばれ、一躍ドラフト候補に名乗りをあげた。

 最上級生になって急成長したのは、なぜか。

 1年から投げていたが、主軸は他にいたし、体も出来ておわず球威不足だった。また、3年春にはケガもあり、数字を残せなかった。昨秋の活躍は、そんな中でしっかり自分の力を蓄えてきた精神的な強さがあったからこそ、遅咲きでも開花したのである。
 活躍が評価された昨冬、愛媛県松山市で行われた大学日本代表選考合宿にも呼ばれた。「凄い選手ばかり。自分はまだまだと感じたが、そこで負けるわけにはいきません。プロを目指そうと決意しました」と心境を述べる。

 目標を達成するために、この冬は例年以上に走り込みをした。体が硬いので柔軟性を求め可動域を広げるトレーニングを取り入れ、スピードアップを図り、体力面・精神面を鍛えあげた。
  年が明けると、その成果はたちまち表われた。3月19日に昨秋の神宮大会で日本一になった慶應大との練習試合だ。この日の藤村のストレートは走っていた。コントロールも冴えた。打者のスイングを見て、配球も自ら考えた。徹底的に攻めまくった結果、7回を投げ3安打、7奪三振という見事なピッチング。「確実に手応えを感じた。自信になりました」と胸を張る。

 楽天の鷹野史寿スカウトは、藤村のピッチングを見て、こう述べる。

「真っ直ぐで攻めるタイプの投手です。スライダーなどの変化球も右打者の膝元に投げるし、インコース攻めで左打者をのけ反らせる。空振りのとれるチェンジアップもある。欲を言えばもう少しスピードが出ればおもしろい。リーグ戦をしっかり見ていきます」

 井樋秀則監督は、藤村の努力の成果について語る。

「ひと冬超えて体のキレが良くなってチェンジ、カット、フォーク系を取り入れ、三振奪取率が高くなりました。本来は、コンビネーションよくカウントを整えて、内野ゴロを打たせて獲るタイプです。

 華やかな選手ではなく落ち着いていて野球に真面目に取り組んでいますし、意外と粘り強い性格です。『自分のためにも、チームのためにも成績を残しなさい。そうでなければ、プロには行かせないし、出さない。プロは甘いものではない』と常日頃から言い続けています」

 理想とする選手は、キレで勝負する山本昌投手(元中日)。目標は制球と多くの球種で打者を翻弄する名電高の先輩・東克樹投手(DeNA)だという。
 ●渡部健人(桐蔭横浜大/内野手)
175p・113s、右投右打、神奈川県出身、日本ウェルネス高(東京)

「ドカベン(作・水島新司の人気野球漫画)」の主人公・山田太郎が、バッターボックスに立っているのかと見間違えるほど、似たような体型をしている。

 好球がくれば、一振りでスタンドまで運ぶ注目のホームラン打者。漫画と違うのは、一、三塁手、遊撃手としてもフットワークよく守れるということだ。50m6.4秒と足もかなり速い。ふっくらとした体型は中村剛也、山川穂高選手(ともに西武)を彷彿とさせ、今や神奈川大学リーグの人気者だ。

 小学1年時に、父親から柔道をするか、空手をするか、どちらかを決めるように強く薦められたが、「どうしても野球がやりたい」と泣いて懇願。やっと野球を始められたのが小学1年の時だ。中学時代は、強豪クラブの中本牧シニア(横浜)に所属し、3年時に北海道で開かれた「第4回リトリシニア林和男旗杯国際大会」は4番遊撃手で4強入りに貢献した。

 高校は横浜商大高に進むも、家庭の事情で東京の通信制、日本ウェルネス高に転校。高野連規定により1年間は試合に出られなかったものの、1、3年時に本塁打計25本を放った。卒業時にプロ志望届を出すも指名漏れし、桐蔭大に進んだ。

 同大では2年春の神奈川工科大戦で、横浜スタジアムのバックスクリーン、コカコーラの看板直撃の3ランを放ち、スタンドを驚愕させた。「アウトコース低目の変化球でした。泳がされたのでセンターフライかと思ったけど、打球がそのまま伸びて行きました」と、当時の様子をパワーヒッターらしく語る。

 ベンチプレス130s、スクワット180s、デッドリフト170sと怪力の持ち主だ。

 ふっくらとした体形については「もともと同年代では大きい方でしたが、中学2年頃から本格的に太りだしました。特に動きには影響がないし、走ってもきついなぁ、と感じたこともありません。ホームランを打ててチームを勝たせる山川選手のようになりたいです」。大学通算成績は60試合で打率.293。本塁打10本、二塁打13本で長打率.502。昨春はベスト9に選ばれている。
  齊籐博久監督は、どう見ているのだろうか。

「ああいう体ですから、大きいのを飛ばす能力はあります。見た感じとは違い、足もあるので動ける。グラブさばきも上手いし、守れます。昨年調子を落とし、打てない時は、相当考え込んでいましたが、もともと技術はあるので私からは、あまり言わないようにしています。他のことは考えるな、プロに行きたいなら自分のことだけ考えろ。打率を残すよりもロングを打て、と。ミスショットを無くし、打撃がよければチームの勝利にもつながってきますから。優しい子で真面目過ぎるし、天狗にはならない選手なので安心しています」

 日本ハム・大渕隆スカウトは「高校時代から見ているが長打力には、いいものがある。打撃優先のパンチ力のある内野手ですね。守備も破綻なく着実にこなす。それ以上に、ああいう選手が一人いるとチームが明るくなります。皆を元気づけてくれるようなキャラの持主でしょう」と見ている。

 今は新型コロナウイルスのため、練習は中止。「特にストレスはないけど、早く野球がしたい」と語るスラッガーは、近くの公園でダッシュとロングジョグで走り込み、素振りをしながら体幹を鍛えている。

文●大友良行

【著者プロフィール】
おおとも・よしゆき/元大手新聞社の報道写真記者。事件事故取材の傍らメジャーリーグやサッカーW杯などの欧州サッカーを取材。現在は、全国の大学野球、春夏の甲子園をはじめとする高校野球、都市対抗を中心に社会人野球などを深く取材している。著書に「野球監督の仕事(共著・成美堂出版)」、「CMタイムの逆襲(東急エージェンシー)」などがある。
 

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