【MLB今日は何の日】クレメンスが史上初の1試合20奪三振を達成、オリオールズは悪夢の開幕21連敗にようやく終止符

【MLB今日は何の日】クレメンスが史上初の1試合20奪三振を達成、オリオールズは悪夢の開幕21連敗にようやく終止符

“ロケット”の異名を取ったクレメンス。史上初の1試合20奪三振を達成した86年は24勝を挙げてサイ・ヤング賞に輝いた。(C)Getty Images

晩年には薬物疑惑で評判を落としたロジャー・クレメンスだが、MLB史上屈指の大投手であることに変わりはない。彼が成し遂げたいくつもの大記録のうち、最初に達成されたのが1986年4月29日、シアトル・マリナーズ戦での1試合20奪三振だった。

 当時メジャー3年目の23歳だったクレメンスはこの日、交通渋滞に巻き込まれて試合時間ぎりぎりにフェンウェイ・パークに到着したのだが、ピッチングには何の影響もなかった。自慢の剛速球が冴え渡り、先頭打者から3者連続三振、6回まで毎回の14奪三振。ブルペンにいたスティーブ・クロフォードの感想は「ボールが捕手のミットに突き刺さる音が銃声みたいに聞こえた」。7回表にゴーマン・トーマスの本塁打で先制点を許したものの、味方が3ランホーマーで逆転してくれると、7、8回も2個ずつを追加して18奪三振とした。
  チームメイトから「あと1つでタイ記録だ」と知らされた9回は、テキサス大の先輩でもある先頭打者スパイク・オーウェンから19個目。そして次打者フィル・ブラッドリー(のち巨人に在籍)から奪った三振により、9回までに20三振を奪った史上初めての投手になった(延長戦では16回で21個の例がある)。

 最後の打者ケン・フェルプスは遊ゴロ。背番号と同じ21個とはいかなかったが、先発全員から20三振、被安打3の1失点完投勝利。試合後にトーマスは「ここにいて幸せだと思うべきなんだろう。こんな場面には二度と立ち会えないだろうから」と語った。

 ところが、この偉業を目撃した観客はたった1万3414人。同じ日にNFLの新人ドラフトとNBAセルティックスのプレーオフの試合があったからだが、連日満員の今では考えられない人数だった。クレメンスは10年後の96年にも、9月18日のデトロイト・タイガース戦で再び20奪三振。その後も3人がタイ記録としたものの、追い抜いた者はいない。
  それから2年後、88年のこの日はボルティモア・オリオールズが不名誉な記録をやっとの思いでストップさせた。4月4日の開幕戦で0−12と大敗したオリオールズは、6連敗を喫した時点で監督のカル・リプケン・シニアを更迭。後任として大物OBフランク・ロビンソンを連れてきたが、初采配となった12日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦も1−6で完敗した。19日のブルワーズ戦で13連敗。1904年のワシントン・セネタース、20年のタイガースの開幕連敗記録に並び、翌20日も逆転負けで新記録となった。

 しかしまだまだ連敗は止まらない。18連敗の時点で『スポーツ・イラストレイテッド』誌が沈んだ顔のカル・リプケン・ジュニアを表紙に使ったように、この頃には連敗記録が国民的関心事になっていた。「わざと負けようとしたってこんなに負けられない」(スコット・マグレガー投手)「今、一つ勝てるならワールドシリーズで優勝した気分になるだろうな」(フレッド・リン外野手)。27日のミネソタ・ツインズ戦は4−7の9回表に2点を返したが及ばず、翌28日の同カードも2−4。21連敗でア・リーグの連敗記録を塗り替えた。
  ここまで来ると対戦相手にも妙なプレッシャーがかかってきて、それが連敗脱出の一因になった。29日のシカゴ・ホワイトソックス戦は初回にエディー・マレーの2ランで先制し、先発のマーク・ウィリアムソンが6回まで0点に抑える。すると7回表には1安打ながら3四死球、失策に2つの野選とホワイトソックスが自滅して4点を追加。最終的には9−0、開幕から実に26日目での初勝利となり、選手たちはクランベリージュースをかけ合って祝った。

 この年はボルティモア移転後最悪の107敗。しかしながら2018年は115敗、19年も108敗と、近年の低迷ぶりは当時を上回る酷さなのが残念だ。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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