【節丸裕一のとっておき話】アメリカ戦で起きた「世紀の誤審」でJAPANの怒りは頂点に達した|第1回WBC中編

【節丸裕一のとっておき話】アメリカ戦で起きた「世紀の誤審」でJAPANの怒りは頂点に達した|第1回WBC中編

【節丸裕一のとっておき話】アメリカ戦で起きた「世紀の誤審」でJAPANの怒りは頂点に達した|第1回WBC中編の画像

東京での第1次ラウンドを通過した日本代表はアメリカに渡った。その頃、アジア以外のチームのプールも1次ラウンドが始まったのだが、ハイレベルで熱戦、激戦続き。とにかく面白かった。国と国のぶつかり合いって凄いな、と惹きつけられた。

 そんな中で、ちょっとした波乱が起きた。アメリカがカナダに敗れて、失点率による順位決定方式のいたずらで、2勝1敗でも1次ラウンドで敗退する可能性が出てきたのだ。大会関係者は慌てたと思う。結果的にはその失点率で上回ったアメリカが何とか2次ラウンドに進んだ。

 そんな経緯があって迎えた2次ラウンドの初戦が、日本対アメリカだった。あの“世紀の大誤審”が生まれた試合だ。この試合、日本はアメリカ先発ジェイク・ピービー(前年のナ・リーグ奪三振王)からイチローの初回先頭打者本塁打で先制。すぐに追加点を奪うと、先発・上原の好投でリードしていたが、6回に追いつかれる。
  同点で迎えた8回、犠牲フライで日本が勝ち越した、と誰もが思った西岡剛の生還に「タッチアップが早かった」とアメリカがアピール。近くで見ていた二塁塁審はセーフと判定したが、抗議を受けた球審ボブ・デビッドソンが覆してアウトにしてしまった。

 この判定には、日本のみならず地元アメリカや同じプールで戦う韓国のメディアも、強烈に批判した。勝ち越しそこねた日本はサヨナラ負けを喫し、準決勝進出にいきなり後がなくなった。デビッドソンへの怒りもあって、WBCは野球の世界大会という範疇に収まらなくなった。メディアでの露出も増え、注目度は一気に上がったのだ。

 続くメキシコ戦は大勝した日本だが、韓国に1対2で敗戦。試合終了後に韓国の選手がマウンドに太極旗を立て、日本の選手、ファンの悔しさは頂点に達した。
  2次ラウンドのプールAは、この時点で3戦全勝の韓国の1位通過が確定。1勝1敗のアメリカは、最終戦でメキシコに勝てば2勝目で文句なし2位だが、負けても1失点なら失点率で日本を上回り2位通過。つまり、日本が準決勝に進むには、アメリカが2失点以上で敗れることが条件だった。

 しかし、メキシコはもっと不利な条件で、アメリカ相手に13回以降まで戦って、3対0か4対0で勝たなければいけなかった。メキシコは後攻。理論上は可能でも、実質的にはあり得ない条件。メキシコの選手たちは試合前日、ディズニーランド観光を楽しんでいたという。メキシコがアメリカに勝てるとは思えない。日本は99%絶望的な状況だった。

 僕たちJ SPORTSの現地中継チームは、サンディエゴのペトコ・パークで中継機材のセッティングをしながら、かなり暗い気持ちでアメリカ対メキシコをテレビ観戦していた。
  3回、大きな事件が起きる。メキシコの選手の打球がライトポールを直撃したにも関わらず、この日は一塁塁審を務めていたデビッドソンは二塁打と判定した。当然メキシコは猛抗議したが、退けられ、テレビにはポールの黄色い塗料が付いたボールをカメラに向け怒りを露わにする選手が映し出された。

 日本戦に続いて繰り返されたデビッドソンの大誤審。これでメキシコの選手の気持ちにスイッチが入ったように見えた。試合はメキシコが2対1で勝利。失点率で日本はアメリカを0.01上回って、準決勝進出が決まった。奇跡にしか思えなかった。

 市内の日本料理店に食事に出かけると、松坂大輔と出くわした。大会前から「世界一になりたいだけ」と言い続けていたから当然だが、喜びがにじみ出ていた。「決勝で投げれば勝ってくれる」と感じた。店の外でばったり会った宮本慎也と和田一浩も、「テレビで見ていて疲れました」と言いながら、やっぱり嬉しそうだった。
【後編へ続く】

文●節丸裕一

【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、サラリーマンを経てアナウンサーに転身。現在はJ SPORTSなどでプロ野球やMLB中継を担当。フジテレビONE『プロ野球ニュース』にも出演。

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