【野球人が紡ぐ言葉と思い】「セオリーから離れてみることもありなんちゃうかなって」――常識にとらわれない戦術を打ち出す三木肇監督の“大胆さ”

【野球人が紡ぐ言葉と思い】「セオリーから離れてみることもありなんちゃうかなって」――常識にとらわれない戦術を打ち出す三木肇監督の“大胆さ”

堅実な守備で知られた現役時代のプレースタイルとは裏腹に、三木監督の采配はとにかく大胆だ。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

「セオリーから離れてみることもありなんちゃうかなって」(楽天・三木肇監督)

 今季から楽天の指揮を執る三木肇監督は、風貌からは想像できないが、とにかく大胆だ。ヤクルのヘッドコーチを務めていた2015年には「ダブルプレーが崩れて残ったランナーは得点になる」という格言を逆手にとって、「じゃあダブルプレーにはこだわろう」という徹底事項を打ち出した。

「ダブルプレーにはこだわりました。そういう格言があるなら、『守備では併殺を取れるチームになろう』って、キャンプの時から心掛けてきました。大事なのは、ダブルプレーが崩れたら得点が入りやすいものだと頭に入れておくことなんです。ランナーが残ったけどアウトを1つ取れたと思うのではなく、野球にはそういうことがあるというのを意識に置くことが大事です」

 当然、それは守りだけでなく攻撃でも同じだ。ダブルプレーのシチュエーションになった時には、選手が全力疾走で一塁を駆け抜けるよう徹底させた。格言の裏返しで、一塁に残れば得点を挙げやすくなると意識させたわけだ。
 「意識を持ってやることは、絶対に自分次第でできることだと思うんです。今、何をしなくちゃいけないのか、意識を持つことはできる。そのプレーが完成するかどうかは分からないけど、『意識をすることに手を抜かない』のが一番大事なことなのかなと思います」

 こうした格言の域にまで達したセオリーを強く意識する一方で、あえてセオリーを度外視することも考えた。三木監督はヤクルト時代に、たくさんのシフトを試している。従来のポジショニングから離れることで、より効率良く守れるのではないかと考えたのだ。

「ランナーが一塁にいる時、長打を警戒するために一、三塁線を締めるというセオリーがあります。長打を打たれることをこだわっての陣形ですが、一塁に走者がいるわけですから、セカンドとショートは二塁ベース寄りに守る。ということは、一二塁間と三遊間がめちゃくちゃ空いて、ヒットゾーンを広くしていることにもなる。これをやめて、一、三塁線を開けてヒットゾーンの角度を狭めるやり方もありなんちゃうかなって」
  こうした挑戦的なポジショニングは他にもある。15年のCSセカンドステージ第1戦の4回、0対0で一死二、三塁のピンチを招いた時に敷いたシフトだ。セオリーではこういう場合に前進守備を敷くケースがほとんどだが、三木はあえて遊撃手の大引啓次を定位置まで下げた。これは「1点は仕方ないが、2点目は確実に阻止する」という意図があってのことだった。

「ランナー、二、三塁での前進守備は現役時代から疑問に思っていました。なぜなら、二塁走者がノーマークになるからです。リードが大きく取れて走塁がしやすいんですよね。日本ハムのファームコーチ時代に、そのことに気づいていろいろ試してみたんですよ」

 このシフトが功を奏したのか、ヤクルトはこの回を無失点で切り抜けた。三木のもくろみは見事に当たったのだ。
 「野球には長い歴史があって、こういう風にした方がいいというセオリーが多くありますけど、セオリーありきになることで逆に自分が苦しむこともあると思ったんです。なので、常識を度外視したシフト、ポジショニングや作戦を考えるようになりました」

 海の向こうのメジャーリーグでは、実際に打者の打撃傾向に合わせて細かく守備シフトを動かすことがトレンドになっており、間接的に三木の考え方の正しさが証明されているとも言える。伝統にとらわれない自由な発想で、三木監督率いる楽天がパ・リーグに旋風を巻き起こすかもしれない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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