「完全試合だと認めてほしい」10年前に誤審で大記録達成を逃したガララーガの思いとは…?

「完全試合だと認めてほしい」10年前に誤審で大記録達成を逃したガララーガの思いとは…?

大記録を逃した翌日、試合前のランナップカード交換に登場したガララーガは涙ぐむジョイスと固い握手を交わした(C)Getty Images

あれは完全試合だと公式に認定してほしい。10年前に“幻のパーフェクト・ゲーム”を演じたアンドレス・ガララーガはそう望んでいる。

 2010年6月2日、当時デトロイト・タイガースに在籍していたガララーガは、本拠地のコメリカ・パークでクリーブランド・インディアンスを相手に快投を演じた。8回まで一人の走者も許さず、9回表の先頭打者に左中間を破られかけたもののセンターがこれを好捕。続く打者を遊撃ゴロに仕留め、快挙にリーチをかけた。27人目の打球は、一、二塁間への力のないゴロ。一塁手が捕り、ベースカバーに走ったガララーガへ投げ、ボールを受けたガララーガは打者より先に一塁を踏み、試合終了……のはずだった。

 ところが、一塁塁審のジム・ジョイスはセーフと宣告した。リプレー映像を見るとアウトなのは明らかだったが、当時のビデオ判定はホームランか否かの確認のみ。ガララーガは次の打者を三塁ゴロに打ち取り、完封を記録した。試合後にビデオで映像を確認したジョイスは誤審を認めて謝罪。ガララーガは謝罪を受け入れ、翌日の試合前のラインナップカード提出に登場、涙ぐむジョイスと笑顔で握手を交わすシーンに多くのファンが感動した。
  その後、2人はライターを含む共著で著書『Nobody's Perfect(誰も完全じゃない)』を出版。これにより、ガララーガが在籍する球団の試合でジョイスが審判を務めることは禁じられた。ガララーガは12年を最後にメジャーから姿を消し、14年は台湾、15年はメキシコで投げた。ジョイスは17年限りで引退した。

 完全試合を達成した投手は、現在でも23人しかいない。ガララーガがそこに加わりたいと考えるのは当然だろう。しかも、MLB機構がその願いを聞き入れても、被害を蒙る人は見当たらない。あの内野安打が一塁ゴロに変更されることで、ジェイソン・ドナルドの通算安打が142本から141本に減るくらいだ。ジョイスも完全試合の認定に賛成しているという。
  ただ、“幻の完全試合”のままでも、誤審に声を荒げることなく従ったガララーガの姿は今も人々の記憶に残っている。21世紀の完全試合達成者7人のうち、ダラス・ブレイデンとフィリップ・ハンバーの2人は、ガララーガと同じくメジャー通算30勝に届かなかった(他の5人は少なくとも100勝以上)。大記録を達成したブレイデンやハンバーより、達成できなかったガララーガの方が印象に残っているファンも少なくないはずだ。

  ブレイデンは最近、二日酔いで完全試合を達成したことを告白して話題となった。となると、ハンバーも2人に続いて何かを語るのかもしれない。もっとも、そうだとしても2年後のことになりそうだ。なぜなら、ブレイデンの完全試合は10年5月9日。ガララーガ同様、今年が10周年ということでスポットライトが当たったからだ。ハンバーが完全試合を達成したのは12年4月21日である。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

【PHOTO】艶やかに球場を彩るMLBの「美女チアリーダーズ」!

関連記事(外部サイト)