MLB7月上旬開幕を目指すオーナー案に難色を示す選手会は本当に“悪者”なのか?

MLB7月上旬開幕を目指すオーナー案に難色を示す選手会は本当に“悪者”なのか?

ダルビッシュやスネルなど多くの有力選手が現行の開幕案に懸念を示している。(C)Getty Images

7月4日前後のシーズン開幕へ向けてMLB30球団のオーナーがまとめたプランに選手会が難色を示している。2018年のサイ・ヤング賞投手ブレイク・スネル(レイズ)や我らが(?)ダルビッシュ有(カブス)ら有力選手が懸念や異議を表明する一方、イリノイ州知事や元メジャーリーガーのマーク・テシェーラからは選手会を批判する声が出ている。

 テシェーラらが槍玉に挙げているのは、選手会が「2020年の総収入の半分を選手に分配する」というオーナー案に反対していることだ。確かに、全米の失業率が15%に達しようという状況で、ただでさえ大金を稼いでいるメジャーリーガーが「カネの問題」を理由に開幕を渋るとなれば、風当たりは強くなるだろう。MLBが開幕することで、沈滞ムードに覆われたアメリカ社会全体に前向きなメッセージを発信できる。それに水を差すとは何事だ、と考える人も多いはずだ。
  だが、事はそう単純ではない。

 そもそも、選手会はすでに今季の年俸を試合数に応じた額にすることに同意している。現行案の82試合でシーズンが行われる場合、すでに年俸は実質半額となる。オーナー側はその上でさらなる減俸を要求しているに等しい。

 スネルは「コロナに感染して自分の命を危険にさらし、知らないうちに他の人にも広めてしまうリスクを冒すなんて正直、怖い」と率直な心情を吐露している。「国民を勇気付けるため」という大義のもとに選手は給与をカットされ、生命を危険にさらしてプレーする。それをやむを得ないというなら、ではオーナー側はどんなリスクを負うのだろうか?
  もう一つ忘れてはならないのは、過去の経緯を振り返った時に透けて見えるオーナー側の"不誠実"な姿勢だ。MLBは17年連続で過去最大収益を更新し続けているが、好景気に沸いている時には、オーナーたちに成功の果実を選手とシェアするという発想はおよそなかった。逆に、過去2年はFA市場の冷え込みもあって選手平均年俸はむしろ下がっている。球界最強の代理人スコット・ボラスが言うように、「利益は私物化して、損失だけを共有するのはおかしい」のだ。

『CBS Sports』のマット・スナイダーは次のように書いている。「いつだって損をするのは選手たちで、オーナーではない。オーナーたちは長年にわたって記録的な収益を得てきたのに、ほんの数百万ドルを犠牲にしなければならなくなった時は選手を巻き込んで公然と非難する」
  もちろん、選手会も強硬姿勢ばかり貫いていては世論の支持は得られない。どこかで歩み寄るべき時は来るだろう。そうだとしても、「選手会=強欲」という単純な図式で今回の件を捉えてしまうと、本質を見誤ることになってしまう。

文●久保田市郎(スラッガー編集長)

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