侍ジャパンの4番もそうだった…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「予想以上にプロ野球で成功した選手」とは?

侍ジャパンの4番もそうだった…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「予想以上にプロ野球で成功した選手」とは?

鈴木(左)は二松学舎では投手も務めていた。中島(右)は15年に盗塁王に輝くなどプロ入り後に大成した。写真:田中研治、徳原隆元

選手の特徴をメモしながらアマチュア野球を見るようになったのは、自分が大学野球を引退した2001年秋からのことだ。残っている最も古いノートはその年の高校野球近畿大会を記録したものである。ちなみにこの大会は報徳学園高の大谷智久(現ロッテ)が評判で、吉見一起(金光大阪高/現中日)も出場しており、2人のピッチングは今でもよく覚えている。

 一方、アマチュア時代は特に強い印象が残っていないにもかかわらず、プロで一流になった選手も多くいる。

 現在、日本球界最高の野手と見られている鈴木誠也(広島)もその一人だ。二松学舎高にいた鈴木のプレーを初めて見たのは10年秋の都大会、対片倉高戦だった。1年生ながら背番号1を背負い、5番ピッチャーで出場。7回を投げて被安打1、無失点、7奪三振でチームは7回コールド勝ちした。当時のメモには「投球フォームが粗削りで、テイクバックで腰を捻る動きが入り、腕も背中に入ってリリースも安定しない」と書かれている。バッティングに関しては、「形は悪くないが力任せ」という記載のみ。結果も4打数ノーヒットに終わっている。
  鈴木は翌年6月に行われた東京都選抜チームに2年生ながら選出され、第2試合で5番手として登板しているが、打席には立っていない。投手としては「前年秋よりもボールに角度出てきて緩急を使える」という記載はあるが、この日の最速は138キロ。先発した1学年上の吉本祥二(足立学園高/2011年ソフトバンク2位)の148キロと比べても10キロ遅く、まだまだという印象が強かった。

 鈴木はこの年秋の都大会、日大二高戦でも4番ピッチャーとして出場し、6安打1失点で完投勝利をマークしたが、打つ方は犠牲フライ1本のみでノーヒットに終わっている。3年時にはプロが野手として評価しているとの評判は聞こえてきていたが、まさか2位で指名されるとはまったく思っていなかった。投手として注目していたからということもあるが、打撃の印象が強く残っていないのが残念でならない。
  鈴木とともにカープを支える菊池涼介もプロでの成長に驚かされた選手だ。09年4月の岐阜学生野球春季リーグ戦で彼のプレーを初めて見たが、お目当ては菊池ではなかった。元中日スカウト部長の法元英明さんから中京学院大に150キロを投げる投手がいると聞き、その噂の主である池ノ内亮介(2010年広島育成2位)を見に行った時にショートを守っていたのが、当時2年生の菊池だった。

 シートノックでは確かに素早い動きを見せていたものの、試合ではそれほど難しくない打球をエラーにするなど、まだ粗いという印象が残っている。打撃では3番を打ち、タイムリーを含む2安打を放ったが、バットの動きの大きさが気になり、高く評価する気にはなれなかった。菊池本人もプロ入り後、2年春のリーグ戦後に召集された大学日本代表候補合宿で意識が変わったと話しているが、この試合のプレーを見て後に日本を代表するセカンドになるとは夢にも思わなかった。
  そして、アマチュア時代の印象が最も薄く、プロで一流選手となったのが中島卓也(日本ハム)だ。正直に言うと、「印象が薄い」というよりも「ない」と言った方が正確だろう。中島を見たのは2008年4月に行われた高校野球の春季九州大会で、福岡工高の2番ショートとして出場している。チームのエースは三嶋一輝(現DeNA)で、140キロ台のストレートと鋭く変化するスライダーは間違いなく超高校級だった。1回戦で対戦した清峰高には当時2年生の今村猛(現広島)が好リリーフを見せ、こちらも強く印象に残っている。

 この試合、中島は第2打席でライト前ヒットを放ち、第4打席では今村からセーフティバントを決めているが、プレーに関する記録は何も残っていない。翌日の沖縄尚学との試合も4回から見ているが、この試合でも中島に関するメモは残っていない。日本ハムの山田正雄GM(現スカウト顧問)に後で聞いた話だが、日本ハムは早くから中島に目をつけており、山田GMも三嶋を見に行くふりをして中島のプレーを見ていたそうである。
  今回取り上げた選手は全員が野手だが、投手と比べて野手の能力の見極めは本当に難しいと感じることが多い。他にもプロ入り後に意外な成長を遂げた選手はいるが、中島ほど印象に欠けた選手はいなかった。中島の一件が教訓となり、より一層選手のプレーをしっかり見なければという気持ちが強くなったことは間違いない。二度と彼のような見落としがないよう、今後も選手のプレーに目を凝らしていきたいと思う。
 文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。

【カープキャンプPHOTO】第1クール最終日。シート打撃では鈴木、小園、正随がホームラン!

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