タイトルを獲得した若手右腕も…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「してやったり! 」スカウト以上に高く評価していた選手」

タイトルを獲得した若手右腕も…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「してやったり! 」スカウト以上に高く評価していた選手」

昨年は防御率のタイトルを獲得し、プレミア12では侍ジャパンにも選ばれた山本。ドラフトでの指名順位は4位だった。写真:滝川敏之

前回は、アマチュア時代は強い印象が残っていなかったにもかかわらずプロで大成功した、自分にとっては"痛恨"とも言える選手を紹介した。今回は逆にアマチュア時代はそれほど騒がれていなかったが、個人的には高く評価しており、その期待通りに一流となった"会心"と言える選手の例について紹介したいと思う。

 最近の選手でまず思い浮かぶのは山本由伸(オリックス)だ。そのプレーを見たのは2015年9月に行われた秋季宮崎県大会の対延岡学園高戦。左足を上げる動きは今よりも大きく、少し独特だったが、フォームの躍動感には素晴らしいものがあった。普通の高校生の場合、躍動感があると一方で無駄な動きも目立つものだが、山本はそういった問題が一切なかった。

 この日の最速は148キロをマークしたが、素晴らしかったのはストレートだけではない。110キロ台のカーブ、120キロ台後半のスライダーとツーシーム、130キロを超えるフォークとすべての変化球の質が高く、しっかり腕を振って投げることもできていた。フィールディング、クイックも上手く、当時のノートには「悪いこところがない」と書いている。最高の誉め言葉である。あまり報じられていなかったが、4番を打つバッティングも一級品で、この日もスリーベース2本を含む3安打を放ち、まさに山本の独り舞台と言える試合だった。
  この年の高校生は今井達也(西武)、寺島成輝(ヤクルト)、藤平尚真(楽天)、高橋昂也(広島)がビッグ4と言われていたが、ある媒体でドラフト候補のランキングをつけた時には山本を彼らと同レベルに評価し、有力外れ1位候補と推した。プロ入り後の活躍を見ても、ある意味当然という気持ちである。

 山本は一度見てすぐに素材に惚れ込んだ選手だが、何度か見ているうちに徐々に良さが伝わってくる選手もいる。日本ハムで長く活躍し、現在は中日で投げている谷元圭介もそんな選手だ。初めてその投球を見たのは中部大の4年生だった2006年4月の対愛知工業大戦。3年生ながら、当時から評判だった長谷部康平(元楽天)との投げ合いを制し、被安打5、10奪三振で完封勝利をマークした。
  この春は1ヵ月後の対愛知大戦での投球も途中まで見ることができたが、この時も5回まで被安打1で無失点という好投を見せている。この2試合についてはテンポの良さとコントロールは抜群で打たれる気配がなかった。

 しかし、170pに満たない身長が敬遠されてか、プロはおろか社会人の有力チームからも声がかかることはなく、強豪とは言えないバイタルネットに進んだ。アマチュア時代、谷元を最後に見たのは08年の都市対抗野球。TDK千曲川の補強選手として出場し、初戦で敗れたものの大学時代の良さを残したまま、最速は145キロとスピードアップに成功していた。そのピッチングは十分にドラフト候補と呼べるレベルにあった。しかし、ドラフト会議が近づいても谷元の名前はあまり聞こえてこない。最終的には入団テストを受けて7位でのプロ入りだったが、もし身長があと10p高ければもっと高い評価になっていたことは間違いないだろう。
  野手で印象深いのが草野大輔(元楽天)だ。最初に見たのは03年の都市対抗で、当時すでに27歳だったが、パワフルなバッティングとスピード溢れる走塁は強く印象に残った。そして翌年の都市対抗では1試合2発、05年にもホームランを放っており、社会人の中でも完全に頭一つ抜けていた。あと3〜4歳若ければと思ってこちらも見ていたが、29歳となる年にドラフト指名。プロ入り4年目には首位打者争いも演じる活躍を見せている。

 ドラフトはさまざまな巡り合わせがあり、指名順位イコールその選手の実力というわけではないが、山本と谷元は明らかに順位が低く、草野はプロ入りが遅かったということで強く印象に残っている。

 ちなみに、昨年のドラフトでは岡林勇輝(中日5位)の順位が低いように感じた。投手として見るか野手として見るかで評価が分かれたのだろうが、早くから野手に専念させる球団の決断は個人的には大賛成である。柔らかくてフォローの大きいスイングと運動能力を生かした外野の守備は福留孝介(阪神)の若い頃を彷彿とさせるものがある。近い将来、根尾昂や石川昂弥とともに中日を背負って立つ存在になる可能性も十分あるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。
 

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