今も記憶に残る「ジャスティス」の剛速球…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「事前情報なしで衝撃を受けた選手」とは?

今も記憶に残る「ジャスティス」の剛速球…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「事前情報なしで衝撃を受けた選手」とは?

「ジャスティス」の異名を取り、ドラフトでは5球団が競合した田中。プロでは苦しんでいるが、大学時代の投球は圧巻だった。写真:朝日新聞社

アマチュアの試合に足を運ぶ時は、多くの場合はお目当ての選手がいるものだが、その試合で初めて存在を知って驚かされることもある。個人的に最も嬉しくなるのがこのようなケースだが、今回はそんな事前情報なしで観戦して衝撃を受けた選手について振り返ってみたいと思う。

 筆頭は田中正義(ソフトバンク)だ。2014年4月、東京新大学野球春季リーグ戦の開幕戦、創価大と共栄大の試合での出来事である。この日のお目当ては創価大のキャッチャー、寺嶋寛太(元ロッテ)。当時のチームには田中の一学年上に小松貴志(現日本新薬)という絶対的エースがいたため、この日もてっきり小松が登板するものだと思っていたところ、先発マウンドに上がったのがリーグ戦デビューとなる当時2年生の田中だった。

 会場となった大田スタジアムは投球練習中もスピードガンが表示されていたが、田中の投げた初球がいきなり146キロをマーク。そして試合が始まると151キロまでアップし、共栄大打線をわずか4安打、11奪三振で完封してみせたのだ。田中はこの後の大学選手権や3年時に行われたプロとの交流戦での快投でドラフトの目玉となっていくが、そのスタートとなったのがこの試合だったことは間違いないだろう。
  なお、後日ノートを見返していたら、実は田中の投球を見たのはこの日が初めてではなかった。12年7月に行われた創価高と都立川高の試合で田中は背番号8をつけて4番・センターとして出場。7回から1イニングだけ登板しており、ノートには「投手として鍛えれば大化けの可能性も」とあったが、田中というよくいる苗字ということもあってか、その存在を完全に忘れてしまっていた。プロでは故障で思うような結果を残せていないが、大学時代の快投が忘れられないファンも多いはずだ。

 澤村拓一(巨人)も大学でドラフト上位候補となった選手だが、高校時代に初めて見た時の印象が強く残っている。04年9月の秋季栃木県大会、佐野日大高と国学院栃木高の試合のことである。当時1年生で背番号10をつけた沢村は、同点で迎えた2回途中から登板し、負け投手となったもののロングリリーフで好投を見せた。

 ただ、この時のイメージは今とはまったく違う。ノートにも「流れがスムーズな流麗なフォームでヒジが柔らかく使え、力みなく球持ちも長い。雰囲気は涌井(秀章/横浜高)に近い」とある。現在のパワーピッチングとはまったく違うのがこのメモからもよく分かるだろう。ちなみにこの日の最速は133キロだったが、それでも良さは十分に伝わってきた。その後も高校時代の澤村のピッチングを2度見ているが、一番良かったのはこの試合である。イメージしていた成長とは違ったが、体力強化が投手を大きく変えるということを教えてもらった例と言えるだろう。
  イメージとは違う成長を遂げたが、初めて見たインパクトが強かった例では吉田正尚(オリックス)も当てはまる。吉田を初めて見たのは09年6月に富山で行われた高校野球の北信越大会、桜井高と敦賀気比高の試合だ。この日のお目当ては現在も吉田のチームメイトである山田修義(オリックス)で、山田も最速138キロながらボールの角度が素晴らしく、ドラフト候補に相応しいピッチングを見せていた。

 一方の吉田は1年生ながら4番・レフトで出場。当時のプロフィールは170cm、67kgと今よりかなり細かったが、第1打席で火の出るようなライナーのセンター前ヒットを放った。メモには「他の選手と比べて明らかにヘッドスピードの速さが違う」とある。1年春でここまで強く印象に残る選手はなかなかいない。体のサイズもあって、まさか現在のような強打者になるとは思わなかったが、当時から素質の片鱗は十分に見せていた。

 ちなみに翌年秋の北信越大会では吉田の前の3番を1学年下の西川龍馬(広島)が打ち、金沢高のエースで150キロ右腕と評判だった釜田佳直(楽天)から3安打を放つ活躍を見せており、2年続けて敦賀気比の1年生バッターに驚かされたのもよく覚えている。
  最後に紹介するのは石橋康太(中日)。彼のプレーを初めて見たのは中学3年の時である。15年の都市対抗準決勝の前に行われたエキシビジョン・ゲームでリトルシニア選抜チームの4番・キャッチャーとして出場。イニング間の二塁送球タイムは、2.0秒を切れば強肩と言われる中で1.9秒台を2度、実戦でも1.91秒という高校生でもトップレベルのタイムを叩き出したのだ。ヒットこそ出なかったが、たくましい体つきと力強いスウィングも強く印象に残った。

 中学野球を見る機会は他のカテゴリーに比べると少ないが、今まで自分が見た中学生では圧倒的にナンバーワンの選手だ。スーパー中学生は高校で伸び悩むケースも少なくないが、石橋は高校からドラフト指名を勝ち取り、プロでも1年目から一軍出場を果たしている。郡司裕也という強力なライバルが入団してきたが、切磋琢磨してさらなるレベルアップを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。

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