投手は"令和の怪物"、野手は…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「今まで見た中で最も凄い選手」

投手は"令和の怪物"、野手は…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「今まで見た中で最も凄い選手」

先日のシート打撃で160キロの速球を投げて話題となった佐々木。今から一軍デビューが待ちきれない。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

長年アマチュア野球を見てきて、最も多くされる質問の一つが「今まで見た選手の中で誰が一番凄かったか?」というものだ。というわけで今回は2001年秋以降、現場でプレーを見た選手で個人的に最も凄さを感じた選手を紹介したいと思う。

 全ポジション、カテゴリーから一人を選ぶとなると、迷わず佐々木朗希(大船渡高→ロッテ)になる。高校1年夏から147キロをマークして評判になっていたが、実際にそのプレーを見たのは2年夏の対盛岡四高戦だった。この試合、佐々木は背番号20をつけていたが、その長身もあってウォーミングアップの時からすぐにその存在は目に付いた。

 まず驚かされたのが試合前のキャッチボールと遠投だ。この日の大船渡は一塁側ベンチで、佐々木はセンター方向から一塁線に向かって投げていたが、力を入れて投げたボールはまるで重力がないかのような軌道とスピードで相手選手に一直線で届いていた。1973年春の選抜に出場した作新学院高の江川卓の遠投を見て、相手の北陽高(現関大北陽)の選手が静まり返ったというエピソードを聞いたことがあるが、佐々木の遠投にもそれくらいのインパクトがあった。
  試合ではこの日、計102球のストレートを投じたが、そのうち35球が150キロ以上をマークしている。そのストレートがただ速いだけではないというのが佐々木の凄さである。左足を高く上げてもまったく上半身がぶれず、踏み出した左足にしっかり体重が乗り、投球のスムースな流れを妨げるような無駄な動きが見られないのだ。もし2年夏の時点でプロ入りしたとしても、ドラフト1位で複数球団が競合したことは間違いないだろう。

 初見のインパクトが強いと、見る機会を重ねるごとに欠点が気になってくるものだが、佐々木に関してはそれも当てはまらなかった。最終学年では3月に行われた作新学院との練習試合、160キロをマークした夏の盛岡三高戦、8月の高校ジャパン壮行試合と3度佐々木のピッチングを見る機会があったが、常に初めて見るような新鮮な衝撃を与えてくれた。おそらく野球をまったく知らない人が佐々木のピッチングを見てもそのフォームの美しさやボールの凄さは十分に伝わるはずだ。本当に凄い存在というのはこのような選手のことを言うのだろう。
  野手はかなり迷ったが、一人を選ぶとなると清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)になる。とはいえ、佐々木のように最初から圧倒的な凄さを感じたわけではない。初めて彼のプレーを見た15年夏の甲子園、今治西高戦だった。甘いボールを見逃さない集中力と打球の速さこそ目立ったものの内角に弱さがあり、打つ以外のプレーの緩慢さも気になった。甲子園の後に行われた大学ジャパンとの壮行試合で田中正義(創価大→ソフトバンク)のストレートをセンター前に弾き返したのは見事だったが、この時点ではまだ2年後どうなるか分からないというのが率直な感想だった。

 印象が大きく変わったのは2年秋、最上級生になってからだ。都大会の決勝で桜井周斗(日大三→DeNA)から5連続三振を喫したこともあったが、それ以外の試合では高い注目を集めながらも常に結果を出し続けていた。打席での集中力の高さは高校生の中に一人だけプロが混ざっているように感じたものである。
  上手く上半身の力を抜いてスウィングしているのでテレビ画面越しではそこまで凄さは伝わってこないが、ネット裏の近い位置から見るとヘッドスピードと打球音には驚かされるものがあった。プロ入り後の2年間は故障もあってまだ本領発揮とはなっていないが、一年間万全にプレーできる体力と筋力がついた時にどの程度の成績を残してくれるかは今から楽しみである。

 佐々木は2019年、清宮は2017年のドラフトで指名されており、二人とも直近にプロ入りした選手と言うことで拍子抜けした読者もいらっしゃるもしれないが、自分の気持ちに嘘偽りなく選んだ結果である。長くアマチュア野球の現場を見ていて思うことは、トップ選手の力量は年々確実にレベルアップしているということである。それはプロでも同様であることは間違いない。今後もこの二人を超えるような凄い選手が必ずや出てくるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。
 

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