【プロ野球選手の社会貢献活動:第2回】「何か役に立ちたい」――菅野の思いから始まった東京都医療支援の裏側

【プロ野球選手の社会貢献活動:第2回】「何か役に立ちたい」――菅野の思いから始まった東京都医療支援の裏側

巨人による総額5000万円の東京都医療支援を主導したのはエースの菅野。以前から介助犬協会の支援などの社会貢献活動を行っていた。写真:山崎賢人(THE DIGEST編集部)

4月8日、プロ野球選手会による『新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金』(以下『コロナ基金』)支援の発表から間もなく、巨人、楽天で投手としてプレーした小山雄輝さん(現・巨人球団職員)から連絡があった。「選手会とBLF、早かったですね。素晴らしいです」。

 実は、選手会が支援を決めるのとほぼ同じタイミングで、巨人も東京都の医療支援の話を進めていたのだ。小山さんが所属するファン事業部の吉野逸人さんに取材した。

「(選手会長の)菅野智之と話したのは4月5日でした。彼が以前から行っている介助犬協会への支援活動についての相談だったんですが、その場で菅野から、医療現場のために僕も何か役に立ちたいと話があったんです」
  菅野は医療支援を申し出た理由について、「報道でも知っていましたし、知人の医療関係者からも、病院は満床状態で医療機器も不足していると聞いていたので、少しでも助けになれればという思いでした」と語る。

 吉野さんは、それから2、3日おきにジャイアンツ球場で菅野と打ち合わせを行った。すると練習時間が重なっていた坂本勇人や丸佳浩が「ぜひ一緒にやらせてください」と言ってきたという。「彼らは巨人を代表する中心選手だし、菅野や坂本も若い時から社会貢献へのマインドが強かった。丸も広島在籍時代の2018年、西日本豪雨災害の際に多額の寄付を行っています。3人とも自分の意思で寄付を申し出てくれました」

 そしてこの動きが、程なくして原辰徳監督の耳に入った。原監督が阿部慎之助二軍監督にも声をかけ、最終的に5人で寄付を行うことになった。具体的な内容については、吉野さんが球団副代表補佐である鈴木アントニー氏と二人三脚で話を進めていった。
 「でも、基金の準備には一番時間がかかりました。東京都の医療支援のために、誰がいくら寄付するかは決まった。でも、寄付する先、基金の受け皿をどうするのか。東京都と話しながら、一番良い方法を探しました」

 とはいえ、医療現場の状況を考えれば、寄付は少しでも早い方がいい。「目安として、4月24日の小池都知事の(毎週金曜日の)定例会見に間に合わせたいという思いで検討しました。結局、読売新聞社と社会福祉法人『読売光と愛の事業団』が設立した『東京コロナ医療支援基金』を通じての寄付になりました」

 24日の定例会見では5人のメッセージ動画が流された。その中で菅野は「みなさんも是非支援の輪に加わってください」と訴えた。同じ巨人の岩隈久志、さらには野球好きで知られるタレントの中居正広さんがこの活動に賛同し、一般からの寄付も4月末までに3000万円を超えた。結果的にこれは、吉野さんが考えていた「球団と選手の知名度、影響力を活かした啓蒙活動」のひとつの形になった。
 「選手の活動を発表すると大きく扱われやすい分、鼻につくのか、売名行為といった批判もされやすい。本人はすごくショックを受けます。発表しなければ批判されないが、影響力も行使できない。そのバランスですよね。こういう活動が広がるためにも、選手が傷ついたり後悔したりしないように、これならカッコイイ、俺も同じことやろう、と思ってくれる最大限を求めていきたい」

 そして、「同じ思いを持った人たちの道標になりたい」と吉野さんは語ってくれた。

「そういう意味で、巨人が球団として批判の対象になることも覚悟しながら、球界の先頭で頑張っていきたい。社会全体のSOSに届くように、球団ごと、選手ごとにやっていくことも価値があるし、よりスピーディーに12球団で手を取り合っていくメリットもある。今後は12球団での連携も強めていきたいですね」

 昔から“球界の盟主”と言われた巨人。吉野さんの言葉からは、人気だけではなく、社会的な役割を果たしたいという思いがにじんで見えた。

文●節丸裕一

【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、サラリーマンを経てアナウンサーに転身。現在はJ SPORTSなどでプロ野球やMLB中継を担当。フジテレビONE『プロ野球ニュース』にも出演。

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