「Withコロナ」の時代に日本の野球はどう変化していくのか。起用法だけでなく、風習・慣例にも新たなマインドが…

「Withコロナ」の時代に日本の野球はどう変化していくのか。起用法だけでなく、風習・慣例にも新たなマインドが…

ほぼ固定メンバーがお決まりだった西武にしても、選手起用に変化が見られる。写真:産経新聞社

ビジターチーム・ソフトバンクのバッティング練習が終わり、三塁側ベンチ前に姿を現したホーム・西武ナインの人数の少なさに虚を突かれた。

 普段だとアップ、シートノックと続いていくルーティンのはずなのだが、6月28日の日曜日は、スタメンの選手たちだけがアップを行い、両チームはシートノックをすることなく両監督によるメンバー表の交換、君が代斉唱と時は流れていった。

 同一カード6連戦の6戦目、さすがにシートノックは不要に思ったのだろうか。いつもの工程が省かれたそうしたやり方に、新しい様式が生まれるつつあるのを感じずにいられなかった。

 無観客で開催が始まった2020年はいろんな意味でイレギュラーなシーズンだ。

 試合数の減少は言わずもがなだが、長距離の移動回数を減らすために、パ・リーグでは同一カード6連戦が組まれている。さらには、外国人登録枠の増員、あるいは、ベンチ枠の増枠といった違いが見られる。

 テレワークでのデスクワークなど新しい仕事様式が進む一般社会と同様に、プロ野球もまた新たなマインドが必要とされている。試合前のシートノックが削られたのも、そうした背景があってのことなのかもしれない。
  変化はシートノックだけではない。ラインアップやブルペンマネジメントにも、様々な工夫が見られる。

 例えば、ソフトバンクは、この6連戦で全試合スタメン出場をしたのは、栗原陵矢、柳田悠岐、バレンティン、甲斐拓也、松田宣浩、上林誠知の6人だ。24日の2回戦で西武・先発の今井達也から起死回生の逆転3点本塁打を放った今宮健太や好守備を連発する牧原大成、勝負強い打撃が光る長谷川勇也などフレキシブルな起用のされかたをしている。

 ほぼ固定メンバーがお決まりだった西武にしても、27日の試合では、好調の栗山巧をスタメンから外し、売り出し中の鈴木将平を先発起用。中村剛也をD Hに入れるための処置だが、28日は前々日に起死回生の満塁弾を放った木村文紀を休ませ、鈴木を起用していた。

 また、ブルペンに目を移すと、ソフトバンクは26日の試合で3連投になるモイネロの登板を回避。ブルペンでの調整もさせなかった。森唯斗も、この6連戦ではセーブシチュエーション以外では登板させない決断を下した。全てが結果につながったわけではないものの、目先の勝利ばかりの囚われずにマネジメントをしていこうというものだろう。
  もっとも、こうした起用法の変化は、西武−ソフトバンクだけではない。

 同一カード6連勝を含む8連勝をあげたロッテは、28日の試合では6−5と1点リードの9回表、クローザーの益田直也をマウンドに上げていない。26、27日と連投、24日にも投げていたためである。

 また、セ・リーグでは外国人選手を多く抱えるDeNAと阪神は、憎いほどのやりくりを見せている。

 DeNAはピープルズが先発した27日に、パットンをベンチから外していた。そして、28日にピープルズを登録抹消。エスコバーを昇格させ、ロペスをベンチから外した。これは28日にパットン、エスコバーで救援陣を固めるための処置である。また、27日にパットンを外せたのも、26日の試合で三嶋一輝を休ませていたためで、そうしてうまくやりくりしているのだ。
  一方の阪神は、24日の試合で先発したガンケルを翌日には抹消している。そして、27日からはサンズを登録。外国人は、そのサンズとスアレス、ボーア、マルテの4人体制で、2日間を戦った。また、ブルペンの登録選手においても、前日に36球を投じたルーキーの小川一平を27日にベンチから外している。

 もちろん、こうした選手登録のやり方は、今シーズンになって始めたばかりのものではない。ただ、開幕延期によるイレギュラーなシーズンが、様々な状況に対応できるようなルーティンや起用法の変化につながっているのは言うまでもないだろう。

 野球に限ったことではないが、日本は過去の風習や慣例を大事にしすぎるところがある。時に、メニューから省いてもいい内容でも、当たり前のようにやってきたことから、なかなか離れられない。

 メジャーリーグだと、ナイトゲームの翌日がデーゲームの場合は、当日の練習そのものがないという球団が多くある。疲労回復の時間を確保するためだが、日本はナイターでどれだけ遅くなっても、翌日のデーゲームには朝の9時から選手たちがグラウンドに来ているケースはザラにある。

 先に述べた通り、28日の西武―ソフトバンク戦ではシートノックがなかった。ホームの西武はもちろんだが、ソフトバンクにしても、5戦も同じところで戦えば球場の形状や芝の跳ね具合などは十分理解しているだろう。そこまで形式にこだわらなくて良いのだ。事実、この試合は、野選こそあったものの、無失策試合だったのだ。

 イレギュラーなシーズンが新たなマインドを日本の野球に作り出している。「WITHコロナ」の時代にあって日本野球がどのように変わっていくのかは、今季のもう一つの楽しみかもしれない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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