2020年シーズンのひそかな見どころ――アストロズの記録に立ちはだかる2つのカベとは?

2020年シーズンのひそかな見どころ――アストロズの記録に立ちはだかる2つのカベとは?

アストロズの連続記録が途切れるか否かは、ベイカー新監督の采配にかかっている。写真:Getty Images

今シーズンに適用される特別ルールの一つに、延長戦のタイブレイクがある。10回以降は無死二塁からスタートする。二塁走者は前のイニング(10回表であれば9回表)に3アウト目を喫した打者(あるいはその代走)となり、この走者がホームインしても投手に自責点はつかない。このタイブレイク形式は、2年前にマイナーで導入されたものと同じで、無死一、二塁から始まるWBCのタイブレイクとは違う。

 タイブレイクの是非はともかく、これによって継続中の連続記録が途切れることになるかもしれない。昨シーズンのアストロズは年間を通して一人も敬遠四球で歩かせなかった。これは敬遠四球が公式記録となった1955年以降、史上初めてのことだ。ナショナルズと対戦した昨年のワールドシリーズでは、第2戦の7回表に満塁策を採ってホアン・ソトを歩かせたが、レギュラーシーズンの敬遠四球は2018年8月17日が最後。その翌日から、202試合にわたって敬遠四球なしが続いている。

 アストロズと同じア・リーグ西地区には、現在のメジャー最強打者であるマイク・トラウト(エンジェルス)がいることも併せると、この記録の希少価値はさらに増す。トラウトが受けた敬遠四球は過去3年ともリーグ最多で、計54回に達する。ア・リーグでその次に多いのはJD・マルティネス(レッドソックス)の28回で、トラウトのおよそ半分。メジャー全体でも、2位のコディ・ベリンジャー(ドジャース)より11度も多い。
  すでにお気づきの人も多いと思うが、無死二塁の場面では、最初の打者を敬遠四球で歩かせて一、二塁とする策が考えられる。一塁を埋めることで封殺が可能になり、ゴロを打たせてゲッツーに仕留めることもできる。アウェーのチームが同点のまま裏の守備についた場合、敬遠四球の可能性はさらに高まる。無死二塁で相手が送りバントをした際、二塁走者を三塁でアウトにするには、タッチプレーが必要だ。それに対し、無死一、二塁であれば封殺になるので、タッチは要らない。二塁走者の生還はサヨナラ負けを意味するので、敬遠四球で走者を2人に増やしても守る側のデメリットはない。

 もう一つ、敬遠四球なしのストリークが途切れそうな別の要素も、アストロズには存在する。監督の交代だ。昨年まで采配を振るったAJ・ヒンチは、09〜10年に指揮を執ったナ・リーグのダイヤモンドバックスでも、あまり敬遠はとらなかった。だが、ヒンチは昨オフにサイン盗みスキャンダルでその座を追われ、後任としてダスティ・ベイカーが就任。彼の22年の監督歴を見る限り敬遠の頻度は“平均的”で、少なくともヒンチよりは多い。

 一体アストロズがどこまで記録を続けられるのか。これも、今シーズンのひそかな見どころになるだろう。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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