【2020MLB注目のスターたち】マイク・トラウト&ムーキー・ベッツ――走攻守すべてを備えた「至高にして究極」の2人

【2020MLB注目のスターたち】マイク・トラウト&ムーキー・ベッツ――走攻守すべてを備えた「至高にして究極」の2人

MLBを代表する5ツール・プレイヤーのトラウト(左)とベッツ(右)。トラウトは14、16、19年に、ベッツは18年にMVPを獲得している。(C)Getty Images

端的に言ってしまえば、マイク・トラウト(エンジェルス)とムーキー・ベッツ(ドジャース)は現在のMLBが誇る最高のプレーヤーである。打って走って守るというベースボールの根幹要素を、他の誰よりも高いレベルで兼備しているのがこの2人だからだ。かつてのウィリー・メイズや肉体改造前のバリー・ボンズがそうだったように、ベースボールというスポーツそのものが、トラウトやベッツのような選手を理想形?として設計されたと言っても過言ではないだろう。

 トラウトはフルシーズン1年目の2012年に新人王受賞&MVP投票2位と華々しくスターダムへ駆け上った。主要タイトル獲得は12年の盗塁王と14年の打点王だけだが、10年代に入って急速に浸透した新型指標WARでは毎年のようにリーグ最高を記録し、昨シーズンを含めてMVPをすでに3度獲得している。総合的な勝利貢献度を示すWARはまさにトラウトのためにある指標と言っても良く、最近になってWARマシーン?というニックネームがついた。
  一方、14年にレッドソックスでメジャーデビューを果たしたベッツは、16年から4年連続でゴールドグラブを獲得し、その間シルバースラッガーも3度受賞。18年には首位打者とMVPを獲得し、ワールドシリーズ制覇の原動力となった。今年2月のトレードでベッツがドジャースに移籍したことで、2人は同じLAのフランチャイズでプレーすることになった。

 どちらも走攻守を兼備するという点では同じながら、プレースタイルは対照的と言ってもいいほど違う。トラウトは188センチ、106キロとメジャーリーガーとしては特別大柄なわけではないが、首の太さとがっちりした上半身は、まるでアメリカン・フットボールのラインバッカーのよう。それでいてスウィングには無駄な力みがまったくなく、シンプルに振り抜いた打球は、古くからの常套句を使うなら「ピンポン玉のように」飛んでいく。加えて、体格からは意外なほどのスピードでフィールドを縦横無尽に駆け回る。このしなやかさがトラウトの特徴と言っていいかもしれない。

 175センチ、81キロと一般のアメリカ人男性と比べてもかなり小柄なベッツは、これまた使い古されたフレーズで言うなら「全身がバネのような」という表現がしっくりくる。類稀な身体能力を生かしてライトの守備では広大なエリアをカバーし、走塁能力も非常に優秀。走攻守全体のバランスではトラウトを凌駕している。
  ベッツがすごいのは、あれだけ小柄で線が細いにもかかわらず、打席でも並み居る大男たちに負けないパワーを発揮している点だ。その源泉は、ずば抜けたスウィングスピードとリストの強さにある。ベッツが内角球を鋭いスウィングで一閃し、フェンウェイ・パークのグリーンモンスターを超える一発を放つシーンは、ボストンのファンにとってはおなじみの光景だった。

 2人は6つめのツール?、すなわち性格面も申し分ない。トラウトは最も熱心にファンへのサインを書く選手としても知られている。ベッツも礼儀正しい好青年で、先日は自宅近くのスーパーマーケットで買い物客全員の代金を肩代わりしたばかりか、店員には食べ物を差し入れして話題になった。どちらも、球界を代表するスーパースターになった後も地に足の着いた姿勢を崩すことはない。

 惜しむらくは、2人ともテレビ映え、動画映えする派手なパフォーマンスをしたがらないことだろうか。そのせいか、圧倒的な実力を持ち、プレー自体も魅力的であるにもかかわらず、全米レベルのスーパースターという地位にはまだ至っていない。

 考えてみれば2人は、NBAやNFLの選手がよくするような、これ見よがしのドヤ顔を決めていい場面が他のどのメジャーリーガーより多くあるはずなのに、いつもクールに装っている。まるで「これくらい普通っしょ」とでも言うように。もしかしたら、それが彼らなりの自己主張なのかもしれない。
  そもそも、2人がベースボールを選んでくれたこと自体を、私たちは喜ぶべきかもしれない。ベッツはバスケットボールでは悠々とダンクを決め、ボウリングの腕もプロ級。トラウトは今年のスプリング・トレーニング中、ゴルフの打ちっぱなしでとんでもない当たりを飛ばす動画がSNSで話題沸騰となった。

 本来、トラウトとベッツは、テレビよりも実際に球場に足を運んでこそ、その真価が見えてくる選手だ。打って走って守る。ボールではなく、彼らの一挙手一投足だけをずっと見ていても入場料を払う価値がある。

『ジ・アスレティック』の記者リーヴィ・ウィーバーはこう言っている。「トラウトのすべてが、よく晴れた夏の日にボールバークで過ごす時の感触を思い出させる。彼のプレーを見ることは、あの素朴な感触の象徴なんだ」

 20年シーズンが無観客での開催になったことで、しばらくは球場でトラウトやベッツのプレーを楽しむことはできない。それでも、テレビやインターネットの画面を通じてでも、ベースボールの至高?と究極?を体現する2人のプレーを改めて堪能したい。どこのチームのファンかを問わず、MLBを愛する者すべてがそう思っているはずだ。

文●久保田市郎(SLUGGER編集部)

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