コディ・ベリンジャー&ブライス・ハーパー――フルスウィングで観客を魅了する2人のスター【2020MLB注目のスターたち】

コディ・ベリンジャー&ブライス・ハーパー――フルスウィングで観客を魅了する2人のスター【2020MLB注目のスターたち】

涼やかなイケメンのベリンジャー(左)と、ワイルドなハーパー(右)。一見対照的な2人の共通点がフルスウィングだ。写真:Getty Images

「Make Baseball Fun Again( ベースボールに楽しさを再び)」

 ブライス・ハーパー(現フィリーズ)がこう唱えたのは、今から4年前の2016年のことだ。当時、ナショナルズでプレーしていたハーパーが、開幕戦の試合後にクラブハウスで記者に囲まれた際にかぶっていた白いキャップには、赤い文字でそう綴ってあった。これはその年、大統領選挙に出馬中だったドナルド・トランプのスローガン「Make America Great Again」になぞらえたものだった。

 確かに、ハーパーはベースボールを楽しくしてくれている。16歳で『スポーツ・イラストレイテッド』誌の表紙を飾るなど早くから神童?として注目を集め、ドラフト全体1位指名でのプロ入り、19歳でメジャーデビューして新人王獲得、そして15年の史上最年少での満票MVP受賞。フィールド内外で常に話題を振りまく男は、スター性では間違いなく球界bPと言っていいだろう。

 実績では大分差が付いてしまったけれども、スター性においてハーパーがマイク・トラウト(エンジェルス)よりも上と言われるのも、大見得を切る役者ぶりが理由だ。昨年8月にサヨナラ満塁ホームランを放った際、ファウルにならないことを確信するまで打球を見守った後、一塁からホームまでわずか11秒の猛ダッシュで叫びながら帰ってきたのも、いかにも彼らしいパフォーマンスだった。
  一方、17年にメジャーデビューしたコディ・ベリンジャー(ドジャース)も、ここまで驚くほどハーパーの足跡をなぞってきた。メジャー1年目のオールスター選出と新人王はまったく同じ。そして3年目の昨年には、ハーパーより1年早くMVPに輝いた。

 ベリンジャーには、さすがにハーパーほどのショーマンシップはないが、すらりと伸びた長い足に甘いマスク、そして選手としての実力も超一流とあって、着実に人気は上がっている。昨年は試合中に女性ファンがフィールド上に乱入し、ベリンジャーに抱き着こうと突進するというアクシデントが何と2試合続けて(!)発生した。これがスターの証でなくてなんだろう。

 キャリアの歩みや、左打ちで主にライトを守るということ以外にも、2人は大きな共通点がある。それは、強烈なフルスウィングを身上としていることだ。まるで親の仇かのようにボールをしばき上げる2人の凶悪なまでのアッパーカット・スウィングは、たとえ遠く離れた席からでも一目で分かるトレードマークだ。

 ただ、フルスウィングは同じでも、そこに至るまでの動きは違う。ハーパーがメジャー2年目を迎えた頃、元メジャーリーガーで解説者のFP・サンタンジェロが分析した通り、インパクトの瞬間の姿勢、特に腰の回転と後ろ足は、あのベーブ・ルースと酷似している。そのスウィングの格好良さは大谷翔平(エンジェルス)も真似しているほどだ。
  ハーパーがやや沈み込みながらパワーを溜め込み、まるで獲物に襲いかかろうとする猛獣のようなスウィングに対し、ベリンジャーは比較的静かに直立した感じで、リラックスした状態から突如ボールにアタックする。「静」から「動」、狙いを定めて確実に仕留めるスナイパーのような怖さがそこにはある。昨年は「フライボール革命」の伝道者として知られるロバート・ヴァンスコヨックの指導を仰ぎ、47本塁打を量産。これは、15年に本塁打王となったハーパーよりも5本多い数字だった。

 もっとも、彼らの表現?は打つだけに留まらない。デビュー当初、ハーパーの走塁は無謀とも評された。チャーリー・ハッスル?のニックネームを持つピート・ローズばりに、ヘルメットを飛ばしながら走り、頭からベースへ飛び込んでいた。さすがにそういった激走は見かけなくなったが、積極的な走りは今でも変わらない(今でもヘルメットは飛ばすが)。

 一方のベリンジャーはあの強烈なスウィングにかかわらず、打席から一塁までわずか平均3.97秒。これは150機会以上のメジャー最速タイムで、二塁手の正面へゴロを打ち、守備位置が少し深かったとはいえ、一塁送球よりも先にベースを駆け抜け、内野安打としたこともあった。
  守備においても同様だ。右投げと左投げの違いはあるものの、どちらも強肩を誇る。昨シーズン、ライトの守備で2ケタ補殺を記録した選手はMLBでこの2人しかいなかった。ハーパーの送球は最長310フィート、ベリンジャーは最速101マイルを記録。ベリンジャーは初のゴールドグラブを受賞し、ハーパーもファイナリストに名を連ねるなど、球界内での評価も確かなものになっている。

 今後、ハーパーと3歳下のベリンジャーが、ともにすべてのツールを存分に発揮し、一度ならずMVPを争うようになっても何の不思議もない。

 今シーズンは日程の関係で実現する可能性はほとんどないが、2人が同じ試合に出場すれば、昨年7月のような本塁打の打ち合いに加え、攻防の応酬も期待できる。例えば、右中間の奥深くへ長打を放ったベリンジャーがハーパーの送球をしのいで三塁に到達すると、その後の打席で同じような当たりを打ったハーパーも二塁を回り、対してベリンジャーがそれを阻もうと……といった具合だ。妄想?と言われればそれまでだが、2人のプレースタイルなら、十分に起こり得るだろう。それが現実となる日が、今から待ち遠しい。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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