【2020MLB注目のスターたち】ロナルド・アクーニャJr.&フェルナンド・タティースJr.――新しさと自由を体現する2人の“ジュニア”

【2020MLB注目のスターたち】ロナルド・アクーニャJr.&フェルナンド・タティースJr.――新しさと自由を体現する2人の“ジュニア”

髪型も着こなしも、そしてプレースタイルも自由。アクーニャJr.(左)とタティースJr.(右)はまさに新時代のスターだ。写真:Getty Images

球界にスーパースターがいないという声が聞かれて久しい。理由はさまざまだが、一つにはNBAやNFLの選手と違ってメジャーリーガーは感情表現をあまり前面に出さず、自分自身のPRが十分にできていないという指摘がある。

 MVPを3度受賞しているマイク・トラウト(エンジェルス)がいい例だろう。確かに品行方正、ロールモデルとしての役割は担っているが、スーパースターとしてのカリスマ性には欠ける。プロスポーツはエンターテインメントであることを考えれば、感情豊かに自分を表現することも重要な役目なのではないか。

 MLBもそうした声を意識したのか、2018年のポストシーズンのCMでは「Let The Kids Play」というスローガンを掲げた。バットを投げ、派手に喜び、ジャージを破るなど感情表現を爆発する選手の映像を流した後で、ケン・グリフィーJr.が登場して「No more talk, let the kids play」(理屈じゃないんだ。若いやつらに自由にプレーさせよう)と言い切る。

 このCMで、先頭を切って登場したのがロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)だった。彼と昨年デビューしたフェルナンド・タティースJr.(パドレス)は、古臭い?球界に挑戦状を叩き付けるかのように現れた新世代スーパースター候補の代表格だ。
  18年開幕前には大谷翔平(エンジェルス)と評価を二分するトップ・プロスペクトだったアクーニャJr.は、その年のメジャー最年少選手としてデビュー。史上最年少での5試合連続本塁打、球団記録を塗り替えるシーズン8本の先頭打者弾など活躍を続けると、このCMが頻繁に流れたポストシーズンでも、史上最年少の満塁弾を放って新人王を獲得した。昨年も2年目のジンクスなど関係なしに大活躍し、史上2番目の若さで30本塁打&30盗塁を達成。40−40にはわずかに3盗塁及ばなかったものの、盗塁王を獲得した。

 アクーニャJr.はまさに「Let The Kids Play」の精神を体現する存在と言っていい。彼が従来のスター選手と一線を画すのは、心の声に忠実であることだ。ヘルメットを飛ばして走り、塁上で大げさなポーズをとる。チャンスで凡退すれば思いきり悔しさを表現し、好守を見せればダグアウトに戻って親友のオジー・アルビーズと大騒ぎ。そこには何の打算も制約もない。

 まるで「球場は俺の庭だ!」と言わんばかりの振る舞いに少なからず批判の声はあるが、「誰にでも自分のライフスタイルがあるように、俺にも俺のスタイルがある。誰かに失礼なことをしようとか怒らせようとか、そんな気持ちはまったくない。ベースボールへの愛からしていることなんだ」と、本人は意に介していない。
  昨年、20歳85日という若さで開幕メジャー入りを果たしたタティースJr.は、そこまで感情豊かに自分を表現するわけではない。だが、「プレーは口ほどに物を言う」。フィールド上でのタティースJr.は走攻守にド派手なプレーでファンの心をわしづかみにする。

 打っては豪快なスウィングでアレックス・ロドリゲスが持つ20歳以下の遊撃手記録を更新する22本塁打、守ってはメジャー屈指の強肩を生かして何度もハイライト集に登場した。7月のブレーブス戦で牽制で誘い出され、挟まれながらも巧みに相手をかわしてセーフ。ジョシュ・ドナルドソン(現ツインズ)からは「去年、俺が見た中で最もすごいプレー」と最大級の賛辞を受けた。

 2人とも、プレー以外の面でも新世代の選手であることをアピールしている。だらしなくボタンを外したユニフォーム、ゆっくりとした周回に胸元で跳ねる太い金のネックレスとドレッドヘア。どれを取っても、古くからの球界人が眉をひそめそうな装いだが、だからこそ若年層のファンには魅力的に映るのもまた間違いない。

 アクーニャJr.はそうでもないが、タティースJr.はSNSでの発信にも積極的だ。インスタグラムでは上半身裸の見事なシックスパックや、オシャレな服に身を包んだ姿を披露し、MLB.comに「『(男性ファッション誌)GQ』の撮影?」と書かれたこともある。今年4月に全30球団の代表選手がテレビゲーム『MLB The Show20』で世界一?を争った「プレーヤーズ・リーグ」にも進んで参加。自身が操作するタティースJr.でサヨナラ本塁打を打って狂喜乱舞する姿が話題を呼んだ。
  才能とルックス、スター性を兼ね備えた彼らが将来、MLBを代表するスーパースターになるだけの資質を持っていることは誰の目にも明らかだ。だが、本物?のスターになるためには、超えなければならい壁も存在する。

 アクーニャJr.は度々、監督やチームメイトから怠慢プレーを叱責されている。昨年の地区シリーズでは本塁打を確信した打球がフェンスを直撃、まともに走っていなかったため一塁止まりになった。派手なパフォーマンスの是非とは別次元で、全力プレーを怠るようでは周囲の信頼は得られない。タティースJr.は、故障の多さが心配だ。昨年は太腿裏、腰を痛めて2度の戦線離脱。8月中旬以降は1試合もプレーすることなくシーズンを終えた。しかも、18年にはマイナーで指を骨折している。今後も故障離脱が頻発するようなら、到底スーパースターにはなれないだろう。

 だが、2人がそれぞれ課題を克服した時、NBAやNFLのスターに負けない、MLBが真に求めるスーパースターが生まれるはずだ。

文●城ノ井道人

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