【2020MLB注目のスターたち】ハビア・バイエズ&マット・チャップマン――守備でファンを魅了するファンタジスタ

【2020MLB注目のスターたち】ハビア・バイエズ&マット・チャップマン――守備でファンを魅了するファンタジスタ

好プレーといえばやはり守備。中でもチャップマン(左)とバイエズ(右)のダイナミックなプレーは特に見る価値がある。写真:Getty Imgaes

野球の華はホームラン」とよく言われる。確かに、ベーブ・ルースの昔からホームランは多くのファンを魅了してきた。乾いた球音を残し、ボールがどこまでも飛んでいく時の爽快感は否定できない。

 しかし不思議なことに、YouTubeでMLBのプレー動画を検索してみると、上位に来るのは守備のハイライト集だ。MLB.comがまとめた「2019シーズンのトッププレー100」でも、守備のプレーがトップ10を独占し、全体でも実に84個を数えた。

「静」の時間が多い野球において、守備は選手が自らの身体能力を自由に表現できる数少ない場面だ。その瞬間、彼らはアーティスト?になっているようにすら思う。

 数多くの芸術家?が妙技を競い合う中、好プレー集に必ずと言っていいほど登場しているのが、ハビア・バイエズ(カブス)とマット・チャップマン(アスレティックス)である。2人が出てこないハイライト集など存在しないと断言してもいいくらいだ。
  プエルトリコ出身のバイエズは、多彩なポジションをこなす汎用性の高い選手だ、二遊間が本来の持ち場。スペイン語で「魔術師」を意味するエル・マーゴ?の愛称通り、変幻自在のあらゆるプレーでファンを虜にする。

 猫のようにすばしっこい動きで打球に追いつくこともあれば、三遊間の奥深くから強肩を発揮するプレーも得意。中でも二塁盗塁を阻止する際、捕手からの送球を受けて走者をまったく見ることなくタッチするノールックプレーは、彼にしかできない超絶技巧だ。
 
 16〜17年にバイエズとチームメイトだった通算188勝のジョン・ラッキーはこう言っている。「あいつのプレーを見るまで、タッグプレーに技術なんて必要ないと思っていた。そうじゃなかった。俺が見てきた中でバイエズのタッチは最高のプレーだ」

 初めてメジャーに定着した16年、バイエズはこの妙技を何度となく披露し、カブス108年ぶりの世界一に貢献。プエルトリコ代表として出場した翌年のWBCでも、捕手のヤディアー・モリーナ(カーディナルス)を右手で指差しながらノールック・タッチプレーを完成させた。本人いわくこの技術は、「小さい頃に遊びで身に付けた」らしいが、実は元々が左利き。今でも字を書いたり、フォークやスプーンを持つのも左だ。昨年のある試合では、相手が野手を登板させた時に自身は左打席に立ってフルスウィングを見せていた。
  バイエズが変幻自在のテクニックを得意とするなら、チャップマンの持ち味は豪快そのもののライフルアームだ。

 投手として98マイルを投げたこともある強肩と体幹の強さから生み出されるチャップマンの送球は、唸りを上げて一塁手のミットに突き刺さる。「キャノン砲」「重力キャンセラー」と形容されるのも納得で、前方に転がったボテボテの打球でも、三塁線から大きく外れた打球だろうとお構いなし。アスレティックスの本拠地オークランド・コロシアムはMLB最大のファウルエリアを持つが、それがかえってチャップマンの凄さをアピールする形にもなっているのだから面白い。

 周知のように、これまで多くの日本人内野手がメジャーの壁に阻まれてきた。理由はさまざまだが、守備力、特に肩の強さが決定的に違うことは大きいだろう。実際、多くのプロ野球選手がメジャーの内野手の強肩ぶりについて「あり得ない」、「次元が違う」と口にしている。

 そのあり得ない?世界の住人からあり得ない?と思われているのがチャップマンだと言えば、その凄さが伝わるだろう。元チームメイトで、自身も三塁を守ることがあるジェド・ラウリー(現メッツ)はこう言っている。「グラブさばき、守備範囲、肩の強さ、どれを取っても僕が見た中ナンバー1。多くの選手ができないようなプレーもあいつには関係ない。『ワーオ!』って言ってしまうようなプレーを毎晩やってのけるんだ」
  2人の好守はデータ上でも裏付けられている。バイエズはゴールドグラブ受賞経験こそないが、フィールディング・バイブル賞のマルチポジション部門を16年から3年連続で受賞。遊撃手に専念した昨年はDRSが26、スタットキャストの守備指標OAAでも、内野手メジャー1位の19をマークした。

 チャップマンは、フルシーズン1年目の18年から2年連続で全ポジションMLB1位のDRSをマーク。ゴールドグラブはもちろんのこと、リーグ最高の守備選手に贈られるプラチナグラブもダブル受賞を続けている。

 そんな2人だが、知名度に関しては大きな差がある。ユニフォーム売り上げでMLBトップクラスの人気を誇るバイエズは、17年にアスリートの肉体美を特集する『ESPNマガジン』の「ボディ・イシュー」に起用され、今年は人気TVゲーム『MLB The Show20』のカバーを飾った。それに対してチャップマンは、所属チームの人気の低さもあってか知名度はいまひとつ。MLB.comが「彼の名前を覚えなさい!」と題する守備動画をわざわざ制作してPRするくらいである。今回彼を取り上げたのも、皆さんにチャップマンの魅力を知ってほしいという、ある種の使命感(?)もあった。

 ともあれ2人の他にも、メジャーには現実離れしたプレーをやってのける選手が大勢いる。冒頭で紹介した「トッププレー100」の動画を見れば、その凄さに度肝を抜かれるはずだ。

 だから、改めて言いたい。「メジャーの華は守備である」と。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)

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