【MLB珍獣図鑑】報復死球で話題のジョー・ケリーはおバカなことにも全力投球のいたずら好き

【MLB珍獣図鑑】報復死球で話題のジョー・ケリーはおバカなことにも全力投球のいたずら好き

現DeNAのオースティンとの乱闘事件で名を馳せたケリー。今回もアストロズ相手にひと暴れした。(C)Getty Images

現地時間28日、アストロズ対ドジャースの今季初対決が行われた。17年ワールドシリーズでアストロズがサイン盗みを行っていた因縁もあり、やはりひと波乱あった。ドジャースの救援右腕ジョー・ケリーがアレックス・ブレグマンとカルロス・コレアの頭部目がけて危険球を投じ、さらにコレアを三振に仕留めた後にも煽りまくったのだ。

 このケリーは、もともと球界きってのいたずら好き。12年から14年途中まで在籍していたカーディナルス時代から、数々の伝説を残している。中でも本人が「最高傑作」と自負するのが、「車中ウ●コ放置事件」だ。ある時、チームメイトにいたずらを仕掛けられたケリーは復讐を決意。その選手が試合に出場している間(!)、バッグに動物の糞をどっさり入れて駐車場に置いてあった彼の車に放り込んだのだ。

 チームは直後に遠征へ出発したため、気温40度近くに達することも珍しくない真夏のセントルイスで、芳香剤の代わりにウ●コが仕込まれた車が1週間も放置されることになった。車内の状況を想像しただけでも恐ろしいが、それを「最高傑作」と胸を張るケリーもどうかしている。
  ドジャースと戦った2013年リーグ優勝決定シリーズでは、「国歌斉唱我慢比べ事件」というのもあった。試合前の国歌斉唱でダグアウト前に整列する際、ケリーは最後の一人になるまで立ち続けることをひそかなノルマにしていた。ところが、相手ドジャースのスコット・バンスライクがこれに気付いた。

 第6戦、静かな戦いの火ぶたが切って落とされた。国歌斉唱が終わり、他の選手が試合の準備を始めてもケリーとバンスライクは立ったまま。最後は球審が「お前らいい加減にしろ!」と諫めてようやくベンチに引き下がった。アメリカでは大学野球などでたまに見られる光景らしいが、ワールドシリーズ進出を賭けた場でやってのけるとは前代未聞。日本だったら球界、ファン、マスコミと全方位から集中砲火を浴びること間違いなしだろう。
  変装も得意技の一つだ。優れた曲を作り上げたミュージシャンに贈られるグラミー賞も受賞した、ラッパーのネリーがカーディナルスの試合を訪れた際は、特殊メイクのマスクを被り、よぼよぼの爺さんになりすましてテレビインタビューを敢行。14年途中にレッドソックスへ移籍した後も、スプリング・トレーニングで「ジム・ブキャナン」なる偽レポーターに化けて選手たちを“取材”。チームメイトは正体がケリーであることに最後まで気付かなったという。

 一部の珍獣ウォッチャーの間では認知されていたケリーの知名度が一気に上がったのが、18年4月の大乱闘事件だ。宿敵ヤンキースとの一戦で、ケリーが投じた157キロ(!)の速球が、タイラー・オースティン(現DeNA)を直撃。オースティンが前の打席で併殺崩しの“殺人スライディング”を行ったことに対する報復死球だったことは明らかで、この時はすぐ大乱闘に発展した。
  この一件で6試合の出場停止処分を受けたケリーだが、すぐさま街のヒーローに祭り上げられたことは言うまでもない。何せボストンは、他のチームとの対戦でも、試合が盛り上がったら「Yankees Suck !(ヤンキース最悪!)」の掛け声が自然発生する土地柄。出場停止期間中、プレーオフを戦うNHLブルーインズの試合を訪れた際は、アリーナのジャンボトロンに乱闘の映像が流された直後にケリーの姿が映し出されると、大歓声が上がった。

 また、乱闘の翌日にはさっそく「JOE KELLY FIGHT CLUB」と書かれたTシャツがファンサイトで売り出された。「FIGHT CLUB」とはもちろん、デビッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演の傑作映画から取ったもの。現代消費社会に漬かった主人公が、拳と拳のシンプルな殴り合いを通じて「男らしさ」を取り戻そうと……(以下略)。それはともかく、ケリーのTシャツはすぐさま大きな反響を呼んだ。チーム内でもJD・マルティネスがいたく気に入って、一時は毎日のように着ていたという。
  面白いのは、ケリーがTシャツのヒットをチャリティ活動と結び付けたことだ。ケリーと奥さんのアシュリーは数年前から「ミッション108」という慈善団体を立ち上げ、インドなどで性的搾取の被害者に住居を提供するなどの活動を展開している。そこでケリーは、「ミッション108」に108ドル寄付した人に「ジョー・ケリー・ファイト・クラブ」Tシャツをプレゼントするというキャンペーンを展開。目標は1万ドルだったが、たった1ヵ月で2万5000ドルが集まったという。本来ならあまり褒められた行為ではないはずの乱闘事件をチャリティ活動に活用するあたり、いかにもアメリカ人らしい。

 典型的なカリフォルニアボーイで、本人いわく「あまり物事をシリアスに考えるほうじゃない」。座右の銘も特になし。家族全員、お気楽な性格のいたずら好きとのこと。どこか飄々としていて、ヤンキースとの大乱闘事件でも、オースティンがマウンドに向かって突進する中、ケリーは「Let's Go」とクールにつぶやいていた。その姿は、怒りに我を忘れるというより、ヒートアップしたライバル対決の中心にいる自分を楽しんでいるようにも見えた。
  18年オフ、レッドソックスの世界一を置き土産にFAとなり、ワールドシリーズで対戦したドジャースと3年2500万ドルで契約。従って、サイン盗みが起きた17年のワールドシリーズの時はまだドジャースのメンバーではなかった。さらに言えば、レッドソックスも18年に一部の選手がサイン盗みを行っていた。そんな中で、真っ先にアストロズ相手に仕掛けていくあたり、さすがはケリーと感心せずにはいられない。

文●久保田市郎(SLUGGER編集部)
※『SLUGGER』2019年3月号より加筆修正の上、転載

【PHOTO】世界中から猛者が大集結!ダルビッシュ、田中らも活躍するMLBの投手を一挙紹介!
 

関連記事(外部サイト)