県大会で得た手応えと課題。プロ注目の明石商・中森俊介と来田涼斗が“最後の甲子園”へ

県大会で得た手応えと課題。プロ注目の明石商・中森俊介と来田涼斗が“最後の甲子園”へ

来田(左)と中森(右)、プロ注目の2人が甲子園での最後の一戦に臨む。写真:藤原彬

口を真一文字に結んで表情を緩めないエースがマウンドに立ち、パワフルなスウィングが魅力のリードオフマンが屈託のない笑顔でベンチを盛り上げる。グラウンドでは対照的に映る3年生の中森俊介と来田涼斗は、明石商を投打で引っ張ってきた。

 ともに1年夏に甲子園デビューを果たすと、2年時は春夏連続でベスト4入り。中森は聖地で通算5勝、来田は3本塁打。知名度はすでに全国区だ。先日まで行われていた夏季兵庫県大会では、相手側の応援席に座る保護者も2人を撮ろうとスマホをかざす様子が多く見られた。

 この県大会から8月10日開幕の甲子園交流試合(センバツ代替大会)までの全勝を目標に掲げていた明石商は、初めの3試合をコールド勝ちと強さを発揮しながら中森と来田がスタメンから外れた最終4戦目に延長11回で敗退。チームとしては悔しさを味わったが、ドラフト上位候補でもある2人のプレーはネット裏に集まった各球団のスカウトをうならせた。 中森にとっては多くを経験できた大会となった。初戦は開始時間を約30分遅らせた雨の影響でボールが先行する場面も多かったが、2戦目は制球中心の投球を心掛けて3ボールのカウントを作らなかった。

 梅雨が明けて夏本番で迎えた3戦目当日は、夏バテで家を出る際に吐き気をおぼえながら「今日は暑くなるのが予想されていたので、序盤は6、7割の力」で三塁を踏ませず、7回を0封。降板するまで打線の援護は初回の1点のみだったが、「接戦の方が緊張感もあって投げやすかった。いつも以上に力が出る」と言ってのけた。

 落とし穴は、大会全勝をかけた神戸第一との最後の4戦目だった。タイブレークに突入した延長10回から救援した中森は昨夏の甲子園以来となる球速150キロを叩き出し、直後の攻撃で味方が1点を勝ち越し。逃げ切りを図る11回も最初の四番打者を三振に仕留めたが、次の打者に初球をレフト前に運ばれた。 狭間善徳監督にとっては、そのヒットが勝敗を分ける分水嶺だった。「今日の相手は初球から振ってきた。狙われてる時はボールから入らないといけないと常に言ってましたけど、悪い癖で初球に真ん中へカーブを投げて三遊間を破られた。あれがすべて。2018年夏の甲子園で負けた試合と同じ」。

 その後、1死満塁のピンチとなり、押し出しの四球で追いつかれて、最後は内野安打でサヨナラ負け。大会中、中森はゲームを作れる要因として「相手のバッターの苦手なコースや雰囲気を感じながら投げている」ことを挙げたが、敗戦後は「自分の失敗が失点につながった」と詰めの甘さを悔いた。

 実はこの日、当初は投げる予定ではなかったが、最後に競ったら登板する可能性はあると伝えられていたという。狭間監督は「2点負けている状況で出ることはないのかなと思うのが普通だけど、気持ちは切るなという話はしていた。どんな状況でも投げるという気持ちを持っておかないといけない」と手厳しかったが、最後に「いい経験にはなるやろね」と付け加えた。
  一方、「チームに流れを持っていくのが1番バッターの役目」と語る来田は、今大会の初打席で一度もバットを振ることなく存在感を示した。4球で四球を選んで出塁後に先制のホームを踏むと、続く2回にも四球で歩きチャンス拡大。「とにかく塁に出るという気持ち」を有言実行する4打席全出塁(2安打2四球)の働きで打線に火をつけた。

 3戦目はプレーボールからわずか数秒、初球をとらえて二塁打にすると外野フライと犠牲フライで生還。「明商らしい点の取り方」を実践した。

 圧巻は2戦目に放った3ランだ。高めの内角球に反応してバットを振り抜くと、放った打球を見上げながら、好きな選手に挙げる柳田悠岐(ソフトバンク)ばりの“確信歩き”。打った本人だけではなく、両軍ベンチの選手と観衆も打球の行方を追い、球場内が静まり返った後にどよめきが訪れた。 キャプテンとしての役割も果たした。ナインに「大会だと思うと身体が動きにくくなったりすることもあると思うので、練習試合と思って」と声をかけた。

 来田が悔やむのは、チームが敗れた5戦目のバッティングだ。2点を追う6回、無死一塁の場面で代打として打席に入ると、3球目を強振。打ったのは、2戦目に本塁打を放ち「秋に比べるとさばけるようになって、試合でも結果が出るようになってきた」と手応えを感じていた内角球だった。しかし、結果は外野フライ。「つなぐ気持ち」を強調していた来田が、本塁打で同点の場面で「自分の欲が出た」。走者2人を置いた延長10回の打席も同じく内角球を強く叩いたが、外野フライに倒れて「打ちミスで直していかないといけない」と反省の弁が口をついた。 明石商を牽引する投打の両輪。背番号1を着けた中森の頼もしさを、センターの守備位置から見る来田は「あまり感情を出さずに投げ続ける姿を見ていて、自分の気持ちも上がってくる」と語る。

 その来田のリーダーシップを、中森は「キャプテンの来田がベンチでも笑顔でいてくれるとムードも良くなりますし、しんどい時こそ笑顔にと考えてやっている」と評する。

 互いに高め合ってきた2つの才能は、独自大会で得た手応えと課題を高校最後の公式戦(8月16日の対桐生一高戦)、そしてその先で待つ次のステージで、さらなる成長の糧に変えられるだろうか。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

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