コロナ禍で出場機会をつかんだジャイアンツの捕手2人に訪れた幸運とは?

コロナ禍で出場機会をつかんだジャイアンツの捕手2人に訪れた幸運とは?

出場試合数は9試合とハイネマン(左)の方が多いが、本塁打はゼロ。一方、トロンプ(右)は5試合で2本塁打と打撃で持ち味を発揮している。(C)Getty Images

今シーズンのジャイアンツでは、2人の捕手がスタメンマスクを分け合っている。29歳のタイラー・ハイネマンと、25歳のチャトウィック・トロンプだ。新型コロナウイルスの蔓延がなければ、彼らは今頃マイナーでプレーしていたかもしれない。メジャーにいたとしても、先発出場機会が少ない控えだったに違いない。

 本来、ジャイアンツ不動の正捕手である33歳のバスター・ポージーは、新型コロナウイルスの感染リスクを考慮し、開幕前にシーズン全休を決めた。また、本来は控えの1番手だったはずのアラミス・ガルシアは2月初旬に腰の手術を受けて戦線離脱。シーズン序盤にデビューする見込みだった23歳の超有望株ジョーイ・バートも、ポージーを手本に経験を積むというプランが崩れたせいか、今のところ昇格の動きはない。

 こうした状況は、ハイネマンとトロンプの2人に出場機会だけでなくプラスアルファの喜びをもたらした。ハイネマンの場合は、兄弟のフィールド揃い踏みだ。8月1日のレンジャーズ戦で、自分がキャッチャーで打席には2歳下の弟スコットが立つという場面が実現したのだ。
  兄弟ともにメジャー2年目。昨年8月に弟が兄より1ヵ月早くメジャーデビューした。3月のオープン戦でも2人は捕手と打者として対戦したが、その数ヵ月後に公式戦で実現するとは思っていなかったはずだ。どちらも有望株ではなかった上、この時点でのメジャー通算出場は兄弟合わせて40試合にも達していなかった。2人とも仲が良く、キャンプが中断されてから再開されるまでは、一緒に練習をしてきたという。

 一方、開幕直後の7月28日に昇格したトロンプは、デビュー前にオンラインの会見でこう語っていた。「アルバ島の首相とスポーツ担当相から、祝福のテキストメッセージをもらったんだ」。ベネズエラの北西にあるオランダ領のアルバ島を故郷とするメジャーリーガーは、トロンプで史上6人目。現役では他にザンダー・ボガーツ(レッドソックス)しかいない。それだけに、アルバ島の人々が寄せる期待は大きい。余談だが、トロンプの出身地は首都のオラニエスタッド。この名はオランダ語で「オレンジの街」という意味で、ジャイアンツのチームカラーもオレンジであることを考えると、奇縁を感じないでもない。

 コロナ禍が幸いして出場機会が巡ってきた2人だが、無観客試合で行われている今は、ハイネマンとトロンプの家族も、そしてアルバ島の人々も、球場で声援を送ることはできない。けれども、このチャンスを生かして結果を残していけば、メジャーリーガーとして家族や島民の目の前でプレーできる日がきっと来るはずだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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