トラウトがいるのに最下位に低迷…エンジェルスはなぜ弱いのか

トラウトがいるのに最下位に低迷…エンジェルスはなぜ弱いのか

マッドン監督を招聘したにもかかわらず、地区最下位に低迷するエンジェルス。5年連続の負け越しが濃厚だ。(C)Getty Images

大谷翔平が所属するエンジェルスが苦しんでいる。今季から名将ジョー・マッドンを招聘にしたにもかかわらず、8月30日時点で12勝22敗、勝率.353でア・リーグ西地区最下位に低迷。29日には内野手のトミー・ラステラをアスレティックスに放出し、5年連続の負け越しが濃厚となっている。

 シーズンMVPに3度も輝くマイク・トラウトという球界最大のスーパースターを擁し、豊富な資金力を誇るにもかかわらずなぜここまで低迷が続くのか。もちろん、大谷自身の不振も一つの要因ではあるが、それ以上に根深い問題が横たわっている。3つの観点から分析してみよう。

@投手陣の崩壊
 ここ数年来、エンジェルスは投手力不足に悩まされている。今季は新加入のディラン・バンディが意外な活躍を見せているが、にもかかわらず防御率5.41はリーグワースト3位。昨年は規定投球回をクリアした投手が皆無で、100イニングを超えたのも一人だけだった。
  にもかかわらず、ビリー・エプラーGMはオフのFA市場でゲリット・コール(現ヤンキース)、リュ・ヒョンジン(現ブルージェイズ)といった一線級の先発投手補強には動かず、三塁手のアンソニー・レンドーンを7年2億4500万ドル(約258億円)という超大型契約で獲得。当時から「補強が必要なのは先発投手だったのでは?」という声が出ていたが、結果的にその懸念が的中する形になった。

 若手投手が肩やヒジを痛めるケースが後を絶たないのも近年のエンジェルスの特徴だ。タイラー・スキャッグス(昨年7月にオピオイドの過剰摂取で死去)に始まり、ギャレット・リチャーズ(現パドレス)、アンドリュー・ヒーニー、そして大谷と期待の投手がトミー・ジョン手術を受けるケースが頻発。手術には至らなかったものの、今年は2年目のグリフィン・キャニングが右ヒジの違和感で一時離脱。投手に故障は付き物とはいえ、ここまで怪我が多いと球団のケアや管理体制に問題があると言わざるを得ない。
 A年俸バランスの偏り
 『SLUGGER』の誌面では以前から指摘しているが、エンジェルスの年俸バランスはかなりいびつな構成になっている。トラウトを筆頭に上位5人はいずれも野手で、この5人だけで1億2500万ドル(約131億6750万円)に達する。一方、投手はフリオ・テラーンの900万ドル(約9億4800万円)が最多。チーム全体でも見ても、総年俸の実に8割近くが打者に充てられている。このバランスは明らかに異常だ。事実、この歪みがそのまま投手成績の低迷にも反映されている。

 実は、オーナーのアート・モレノは投手との大型契約を好まないと言われていて、昨オフに大物獲得に動かなかったのもこの意向を反映していると考えられる。確かに、故障のリスクを考えれば及び腰になるのも理解できなくはないが、その一方でコールやマックス・シャーザー(ナショナルズ)、ジェイコブ・デグロム(メッツ)といった超一流投手はその実力に見合った報酬を得ているのもまた事実。結局、中途半端な投手をとっかえひっかえ獲得してはどれも成功しないというパターンを繰り返しているのがエンジェルスの現状なのだ。

Bファーム組織の停滞
 もちろん、FAやトレードで大物を補強しなくとも、投手陣を強化することは不可能ではない。レイズやアスレティックスは慢性的な資金難にあえぎながらも優れた若手育成と隠れた才能を発掘する優れた目利きによって優秀な投手陣を作り上げた。
  だが、エンジェルスでは近年、エース候補と呼ばれるような素材がななかなか出てこない。@で指摘した若手投手の相次ぐ故障も要因だが、優れたタレント自体が少ないのも事実だ。しかも、8月4日にデビューしたトップ・プロスペクトのジョー・アデルを筆頭に、現在チームで期待を集めている選手の大半は野手。『MLB.com』によるプロスペクト・ランキングでは、上位10人中投手は2人しかいない。大型補強には消極的、下からの戦力供給も期待薄となれば、投手難の早期解決は期待できそうにない。

 昨年9月、『CBS Sports』が『首が危ないGMランキング』という不吉な企画を発表した際、エプラーGMは2位に入っていた。そして、次のように書かれていた。「もし再びポストシーズンを逃すようなことがあれば、エプラーはおそらく職を追われるだろう」。ポストシーズンどころか、21年ぶりの地区最下位が濃厚とあっては、おそらくGM更迭は避けられまい。ただ、GMを交代させたところで問題が解決するわけではない。トラウトや大谷の才能をいたずらに「浪費」する状態はいつまで続くのだろうか。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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