NPB入りのハードルは年齢だけ?田澤純一の現状と本人の意思は…

NPB入りのハードルは年齢だけ?田澤純一の現状と本人の意思は…

本場の大舞台を経験してきた田澤だが、帰国後の初戦マウンドでは緊張したという。写真:大友良行

元メジャーリーガーの大物投手がドラフト戦線に急浮上した。

 ボストン・レッドソックスなどで活躍し、現在はBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに所属している田澤純一だ。

 横浜市生まれの田澤は、小学3年から軟式野球を始め、横浜商大高では高1年夏からベンチ入り。2年時にチームは甲子園出場したが出番はなく、3年夏に横浜高の涌井秀章投手(現楽天イーグルス)と県大会ベスト4をかけて投げあうも惨敗した。

 2005年に新日本石油に進むとリリーフを任され、2008年のスポニチ大会でJFE東日本を相手に7回2死から6者連続三振、大会新の18三振を奪取。同年の都市対抗野球ではMVPに当たる橋戸賞を獲得した。クイックを得意とし、平均150キロの速球とフォーシーム、カーブ、スライダー、フォークなど鋭い変化球を投げる投手として、複数の日本のプロ球団が注目していた。
  しかし、その年の9月にメジャーリーグ挑戦の意思を表明し、12球団にドラフト会議での指名を見送るように要請した後、MLB入りしてしまった。この動きにNPB(日本野球機構)12球団が、有望選手の海外流出対策で設けたのが所謂「田澤ルール」だ。

 野球協約には掲載されてはいないが、アマチュア選手がNPB入り拒否の意思を示した上で海外球団と契約した際は、高卒なら3年間、大卒と社会人選手なら2年間はNPB球団と契約できないというルールを作った。海外チームに”入団後”ではなく"退団後"というのが条件となっていて、アメリカなどの海外へ挑戦した場合、結果を残せず退団となってもすぐに日本のプロ野球でプレーすることができないと決められた。 

 ところが最近になって田澤ルールの見直しや、撤廃を求める声がNPB選手会や球団からも出始め、9月7日の実行委員会で撤廃することが決まった。

 その背景には「各球団の育成環境が08年に比べると今は格段に整備されている。米国のマイナー球団に所属するよりも報酬、待遇、練習環境の面ではるかに良い条件だという評価がアマチュア球界にも定着してきたことから、田澤ルールを撤廃する」とNPB側から発表があった。
  このルールが撤廃されたことで、10月26日に行われるドラフト会議で田澤の指名は可能となる。

 田澤は、2008年12月に松坂大輔(現西武ライオンズ)のいたボストン・レッドソックスと3年のメジャー契約。翌年8月のデトロイト・タイガース戦で初先発し、23歳66日で日本人メジャー最年少記録となる初勝利を挙げた。2010年は右ひじ靭帯損傷でトミー・ジョン手術をしたものの、2013年には上原浩治投手(元巨人)とレッドソックスのクローザー、セットアッパーとして救援陣の一角を占め、ワールドシリーズ制覇に貢献している。

 今年はシンシナティ・レッズとのマイナー契約が解除され、7月にBC武蔵に入団が決まった。BC武蔵では、9月13日現在で9試合を投げて2勝0敗、防御率3.00と力投を見せている。

 本場の大舞台を経験してきた田澤だが、帰国後の初戦マウンドでは緊張したという。
 「自分で投球をイメージしてマウンドにあがったのですが、久しぶりの日本だったのでかなり緊張しました。一球一球、しっかり自分の球を投げるぞ、と自分自身に言い聞かせながら投げました。Maxは152キロで、すべて捕手のサイン通りです。三振も2つとれたし、結果は3人で終わったので、まあ良かったのではないかと思います。

 毎回毎回いいピッチングをするのがベターですが、良い時もあれば悪い時もある。しっかり準備して、また次の試合に向かいます。コロナ禍の中、駆けつけてくれたファンの声援は本当にうれしい。振り返って、良かったと思える野球人生にしたい。日本のマウンドに立てるように携わってくれた方々に感謝したいです」

 田澤ルール撤廃については「後に続く選手が出てきたとき、障害にならなくなったことがうれしい。ご尽力いただいた皆様に感謝いたします。今後、自分を必要としてくれる球団がありましたら、いろいろな人と相談して決めたい。そのためにも今は、埼玉武蔵ヒートベアーズで精一杯投げたいと思っています」と語っている。
  田澤はMLBで388試合に登板実績がある。即戦力投手としてNPBの各球団が放ってはおかないだろう。では、実際に今年のドラフトで指名された場合、彼はNPB入りするのだろうか。

「日本のボールは、ヌルヌルするし、ベタベタ感があるので、現在のところどうしても違和感はぬぐいきれません。特に夏は、汗もかくし。だけど、それも徐々にですが慣れつつあります。アメリカよりマウンドは固めですが、これも時間が解決してくれると思います。今までアメリカにいて、現在は未知の日本のBCリーグにいるわけなので、知らないことが多く、教わりながら少しでもチームに貢献できればと考えています」

 今でも150キロ前後の速球を投げるし、変化球も豊富で、本場の経験も積んできている。日本でも中継ぎとして十分通用するに違いない。もし、障害があるとすれば、34歳というドラフト指名選手としては、多少年齢が高いことだろうか。
  早くも球界では、「ヤクルト入り」の噂がささやかれている。アメリカ時代に知り合った斎藤隆投手コーチ、青木宣親選手らと、親しく付き合っている関係があるからだという。

 いずれにせよ、信頼している大久保秀昭日本石油監督をはじめ、世話になっている周囲の人たちに相談して決めることになるだろう。

取材・文●大友良行
【著者プロフィール】 
おおとも・よしゆき/元大手新聞社の報道写真記者。事件事故取材の傍らメジャーリーグやサッカーW杯などの欧州サッカーを取材。現在は、全国の大学野球、春夏の甲子園をはじめとする高校野球、都市対抗を中心に社会人野球などを深く取材している。著書に「野球監督の仕事(共著・成美堂出版)」、「CMタイムの逆襲(東急エージェンシー)」などがある。

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