退任報道が出たラミレス監督。5年間で露わになった“功罪”とは?

退任報道が出たラミレス監督。5年間で露わになった“功罪”とは?

ラミレス監督の去就が取り沙汰されている中、改めてその5年間を振り返る。写真:萩原孝弘

 「若手、中堅、ベテランが融合したチームはさらなる進化を遂げており、いよいよ成果をあげる“集大成”の一年となります」

 今シーズンで5年目を迎えた、ラミレス監督の開幕時の意気込みの言葉。昨年はリーグ2位に入り、巨人の連覇を阻む存在として期待されたDeNAだが、今季は主力に故障者が相次いだこともあり、優勝どころかAクラス入りも危ぶまれる状況になっている。

 そうしたこともあってか、ラミレス監督が今季限りで退任するとの一部報道も出ている。球団社長はこれを否定し、進退云々はまだ分からないものの、改めてラミレス政権の5年間を振り返ると、さまざまな「プラス」と「マイナス」が見えてくる。
   2016年の監督就任時には、キャプテン・筒香嘉智(現タンパベイ・レイズ)を中心に、若手の桑原将志、倉本寿彦、新人捕手の戸柱恭孝らをレギュラーに抜擢。センターラインの固定に着手してチームの礎を形成した。成熟期になる18年からはFA加入の大和、ルーキー神里和毅、トレード加入の伊藤光らを起用し、チームに競争原理を導入。データと直感を駆使した“Day by day baseball”へと移行していく。

  打線を見ると、就任当初から2番に梶谷隆幸を抜擢する攻撃型布陣を積極的に採用。17年には9番に投手ではなく、勝負強い倉本を配置して話題を呼んだ。大黒柱の筒香も4番だけでなく、3番や2番、時にはリードオフに起用し、宮崎敏郎が故障した際は三塁も任せた。

 矢継ぎ早にブルペン陣をフル回転する“マシンガン継投”も特徴で、17年には5投手が60試合以上に登板。短期決戦では今永昇太、濱口遥大をリリーフ起用する策もハマった。オープナーや相手打者によって守備を大胆に移動させるシフトも早くから取り入れるなど、変化を恐れないチャレンジング采配は、間違いなくNPB に新風を吹かせた。

  また、屈辱的な大敗を喫しても選手を批判することはなく、「起きてしまったことは変えられない。しっかり準備をして明日は違う日にする」「どう始まったかよりも、どう終わるかが重要」「連敗の後には必ず連勝が来る」など、ポジティブな発言でチームを鼓舞。取材対応の良さも非常に素晴らしいものがある。

 選手の能力、調子を見極める目は鋭く、同じ外国人のネフタリ・ソトには配球やミートポイントなどをアドバイス、今年は梶谷や倉本にも的確な助言を与え、復活をアシストした。筒香の後釜として大抜擢した佐野恵太は、昨季までは代打中心だったにもかかわらず、今季は首位打者のタイトルも狙える4番打者に成長。今やすっかりチームの顔になっている。これらは間違いなく、ラミレス監督ならではの功績だろう。
  とはいえ、打撃面でも課題は散見された。外国人選手初の名球会入りした自らの経験則から、「ファーストストライクを積極的に打ちに行く」ことを信条にするスタイルをチームに意識付けた。これは諸刃の剣でもあり、ハマった時の破壊力は抜群である一方で、淡白な攻撃に終わることも少なくなく、過去2年連続で出塁率リーグワーストの要因の一つになった可能性はある。

 また、パワー重視の編成となり、ヒットが出ても各駅停車、つまり先の塁を奪うことがあまりできなかった。実際、ベースランニングの指標は非常に悪く、出塁率の低さと合わせて得点力の頭打ちにつながった。「試合前にはプランを持って挑んでいる」とのコメントはよく聞かれるが、ラミレス監督が試合中に動くことはあまりなく、個々の能力に任せる傾向が強い。もちろん、これのメリットはあるものの、采配で1点を嫌らしく取りに行く攻撃は、お世辞にも上手とは言えない。

 投手起用においては、先発投手を引っ張らず、継投でゲームメイクすることも多い。こちらもハマればスムースにゲームを進められるが、不調や登板過多による疲れなどで計算が狂った場合には、後手に回り、逆転を許す場面も見られる。また田中健二朗、須田幸太らは勤続疲労の影響からか故障してしまい、近年ブルペンを支えている三嶋一輝、国吉佑樹、エドウィン・エスコバー、スペンサー・パットンらも心配ではある。多用する申告敬遠も失点につながるケースが散見される。
  ラミレス采配には、相手ピッチャーや球場との相性、バッテリー間の防御率などを加味。バントなどについても、ランナーの脚力など数字を論拠とした細かいデータに基づいている。実際に試合後にコメントを求めると、事細かな説明がなされる理由はそこにある。

 しかし、今季のような結果が伴わないシーズンとなると、賛よりも否の方が多くなるのも致し方ない。最も顕著だったのが、9月上旬の巨人戦だ。2戦目のリリーフにマイケル・ピープルズを起用し、3戦目にパットンを先発させる奇策を決断。結果はパットンが1.1回9失点(自責点7)と大失敗に終わって3連敗。ゲーム差も8.5まで広がり、事実上、優勝の可能性が潰えてしまった。

「外国人枠の関係で、オースティン復帰までピープルズをフル回転させたい」と「ボールの強いパットンを先発させて、相手打線を狂わせたい」と明確な意図があったとはいえ、結果すべての世界において、失敗した以上は愚策と言われるのは仕方ない。

 2016年からベイスターズを率いるラミレス監督。就任1年目にチームを初のCSに導き、翌年は日本シリーズ進出、昨年はリーグ2位まで押し上げ、本拠地でのCS開催を掴んだ。2002年から2015年までAクラスが一度しかないチームを、Aクラス常連へと進化させたことは間違いない事実だ。

 日本野球の常識にとらわれない“ラミ流”采配。己を貫き通すスタイルは球団上層部からこのオフ、どのような評価が下されるのだろうか。

取材・文・写真●萩原孝弘
 

関連記事(外部サイト)