【ワールドシリーズ展望】投手力ではレイズ、打撃力ではドジャース…まさにあらゆる意味で対照的なチームの対決

【ワールドシリーズ展望】投手力ではレイズ、打撃力ではドジャース…まさにあらゆる意味で対照的なチームの対決

ベッツ(左)をはじめビッグネーム揃いのドジャース打線に、モートン(右)を筆頭とするメジャー屈指の投手陣でレイズが挑む。(C)Getty Images

▼あらゆる意味で好対照なチームの頂上対決
 どちらのリーグ優勝決定シリーズも第7戦までもつれたが、結局、両リーグともレギュラーシーズン最高勝率のチームが勝ち上がった。レイズは球団史上初の世界一を目指し、ドジャースは1988年以来32年ぶりの王座を狙う。

 レイズとドジャースは、あらゆる意味でチームのタイプが異なる。ドジャースはクレイトン・カーショウ、ムーキー・ベッツ、コディ・ベリンジャーと3人のMVPを筆頭にまさに綺羅星のごときスター軍団。圧倒的な層の厚さで勝ち上がってきた。一方のレイズでビッグネームと呼べるのは18年のサイ・ヤング賞投手ブレイク・スネルくらい。

 総年俸もドジャースがMLB2位の約9498万ドル(約100億円/60試合に基づく減額後の金額)に対し、レイズは28位の2877万ドル(約30億円)。既成概念に捉われない創意工夫で勝ち上がってきたチームという印象が強い。ドジャースが層の厚さを生かして横綱相撲で勝つか、それともレイズが創意工夫で勝利を収めるか。双方のチームカラーに注目だ。
 ▼投手力はほぼ互角に見えるが、ドジャースには不安要素が…
 レイズのこのポストシーズンのチーム防御率は3.356。対するドジャースは3.364とわずかな差しかない。しかもこれは地区シリーズまで進んだ8チームの中で、トップ2の数字だ。だが、ドジャースの投手陣は2つの不安要素を抱える。クレイトン・カーショウはポストシーズンの通算防御率が4.31で、ワールドシリーズでは2017〜18年に4度先発し、うち3試合で4点以上を取られた。今年のリーグ優勝決定シリーズでも、背中の痛みで第2戦の先発を回避し、第4戦では4失点で6回途中に降板と万全ではないようだ。また、クローザーのケンリー・ジャンセンも安定感に欠け、リーグ優勝決定シリーズ第7戦では、1点差にもかかわらず9回に登板しなかった。

 それに対し、レイズのブルペンにはさまざまなタイプの投手が揃い、起用順もフレキシブルだ。ケビン・キャッシュ監督が投入場面と順序を誤らなければ、絶大な効果を発揮する。加えて、チャーリー・モートンはここ2年のポストシーズンで計5先発して5勝。計25.2イニングを投げて自責点はわずか2と、プレーオフでの強さには定評がある。
 ▼打線はビッグネームが並ぶドジャースが圧倒的に強力
 一方、打線はドジャースが断然上。ポストシーズンの18本塁打はレイズより7本少ないが、得点圏打率はレイズの.174に対して.276とチャンスに強く、69得点はレイズより12点も多い。しかも、過去2年にMVPを受賞したベッツとコディ・ベリンジャーをはじめ、ドジャースには資質だけでなく実績もある打者が多い。中でも今回のシリーズで特に注目すべきは、これまでのプレーオフ全試合で2番を務め、ナ・リーグ優勝決定シリーズでは5本塁打を放ってMVPを受賞したコリー・シーガーだ。一方のレイズではランディ・アロザレナがポストシーズンで7本塁打と爆発しており、ア・リーグ優勝決定シリーズでも4本塁打でMVP。2人の“MVP男対決”にも注目が集まる。

 ドジャース打線の懸念材料を強いて挙げるなら、過去のワールドシリーズでよく打った選手が皆無に近い点か。経験者の9人中、ワールドシリーズ通算打率が最も高いジャスティン・ターナーでさえ.245に過ぎず、6人は.225未満だ。2本塁打以上も、4本のジョク・ピーダーソンしかいない。もっとも、多い選手でも2シリーズ計12試合なので、サンプル数としてはごくわずか。そもそも経験で言えば、レイズの方はワールドシリーズを経験しているのは投手のモートン(アストロズ時代の17年)だけで、それだけなら圧倒的に不利だ。
  全体としては、ドジャースの方が優位だろう。レイズの投手陣がドジャースの打線を抑える可能性もあるが、これは相当難しい。ドジャースとリーグ優勝決定シリーズ対戦したブレーブスは、ワイルドカード・シリーズと地区シリーズの計5試合でたったの5失点だったのが、リーグ優勝決定シリーズでは7試合で39点を奪われた。特に第3戦では初回にプレーオフ史上最多の1イニング11得点を記録するなど、一度火が点くと手が付けられないのがドジャース打線。逆に言えば、この猛攻をいかに凌ぎつつ、ドジャース投手陣の隙を突くか……その答えを見出した時こそ、レイズの試合巧者ぶりが輝くはずだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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