氏原英明のドラフト採点:即戦力左腕2人を獲得した楽天に最高評価。一方、最低評価に甘んじたチームは…?

氏原英明のドラフト採点:即戦力左腕2人を獲得した楽天に最高評価。一方、最低評価に甘んじたチームは…?

4球団で見事、早川を引き当てた楽天の石井一久GM。写真:?NPB/BBM2020

2020年のドラフト会議が無事に終了。さっそく各球団の指名を採点してみた。去年に比べて差があまり出なかった印象で、各球団が戦略的に考えていたことを感じさせた。

【楽天】 95点
1位:早川隆久(投手/早稲田大)
2位:高田孝一(投手/法政大)
3位:藤井聖(投手/ENEOS)
4位:内間拓馬(投手/亜細亜大)
5位:入江大樹(内野手/仙台育英高)
6位:内星龍(投手/履正社高)

 1位入札で早川を引き当てたのはもちろん、藤井の獲得にも成功して2人の即戦力左腕を射止めた。ライバルのロッテ、西武も同じく左腕不足に喘いでいることを考えると、一手先をいく指名ができたと言える。投手は全体的な枚数も少ないだけに、4人の指名は大きい。一方、下位指名では手薄だった右の内野手を地元の仙台育英から獲得。6位指名の内は隠れた逸材で、山本由伸(オリックス)を彷彿とさせる。完璧に近い指名だった。
 【日本ハム】 95点
1位:伊藤大海(投手/苫小牧駒澤大)
2位:五十幡亮汰(外野手/中央大)
3位:古川裕大(捕手/上武大)
4位:細川凌平(内野手/智辯和歌山高)
5位:根本悠楓(投手/苫小牧中央高)
6位:今川優馬(外野手/JFE東日本)

 1位指名で大学屈指の右腕を一本釣り。先発・リリーフ両面で期待できる投手を獲得できたことは大いに評価できる。それもチーム初の道産子1位指名を実現させた。2位以降も補強ポイントをしっかり埋めた。中でも、西川遥輝、近藤健介に続く素材が出てこない外野陣の一角に、快足の五十幡を補強できたのは大きい。4位には西川の智辯和歌山の後輩にあたる細川を指名。また、高校生左腕と即戦力のスラッガーとバラエティに富んだ指名でケチのつけようがなかった。

【DeNA】 90点
1位:入江大生(投手/明治大)
2位:牧秀悟(内野手/中央大)
3位:松本隆之介(投手/横浜高)
4位:小深田大地(内野手/履正社高)
5位:池谷蒼大(投手/ヤマハ)
6位:高田琢登(投手/静岡商業高)

 昨年の森敬斗に引き続き一本釣りを成功させた。昨年はやや消極的にも見えただけに、今年は大学生の即戦力右腕の指名に思い切ったことは評価できる。昨年、結果的に森下暢仁(明治大→広島)を指名しなかったことも背景にあったのかもしれない。2位以降も的確だった。牧は外国人に頼りがちな右打者として戦力になるだろう。4位の小深田は甲子園がなかった分、評価は上がらなかったが、確実性の高い中距離打者として打線を引っ張ってくれるはず。入江以外の3投手はいずれも左腕とサウスポー好きは相変わらずだが、高校生2人は長い目で育成、社会人の池谷は即戦力中継ぎとしての強化であれば合点がいく。
 【オリックス】 85点
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:山下舜平大(投手/福岡大大濠高)
2位:元謙太(外野手/中京高)
3位:来田涼斗(外野手/明石商高)
4位:中川颯(投手/立教大)
5位:中川拓真(捕手/豊橋中央高)
6位:阿部翔太(投手/日本生命)

 1位入札を抽選で外しながら高評価となった。1〜3位は高校生トップクラスの選手の指名に成功。将来のチームの中心として期待される。中継ぎ強化として2人の即戦力を獲得し、手薄だった捕手も補充に成功。ドラフトを数年後のチーム強化と仮定したならば、素晴らしい指名だった言える。ただ、最下位チームに高校生主体の指名を敢行するほどの余裕があるのかという疑念は残る。現有戦力の底上げで浮上できると踏んでいるのか、それともあと数年は我慢の時期を過ごす覚悟なのか。

【巨人】 80点
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:平内龍太(投手/亜細亜大)
2位:山崎伊織(投手/東海大)
3位:中山礼都(内野手/中京大中京高)
4位:伊藤優輔(投手/三菱パワー)
5位:秋広優人(内野手/二松学舎大付高)
6位:山本一輝(投手/中京大)
7位:萩原哲(捕手/創価大)

 1位指名の佐藤はまたも抽選で外したが、そもそも彼が本当にチームに必要だったのかという話もある。結果的にはいいドラフトになった印象だ。2位の山崎はトミー・ジョン手術明けで来年はほぼリハビリに専念するはずだが、将来性は文句なし。平内、伊藤の即戦力右腕2人は、先発中継ぎとも足りていないだけに厚みをもたらしてくれるはずだ。3位の中山は遊撃手だが、打撃が売りの選手で巨人のファームには少ないタイプ。未知の可能性を秘める秋広も大化けの可能性を秘めている。
 【ソフトバンク】 80点
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:井上朋也(内野手/花咲徳栄高)
2位:笹川吉康(外野手/横浜商高)
3位:牧原巧汰(捕手/日大藤沢高)
4位:川原田純平(内野手/青森山田高)
5位:田上奏大(投手/履正社高)

 支配下登録選手は高校生のみの指名となった。戦力が充実しているから、思う存分、将来性を見据えたのは理解できる。ただ、指名した選手は大化けしたときのスケールの大きさは計り知れないものの、やや独自路線を行き過ぎた印象も否めない。リスクもかなり大きい指名という印象だ。育成選手と競わせて戦力にするという考えは従来の路線を踏襲しているが、もう少し確実性のある大学生や社会人の指名をしても良かった気もする。

【中日】 75点
1位:高橋宏斗(投手/中京大中京高)
2位:森博人(投手/日本体育大)
3位:土田龍空(内野手/近江高)
4位:福島章太(投手/倉敷工高)
5位:加藤翼(投手/帝京大可児高)
6位: 三好大倫(外野手/JFE西日本)

 今年の高校生ナンバーワンの呼び声高い高橋の進路変更に柔軟に対応。地元の逸材を一本釣りで獲得できたことは大きい。また、2位で即戦力の右腕を獲得して中継ぎ強化を怠らず、将来性の高い高校生左腕も獲得した。一方、世代交代が遅れ、層の薄さも深刻な外野には投手から転向した三好を6位で獲得したのみ。3位の土田も育成には時間がかかりそうで、野手陣にもう少し厚みを加えても良かった気がする。
 【広島】 70点
1位:栗林良吏(投手/トヨタ自動車)
2位:森浦大輔(投手/天理大)
3位:大道温貴(投手/八戸学院大)
4位:小林樹斗(投手/智弁和歌山高)
5位:行木俊(投手/四国IL・徳島)
6位:矢野雅哉(内野手/亜細亜大)

 2年連続して即戦力右腕の一本釣りに成功した。右腕投手の枚数が多いチーム事情だが、大瀬良大地、野村祐輔の故障もあり、競争を激化させる存在になるだろう。2位ではやや弱点のサウスポーも強化し、4位では伸び盛りの高校生右腕獲得も成功した。一方、野手は6位で大学生野手を指名したのみで、外野のスラッガータイプの補強もなし。これまで高校生を積極的に指名してきた球団だけに物足りなさが残る。それほど来季に賭けているということの表れなのだろうが……。

【ロッテ】 65点
×  早川隆久(投手/早稲田大)
1位:鈴木昭汰(投手/法政大)
2位:中森俊介(投手/明石商高)
3位:小川龍成(内野手/国学院大)
4位:河村説人(投手/星槎道都大)
5位:西川僚祐(外野手/東海大相模高)

 ここ数週間のチームの不調がドラフトにも反映されたような印象だ。早川の抽選に外れた後、続けて左腕獲得を狙ったのは適切な判断だと言えるだろう。ただ、チーム状況を考えると野手陣にはさらに厚みを加えるべきだったのではないか。若い右打者が少ないチーム事情から西川の指名は納得できるが、今年も右投げ左打ちの内野手を指名したのはチーム構成からやや不安が残る。
 【阪神】 65点
1位:佐藤輝明(内野手/近畿大)★
2位:伊藤将司(投手/JR東日本)
3位:佐藤蓮(投手/上武大)
4位:榮枝裕貴(捕手/立命館大)
5位:村上頌樹(投手/東洋大)
6位:中野拓夢(内野手/三菱自動車岡崎)
7位:高寺望夢(内野手/上田西高)
8位:石井大智(投手/四国IL・高知)

 4球団競合の末に佐藤の獲得に成功。虎党は大フィーバーしているだろうが、全体の指名はやや疑問が残る。昨年のドラフトで1〜5位まで高校生を指名した反動か、今年は即戦力に終始。先発ローテーションに厚みを加えたいのだろうが、戦力がだぶついている印象も否めない。野手も、指名した選手の質自体はいいのだが、チーム内に同じタイプが多い。スラッガーの獲得が佐藤だけで満足してしまった印象だ。

【ヤクルト】 60点
×  早川隆久(投手/早稲田大)
×  鈴木昭汰(投手/法政大)
1位:木澤尚文(投手/慶応大)
2位:山野太一(投手/東北福祉大)
3位:内山壮真(捕手/星稜高)
4位:元山飛優(内野手/東北福祉大)
5位:並木秀尊(外野手/獨協大)
6位:嘉手苅浩太(投手/日本航空石川高)

 1位で2度抽選を外し、そのダメージを挽回できなかった印象だ。それでも、クレバーな右腕の木澤を1位指名、2位でも実戦派の左腕・山野を指名して補強ポイントをしっかり埋めることに成功したことは評価できる。高齢化が進む外野陣の指名はできたものの、数に乏しく大学生遊撃手の獲得も起用法に疑問が残る。捕手として指名した内山をどのポジションで使うのかで成否が分かれるかもしれない。
 【西武】 60点
×  早川隆久(投手/早稲田大)
1位:渡部健人(内野手/桐蔭横浜大)
2位:佐々木健(投手/NTT東日本)
3位:山村崇嘉(内野手/東海大相模高)
4位:若林楽人(外野手/駒沢大)
5位:大曲錬(投手/福岡大準硬式)
6位:タイシンガーブランドン大河(内野手/東京農業大北海道オホーツク)
7位:仲三河優太(外野手/大阪桐蔭高)
  1位入札でウィークポイントである左腕獲得にトライしたまでは良かった。しかし、その後の指名が適切な順位だったのか疑問が残る。渡部は打者として評価できるものの、前評判は決して高いとは言えず、1位で指名する必要が果たしてあったか。また、全体で投手を2人しか指名していないのも疑問でしかない。防御率は3年連続リーグ最下位に低迷し、育成が進んでいるわけでもない。指名したのは素材先行型で粗削りな選手ばかり。チームの現状が見えていないドラフトだったと言わざるを得ない。仲三河には大化けの空気が漂うが、彼もまた育成には時間がかかる。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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