有識者ARAのドラフト通信簿:“本命”を外しても巨人は最高評価。一方、佐藤を引き当てた阪神、早川を引き当てた楽天の評価は?

有識者ARAのドラフト通信簿:“本命”を外しても巨人は最高評価。一方、佐藤を引き当てた阪神、早川を引き当てた楽天の評価は?

4球団競合の佐藤(近畿大)は阪神が当たりクジを引いた。一方、巨人は外してしまったが……??NPB/BBM2020

プロ野球ドラフト会議が26日、無事終了した。この記事では各球団の今ドラフトを、「ドラフトで補強したポイント」を基準にA+〜D−の8段階で採点する。

▼日本ハム 評価:A+
1位:伊藤大海(投手/苫小牧駒澤大)
2位:五十幡亮汰(外野手/中央大)
3位:古川裕大(捕手/上武大)
4位:細川凌平(内野手/智辯和歌山高)
5位:根本悠楓(投手/苫小牧中央高)
6位:今川優馬(外野手/JFE東日本)

 今年のドラフトで最も成功した球団の一つ。事前に指名を公言していた伊藤を見事一本釣りに成功。外野でも西川遥輝の後継者となり得る五十幡や、社会人屈指のスラッガー今川を指名することができた。加えて今ドラフトではトップクラスの攻撃型捕手・古川、俊足巧打の内野手・細川、高校生離れしたコントロールと球速をもつ根本と、いずれもこれ以上ない選択。さらに伊藤、根本、今川は地元北海道出身の選手で、新球場開場後を見据えたビジネス面での評価も高い。

▼西武 評価:A+
×  早川隆久(投手/早稲田大)
1位:渡部健人(内野手/桐蔭横浜大)
2位:佐々木健(投手/NTT東日本)
3位:山村崇嘉(内野手/東海大相模高)
4位:若林楽人(外野手/駒沢大)
5位:大曲錬(投手/福岡大準硬式)
6位:タイシンガーブランドン大河(内野手/東京農業大北海道オホーツク)
7位:仲三河優太(外野手/大阪桐蔭高)

 これまでのドラフトでは投手中心の指名を続けていたが、今年は秋山翔吾のレッズ移籍で打線の得点力が減少し、栗山巧・中村剛也とベテラン頼りの課題も露呈したことで、野手5名も指名した。渡部を含めた全員が長打力を評価される選手で、若林のように俊足を兼ね備えた選手も多く、山村やタイシンガーは複数の守備位置をこなす器用さを併せ持つ。球団内の競争が激化することで、他の選手にとっても良い刺激となるだろう。
 ▼阪神 評価:A+
1位:佐藤輝明(内野手/近畿大)★
2位:伊藤将司(投手/JR東日本)
3位:佐藤蓮(投手/上武大)
4位:榮枝裕貴(捕手/立命館大)
5位:村上頌樹(投手/東洋大)
6位:中野拓夢(内野手/三菱自動車岡崎)
7位:高寺望夢(内野手/上田西高)
8位:石井大智(投手/四国IL・高知)

 4球団競合の末に交渉権を獲得した佐藤は、甲子園の浜風を無視できる数少ないスラッガーで、今後のドラフトや外国人獲得に幅広い選択肢を与えることだろう。一方で榮枝、中野、高寺は守備の評価が高く、現在の阪神にはいないタイプの選手だ。投手も即戦力の伊藤と村上に、伸びしろのある佐藤、石井、さらに変則左腕の岩田将貴(育成1位/九州産業大)とバリエーション豊か。村上と岩田は怪我の懸念もあるが、これも投手運用に余裕のある阪神ならではか。

▼巨人 評価:A+
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:平内龍太(投手/亜細亜大)
2位:山崎伊織(投手/東海大)
3位:中山礼都(内野手/中京大中京高)
4位:伊藤優輔(投手/三菱パワー)
5位:秋広優人(内野手/二松学舎大付高)
6位:山本一輝(投手/中京大)
7位:萩原哲(捕手/創価大)

 ドラフト戦略が最も見事にハマった球団だ。佐藤輝明の抽選は外したが、「その場合は即戦力投手」とかねてより公言していた通り、平内、山崎の指名に成功した。特に山崎は早川隆久と並び書された逸材で、経過が順調なら数年後のエースを獲得したも同然だ。2人は故障明けのため、他球団との情報戦を制した雰囲気も強い。また、野手も中山、秋広といった現在のファームにいないタイプを指名した。さらに、育成ドラフトでは阿部慎之助二軍監督が意思決定に携わるなど、“指導者経験”までも積ませてしまう合理性には脱帽するしかない。
 ▼ヤクルト 評価:A
×  早川隆久(投手/早稲田大)
×  鈴木昭汰(投手/法政大)
1位:木澤尚文(投手/慶応大)
2位:山野太一(投手/東北福祉大)
3位:内山壮真(捕手/星稜高)
4位:元山飛優(内野手/東北福祉大)
5位:並木秀尊(外野手/獨協大)
6位:嘉手苅浩太(投手/日本航空石川高)

 抽選で早川隆久と鈴木昭汰の両投手を外したが、木澤と山野といずれも好投手を指名できた点は悪くはない。また、元山の指名で、長年悩まされてきた遊撃手不在問題に光明が差してきた。ベテランに偏る外野にも俊足の並木を、二軍のやりくりに困ることの無いよう育成でも野手を2人指名するなど、非常に考えられた構成。また、次代の正捕手候補として内山を指名できたことも、未来に向けた良い選択だったといえるだろう。

▼楽天 評価:A
1位:早川隆久(投手/早稲田大)
2位:高田孝一(投手/法政大)
3位:藤井聖(投手/ENEOS)
4位:内間拓馬(投手/亜細亜大)
5位:入江大樹(内野手/仙台育英高)
6位:内星龍(投手/履正社高)

 日本一挑戦を意識しつつ、将来も見据えたバランスの良い指名に成功。ベテラン偏重の投手陣には、4球団競合の早川の当たりクジを引いたことに加えて、高田、藤井、内間と、先発・中継ぎどちらでも力を発揮できる投手を指名して、次世代投手陣の核を作ることに成功した。また、大型遊撃手の入江、190センチの高身長右腕・内といった将来有望な高校生も指名して、育成に本腰を入れる姿勢も示している。
 ▼DeNA 評価:A
1位:入江大生(投手/明治大)
2位:牧秀悟(内野手/中央大)
3位:松本隆之介(投手/横浜高)
4位:小深田大地(内野手/履正社高)
5位:池谷蒼大(投手/ヤマハ)
6位:高田琢登(投手/静岡商業高)

 事前に情報をほとんど漏らさずに、明治大のエース入江を単独指名。また、今永昇太やM口遥大ら左腕投手の育成によって生まれたノウハウを生かすためか、松本、池谷、高田はいずれもサウスポーだった。野手の方では、レギュラーの高齢化に悩む内野に、いずれも世代屈指の強打者である牧と小深田を指名。単独指名、左腕へのこだわり、野手の打力重視という従来の方針が、監督交代も経ても継続されることが明らかとなった。

▼オリックス 評価:B+
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:山下舜平大(投手/福岡大大濠高)
2位:元謙太(外野手/中京高)
3位:来田涼斗(外野手/明石商高)
4位:中川颯(投手/立教大)
5位:中川拓真(捕手/豊橋中央高)
6位:阿部翔太(投手/日本生命)

 1位の山下を筆頭に、4人の高卒選手を指名。最も優先すべき補強ポイントだった強打の外野手である元と来田を、手薄な捕手にも中川をそれぞれ指名できた点は高評価。育成でも川瀬堅斗(育成1位/大分商高)をはじめとしてスケールの大きい選手を指名し、三軍構想がいよいよ現実味を帯びてきた。ただし、即戦力は投手の中川のみで野手にはおらず、昨オフに続いて外国人選手などで補う必要があるか。
 ▼広島 評価:B+
1位:栗林良吏(投手/トヨタ自動車)
2位:森浦大輔(投手/天理大)
3位:大道温貴(投手/八戸学院大)
4位:小林樹斗(投手/智弁和歌山高)
5位:行木俊(投手/四国IL・徳島)
6位:矢野雅哉(内野手/亜細亜大)

 投手に偏りがちな印象は受けるが、一本釣りに成功した本格派の栗林、コントロールに長けた左腕の森浦、先発と中継ぎ両にらみの大道の指名には、いずれも既存のメンバーと使い分けていく方針が見て取れた。田中広輔と小園海斗の間に有力な選手がいない遊撃にも、身体能力抜群の矢野を指名。ただし2年連続で捕手を育成指名した背景が不透明なことと、22歳以下の外野手が永井敦士のみにもかかわらず、外野手の指名がなかった点はマイナスか。

▼中日 評価:B+
1位:高橋宏斗(投手/中京大中京高)
2位:森博人(投手/日本体育大)
3位:土田龍空(内野手/近江高)
4位:福島章太(投手/倉敷工高)
5位:加藤翼(投手/帝京大可児高)
6位: 三好大倫(外野手/JFE西日本)

 地元愛知の名門・中京大中京高の高校ナンバーワン投手、高橋の一本釣りに成功。ここ数年の“地元選手獲得”への熱はすさまじく、高橋をはじめとして今年も3人が地元・愛知の出身だった。加えて、同じ中部地方の滋賀県出身で、次代の核となる俊足巧打のショート土田の指名にも成功。また、高橋宏斗と競争させるためか、高校生投手を4人も指名した。ただ、本来優先すべきだった即戦力野手は内野・外野ともに1人も指名せず、来季以降にリーグ優勝を目指すチームとしては、やや物足りないドラフトだったと言わざるを得ない。
 ▼ロッテ 評価:B
×  早川隆久(投手/早稲田大)
1位:鈴木昭汰(投手/法政大)
2位:中森俊介(投手/明石商高)
3位:小川龍成(内野手/国学院大)
4位:河村説人(投手/星槎道都大)
5位:西川僚祐(外野手/東海大相模高)

 早川隆久の抽選を外しても、鈴木の当たりクジを引いてカバーし、中森に河村と、将来性豊かな投手も指名。小川の安定した守備力は、同じ遊撃の藤岡裕大や平沢大河を大いに刺激することだろう。ただ、気になるのは外野と捕手。外野手は育成も含め、高卒の右の強打者を2人獲得しているが、1人は即戦力の選手を獲得してもよかったのではないか。また、捕手には現在22歳以下の選手が1人もおらず、谷川1人ではやや心もとない。

▼ソフトバンク 評価:C+
×  佐藤輝明(内野手/近畿大)
1位:井上朋也(内野手/花咲徳栄高)
2位:笹川吉康(外野手/横浜商高)
3位:牧原巧汰(捕手/日大藤沢高)
4位:川原田純平(内野手/青森山田高)
5位:田上奏大(投手/履正社高)

 まさかの本指名が全員高校生。長年渇望した右の強打者・井上を筆頭に、身長193センチの大型外野手・笹川、強肩強打の捕手・牧原と、同世代では希少価値が高い選手ばかりだ。即戦力投手が皆無なのも、大関や渡辺等の支配下の目途が立てば説明もつく。ただ、野手が高齢化している現状を踏まえると、1人は即戦力の選手がいてもよかったのではないか。また、選手層の厚さから出場機会が得られない危険もあり、補強ポイントに関しての評価はC+としたが、この中から誰か1人でも「ポスト松田」になる選手が出てくれば大当たりのドラフトにになるだろう。

文●ARA
【著者プロフィール】 
Twitterでドラフトイベント「VD4B」「ヨソドラ」を主催。雑誌/野球太郎のモックドラフト立案者。ベースボールキングのドラフト2020速報ライブでは解説者を務めた。主に打撃を得意分野とし、中学生を中心とした野球指導にも携わる。ツイッターIDは@arai_san_28。

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