2連敗の巨人へ「逆転日本一への提言」。打線を組み替えて「らしさ」を取り戻せ!
2020年11月23日 20時05分THE DIGEST

巨人がここから日本一を手にするためには、パ・リーグ出身のウィーラー(写真)や中島がカギになる。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
本来の本拠地ではないとはいえ、ホームで2連敗。セ・リーグを圧倒的な力で制した巨人が、日本シリーズでは苦しい戦いを強いられている。スウィープ負けを喫した昨年といい、今年のこれまでの2試合といい、共通しているのは巨人の良さが一つも出ていないことだ。パ・リーグファンの多くは、巨人がどうやってセ・リーグを勝ち抜いてきたのか、あまりイメージできないのではないか。それほどに力なく敗れている。
ソフトバンクの野球は大味なようでいて、実は洗練されていて質も高い。巨人はその野球についていくことができないのだ。ゲームメイク、打席でのカウントメイキング、捕手の配球、守備位置の確認、そしてディフェンス。第2戦で13対2の大差がついたのは、選手個々の能力の差というより、双方のチームが展開する野球の質の違いに他ならない。
例えば、第2戦の1回表、ソフトバンクの攻撃でこんなことがあった。巨人の先発・今村信貴は、1番の周東佑京を三球三振に打ち取った。ここまではいい。だが、2番の川島慶三には一度もバットを振らせることができず、結局四球を与えてしまう。次打者は3番の柳田悠岐なのだから、これは絶対に避けなければならなかった。
そして案の定、柳田は今村の3球目を見事に捉えた。センターに飛んだ大飛球に、巨人の中堅手・丸佳浩は目測を誤り、川島に一塁からの長駆ホームインを許してしまった。このようなディフェンスの隙は、日本一を争う大舞台で見せるべきものではない。
一方、6回裏の巨人の攻撃の際に、ソフトバンクが見せた守備はどうだったか。1死から坂本勇人が左中間に放った痛烈な打球に、ソフトバンクのセンター柳田は速やかに追いついた。坂本は二塁に向かいかけていたが、これを見て一塁に戻らざるを得なかった。続く岡本和真のセンター前に落ちたポテンヒットにも、柳田は相当なスピードで猛チャージをかけている。この例に象徴されるように、守備に対する両軍の意識の差は明らかだった。
また、打者有利のカウントにおける考え方の差も大きい。2試合で8安打と大暴れソフトバンクの5番・栗原陵矢は、しっかりと打つべきボールを選び、強い力でインパクトしている。打者有利のカウントでは、投手の腕の振りも鈍ってくる。逆に、打者は力強くスウィングできる。その差が結果にそのまま表れてくる。ソフトバンクの工藤公康監督は、ナインの打席での姿勢を高く評価している。
「(巨人の投手は)それぞれ特徴のある投手が投げてきているわけですけど、打ちにいかないといけないボール、打ちにいってはいけないボールがそれぞれあって、しっかり(その選別が)できている」
一方の巨人はどうかといえば、こんな場面があった。第1戦の4回裏、無死一、二塁のチャンスで、打席には5番・丸。彼はカウント0-2からのストレートに、まるで合わせるようなスウィングをした。打球はショート正面に転がり、ダブルプレーになってしまう。さらに第2戦の6回にも、2死満塁の好機で中島宏之が3−1からのストレートをみすみす見逃し、フルカウントから三振に倒れている。
巨人打線は、工藤監督が言うところの「打つべきボール、打ってはいけないボールの選別」ができていない。積極性と選球眼の本当に意味するところが合致していないのだ。
とはいえ、巨人はこのままずるずると終わるわけにはいかない。流れを変える「何か」が必要だろう。
その「何か」はやはり、打撃陣の奮起だろう。打線の組み替えを検討する余地もありそうだ。現状の巨人の中でパ・リーグの野球に適応しているのは、2試合でそれぞれ7番と8番を打った中島とウィーラー。中島は第2戦の好機ではらしくなかったとはいえ、2試合で3四死球とソフトバンク投手陣の“間合い”に屈していない。同じく今季途中に楽天から移ってきたウィーラーも、ここまで2安打3打点と好調をキープ。“パ・リーグ経験者”の2人をどこに配置するかは、一つのカギになるだろう。
ソフトバンクの第3戦の先発は、外国人サウスポーのムーア。第4戦には同じく左腕の和田毅が予想される。左打者の起用も少し変える必要もあるだろう。ともに左打者の吉川尚輝、松原聖弥の1・2番コンビは解体。松原はここまで無安打とはいえ、打席内容は悪くないので、9番からチャンスメイクをする役がいい。代わってウィーラーを2番に上げて、クリーンナップの前に走者をためる役を担ってもらう。
坂本と岡本の3・4番コンビはそのままだが、ここまで8打数1安打と不甲斐ない丸の打順は下げて、奮起を促すべきだ。代わりの5番には、ここまで良いスウィングを見せている大城卓三をDHで起用。そして、捕手にはパ・リーグを熟知する炭谷銀仁朗を置いて、ディフェンス面の貢献を期待する。代打で2試合に出場した田中俊太の起用が迷いどころだが、やはりベンチにジョーカーとして置いておくのが得策かもしれない。
以上を踏まえて打順を組んでみると、以下のようになる。
1 吉川尚輝(二)
2 ウィーラー(左)
3 坂本勇人(遊)
4 岡本和真(三)
5 大城卓三(指)
6 中島宏之(一)
7 丸佳浩(中)
8 炭谷銀仁朗(捕)
9 松原聖弥(右)
とにかく、まずは巨人らしい打線のつながりを取り戻すことを目指したい。打順の組み替えで打線が機能するようになれば、チームにも勢いが生まれる。その勢いで流れをつかみ、昨年の雪辱を果たす逆転の日本一へと向かっていきたい。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。野球指導者のためのオンラインサロンの運営にも携わっている
【日本シリーズPHOTO】巨人2‐13ソフトバンク|デスパイネが満塁弾含む6打点と大暴れ!ソフトバンクが巨人に連勝!
ソフトバンクの野球は大味なようでいて、実は洗練されていて質も高い。巨人はその野球についていくことができないのだ。ゲームメイク、打席でのカウントメイキング、捕手の配球、守備位置の確認、そしてディフェンス。第2戦で13対2の大差がついたのは、選手個々の能力の差というより、双方のチームが展開する野球の質の違いに他ならない。
例えば、第2戦の1回表、ソフトバンクの攻撃でこんなことがあった。巨人の先発・今村信貴は、1番の周東佑京を三球三振に打ち取った。ここまではいい。だが、2番の川島慶三には一度もバットを振らせることができず、結局四球を与えてしまう。次打者は3番の柳田悠岐なのだから、これは絶対に避けなければならなかった。
そして案の定、柳田は今村の3球目を見事に捉えた。センターに飛んだ大飛球に、巨人の中堅手・丸佳浩は目測を誤り、川島に一塁からの長駆ホームインを許してしまった。このようなディフェンスの隙は、日本一を争う大舞台で見せるべきものではない。
一方、6回裏の巨人の攻撃の際に、ソフトバンクが見せた守備はどうだったか。1死から坂本勇人が左中間に放った痛烈な打球に、ソフトバンクのセンター柳田は速やかに追いついた。坂本は二塁に向かいかけていたが、これを見て一塁に戻らざるを得なかった。続く岡本和真のセンター前に落ちたポテンヒットにも、柳田は相当なスピードで猛チャージをかけている。この例に象徴されるように、守備に対する両軍の意識の差は明らかだった。
また、打者有利のカウントにおける考え方の差も大きい。2試合で8安打と大暴れソフトバンクの5番・栗原陵矢は、しっかりと打つべきボールを選び、強い力でインパクトしている。打者有利のカウントでは、投手の腕の振りも鈍ってくる。逆に、打者は力強くスウィングできる。その差が結果にそのまま表れてくる。ソフトバンクの工藤公康監督は、ナインの打席での姿勢を高く評価している。
「(巨人の投手は)それぞれ特徴のある投手が投げてきているわけですけど、打ちにいかないといけないボール、打ちにいってはいけないボールがそれぞれあって、しっかり(その選別が)できている」
一方の巨人はどうかといえば、こんな場面があった。第1戦の4回裏、無死一、二塁のチャンスで、打席には5番・丸。彼はカウント0-2からのストレートに、まるで合わせるようなスウィングをした。打球はショート正面に転がり、ダブルプレーになってしまう。さらに第2戦の6回にも、2死満塁の好機で中島宏之が3−1からのストレートをみすみす見逃し、フルカウントから三振に倒れている。
巨人打線は、工藤監督が言うところの「打つべきボール、打ってはいけないボールの選別」ができていない。積極性と選球眼の本当に意味するところが合致していないのだ。
とはいえ、巨人はこのままずるずると終わるわけにはいかない。流れを変える「何か」が必要だろう。
その「何か」はやはり、打撃陣の奮起だろう。打線の組み替えを検討する余地もありそうだ。現状の巨人の中でパ・リーグの野球に適応しているのは、2試合でそれぞれ7番と8番を打った中島とウィーラー。中島は第2戦の好機ではらしくなかったとはいえ、2試合で3四死球とソフトバンク投手陣の“間合い”に屈していない。同じく今季途中に楽天から移ってきたウィーラーも、ここまで2安打3打点と好調をキープ。“パ・リーグ経験者”の2人をどこに配置するかは、一つのカギになるだろう。
ソフトバンクの第3戦の先発は、外国人サウスポーのムーア。第4戦には同じく左腕の和田毅が予想される。左打者の起用も少し変える必要もあるだろう。ともに左打者の吉川尚輝、松原聖弥の1・2番コンビは解体。松原はここまで無安打とはいえ、打席内容は悪くないので、9番からチャンスメイクをする役がいい。代わってウィーラーを2番に上げて、クリーンナップの前に走者をためる役を担ってもらう。
坂本と岡本の3・4番コンビはそのままだが、ここまで8打数1安打と不甲斐ない丸の打順は下げて、奮起を促すべきだ。代わりの5番には、ここまで良いスウィングを見せている大城卓三をDHで起用。そして、捕手にはパ・リーグを熟知する炭谷銀仁朗を置いて、ディフェンス面の貢献を期待する。代打で2試合に出場した田中俊太の起用が迷いどころだが、やはりベンチにジョーカーとして置いておくのが得策かもしれない。
以上を踏まえて打順を組んでみると、以下のようになる。
1 吉川尚輝(二)
2 ウィーラー(左)
3 坂本勇人(遊)
4 岡本和真(三)
5 大城卓三(指)
6 中島宏之(一)
7 丸佳浩(中)
8 炭谷銀仁朗(捕)
9 松原聖弥(右)
とにかく、まずは巨人らしい打線のつながりを取り戻すことを目指したい。打順の組み替えで打線が機能するようになれば、チームにも勢いが生まれる。その勢いで流れをつかみ、昨年の雪辱を果たす逆転の日本一へと向かっていきたい。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。野球指導者のためのオンラインサロンの運営にも携わっている
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