巨人のクリーンナップトリオを“打点ゼロ“に封殺!ソフトバンク3連勝の裏に甲斐拓也の頭脳アリ

巨人のクリーンナップトリオを“打点ゼロ“に封殺!ソフトバンク3連勝の裏に甲斐拓也の頭脳アリ

第3戦でムーアをノーヒットの快投に導いた甲斐(写真右)。工藤監督も「3連勝の立役者」と絶賛する。写真:田口有史

チーム打率、得点、安打、本塁打、長打率、出塁率、さらには得点圏打率。リーグこそ違うが、レギュラーシーズンの120試合で比較すると、これらすべての部門で、巨人はソフトバンクを上回っている。

 その強力打線を、ソフトバンク投手陣は3試合で計10安打、3得点に封じている。第3戦はムーア、モイネロ、森唯斗の“鉄板”の継投で、9回2死まで無安打。最後の最後で丸佳浩にセンター前ヒットを許して“継投ノーヒットノーラン”は露と消えたが、1安打完封リレーで4年連続日本一へ王手をかけた。これら投手陣の好投の原動力に、27イニングすべてでマスクをかぶり続けている甲斐拓也の貴重な働きを見逃すことはできない。

 その象徴ともいえるのが、巨人のクリーンナップ3人に、3試合でいまだに打点を挙げさせていないことだろう。

3番・坂本勇人 10打数2安打 5三振
4番・岡本和真 10打数1安打 3三振
5番・丸佳浩 11打数2安打 2三振
  岡本に至っては、第2戦のセンター前ヒットを除けば打球が外野にすら飛んでいない。この“中軸完全制圧”の要因は、甲斐の研究し尽くした配球にある。

 昨年の日本シリーズで、甲斐は坂本に対して徹底した内角攻めを繰り返し、4試合でたったの1安打、打率.077に抑え込んだ。その“1年前の撒き餌”も生かしているのだろう。今シリーズでは、要所で外角を突く配球が目立つ。

 第3戦でも1回1死二塁の場面で打席に坂本を迎えると、5球連続で内角を要求した後、今度は外角を2球続けた。そして、カウント3−2からの8球目。内と外のどちらに来るか迷ったであろう坂本に対し、ムーアが投じたのは138キロのチェンジアップだった。両サイドへの150キロを超えるストレートを見せられていただけに、坂本は虚を突かれたかのように空振りの三振に終わった。
  また、岡本は第1戦の第1打席で、千賀滉大の内角球にバットをへし折られてファールフライに倒れている。その“イヤな感触”が残っているのを、甲斐は最大限に生かす。第3戦でも、坂本が三振に倒れた後の1回2死二塁で、150キロと153キロのストレートを立て続けに内角に決めて追い込むと、3球目の154キロを詰まらせてショートゴロに打ち取った。結局この日は三振と3つの内野ゴロに終わり、セの2冠に輝いた24歳の大砲は、その“らしさ”を全く出せていない。

 この日“ノーノー継投”を阻止して意地を見せた丸も、第1戦では4回無死一、二塁でダブルプレーに倒れ、第2戦の7回1死一、二塁の好機には空振り三振を喫するなど、甲斐によって完全に打線の“ブレーキ役”に仕立て上げられている。
  特に丸に対する甲斐のリードが光ったのは、第2戦の6回だ。5点リードの場面ながら1死一、二塁で丸を迎えると、工藤公康監督は好投の先発・石川柊太に代えて、左腕の嘉弥真新也を投入した。指揮官はその理由を「1本出れば打者は変わるとよく言われる。あそこはしっかりと切ることが大事」と強調したが、甲斐もその意図を理解した上で、嘉弥真に4球連続で外角のスライダーを要求。見事、空振り三振に仕留めた。

 工藤監督は3連勝を飾った立役者に甲斐を挙げ、「うまく変化球を使いながら、よく7回まで(ムーアを)引っ張ってくれた」とねぎらった。今シリーズは代名詞の“甲斐キャノン”を披露する場面がいまだなく、物足りない気がしないでもないが、それは巨人にほとんど出塁を許していない証拠でもある。これで、ポストシーズン15連勝、日本シリーズでは11連勝。1965〜73年のV9巨人以来となる日本シリーズ4連覇へ向けた快進撃を支えているのは、まぎれもなく“甲斐の頭脳”なのだ。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)

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