「フェン直査定」要求の中田翔。札幌ドームの“被害”にあって損した本塁打は9本?

「フェン直査定」要求の中田翔。札幌ドームの“被害”にあって損した本塁打は9本?

本来なら本塁打&打点の二冠王だったかもしれない中田。オフには恨み節も出たが……。写真:徳原隆元

面白いニュースが飛び込んできた。日本ハムの4番・中田翔が今オフの契約交渉にて、“フェン直”について申し立てを行うという。いわく、今季は外野フェンスに直撃する打球が多く、もう1メートル飛んでいればスタンドインする打球が多かったとのことで、これが自身の本塁打数、ひいては打撃成績に影響したため、“フェン直”も交渉の中に含んでほしいというのだ。

 中田の今季成績は119試合に出場して打率.239、31本塁打、108打点、出塁率.320、OPS.811。自身3度目の打点王のタイトルを獲得した一方で、本塁打数は1本差で浅村栄斗(楽天)の後塵を拝し、初の本塁打王を逃している。

 確かに札幌ドームは“打者泣かせ”の球場だ。両翼100メートル、中堅122メートル、外野フェンスの高さは5.75メートルと日本屈指の広さを誇る。球場ごとの特性を数値化したパークファクターでは、毎年のように本塁打指数(本塁打が出やすいかどうか)が両リーグ最底辺であり、2017〜19年の同指数(平均が1.00)は0.74。平均的な球場より30%ほど本塁打は生まれづらかった。ちなみに、1位は神宮球場(1.62)、2位が東京ドーム(1.32)、3位が横浜スタジアム(1.23)である。
  では果たして、中田は今季どれだけ「札幌ドームに本塁打を阻まれた」のだろうか。あくまで個人の目測、という点には留意していただきたいが、札幌ドームでの全55安打を調べた結果、中田の言う「フェンス直撃」の一打は少なくとも「9本」あった。以下がそのリストである。

【中田翔の“フェン直”試合2020】※()内は試合結果、左が日本ハムの得点
・7月17日:ロッテ戦:1回:右フェンス直撃二塁打:1打点(7対4)
・8月6日:西武戦:1回:左フェンス直撃二塁打:2打点(5対3)
・8月7日:西武戦:8回:左フェンス直撃二塁打:―(3対2)
・8月8日:西武戦:7回:右中間フェンス直撃二塁打:1打点(7対6)
・9月1日:楽天戦:6回:中フェンス直撃二塁打:―(8対1)
・9月3日:楽天戦:1回:左フェンス直撃シングル:1打点(4対0)
・9月5日:西武戦:8回:中フェンス直撃二塁打:1打点(6対2)
・10月21日:ソフトバンク戦:8回:中フェンス直撃二塁打:―(1対9)
・10月30日:オリックス戦:1回:左フェンス直撃シングル:2打点(2対3)
  筆者が計測したこの9本は、いずれもフェンス上段から2メートル以内には当たっていて、確かに札幌ドーム以外であれば本塁打になっていた可能性は高い。タイトルはもちろん、自身初の40本の大台も見えていただけに、確かに異議申し立てをしたくなる気持ちも納得である。しかも、これらはあくまで“直撃”した打球のみであり、例えばフェンス間際まで飛んだフライはカウントしていないから、もっと増えてもおかしくない。

 8月6日からの西武戦では、3試合連続で“フェン直”=本塁打未遂の打球となっていて、フラストレーションも溜まっていたのは容易に想像できる。9月5日の同カードではギャレットのストレートを完璧に捉え、本人も確信した様子だったが惜しくも柵越えはならず。10月30日のオリックス戦でも、浮いたカーブを捉え、こちらも本人は手ごたえを感じた歩き方だったが、まさかのシングルヒットに終わった。
  8月22日の楽天戦で両リーグ最速での20号に達した時、中田は「札幌ドームで入れば、どこでも入るのでね。他の球場がうらやましい。何本、ホームランを損しているんだと考えた時に、ちょっと悲しくなる」と口にしていたが、1本差でタイトルを逃した悔しさが、改めて“魔境”への恨み節になったのだろう。

 もちろん、これは中田だけに当てはまるわけではない。打者が不利な本拠地、例えばナゴヤドームや甲子園でプレーしている選手にも同じことが言えて、打者有利な球場でプレーしている選手との成績を「同じ尺度」で比較することはできないのである。投手目線で言えば、この逆もまた然りである。

 野球というスポーツは日米問わず、フィールドの規格に決まりがない。相当に珍しい競技と言えるだろう。だからこそ、各球場で観戦するのが面白いという面も生んでいる一方で、「数字」を見ていく時には注意が必要になってくるわけである。同じ試合、同じ打撃成績の選手でも、本拠地の違いに着目した時、その数字の意味が変わってくるからだ。

 こうした考え方が、セイバーメトリクス(統計学的な見地から客観的に選手を分析していく手法)にも通じていくのであり、なぜ「球場補正」を行っていくのかという、分かりやすい事例とも言えるだろうか。

文●新井裕貴(THE DIGEST編集部)
 

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