【セ・リーグ球団別採点】過去10年のドラフト1位指名の成功度は?│巨人はクジ運に見放され続けていても高評価
2020年11月06日 17時57分 THE DIGEST

村上(左)と山崎(中)は外れ1位指名ながら大成功。単独1位指名で入団した岡本(右)も、球界を代表するスラッガーへと成長した。写真:徳原隆元、田中研治
よく言われることだが、ドラフトの本当の評価は何年か経ってみないと分からない。では、セ・リーグ6球団の過去10年間のドラフト1位指名は果たして成功したと言えるのか。それぞれのチームを採点してみた。
★:抽選で交渉権を獲得、*:外れ1位
●巨人 85点
2010 澤村拓一 投手 中央大
2011 松本竜也* 投手 英明高
2012 菅野智之 投手 東海大
2013 小林誠司* 捕手 日本生命
2014 岡本和真 内野手 智弁学園高
2015 桜井俊貴 投手 立命館大
2016 吉川尚輝* 内野手 中京学院大
2017 鍬原拓也* 投手 中央大
2018 高橋優貴* 投手 八戸学院大
2019 堀田賢慎* 投手 青森山田高
自由枠の廃止で思うように選手が取れなくなった上、抽選では外れ1位も含めて10戦全敗。16〜19年は4年続けて外れ1位でもクジを外すなど、からきし運がない。にもかかわらず、ほとんどの年できちんと戦力になる選手を確保している点は素晴らしい。もちろん、澤村や菅野を単独指名できたのは、強烈な巨人志望を打ち出していたことで他球団が手を引いたからではある。しかし、14年に単独指名した岡本を4番打者に育て上げたのは見事だし、怪我の多かった吉川尚も今季は正二塁手に定着した。一方、過去3年の1位指名選手はいずれも故障に悩まされていて、今後が心配される。
●DeNA 80点
2010 須田幸太* 投手 JFE東日本
2011 北方悠誠* 投手 唐津商高
2012 白崎浩之* 内野手 駒沢大
2013 柿田裕太* 投手 日本生命
2014 山崎康晃* 投手 亜細亜大
2015 今永昇太 投手 駒沢大
2016 浜口遥大* 投手 神奈川大
2017 東克樹 投手 立命館大
2018 上茶谷大河* 投手 東洋大
2019 森敬斗 内野手 桐蔭学園高
最初の4年間の酷さと、その後6年間の優秀さの好対照ぶりが際立つ。10〜13年は抽選で0勝5敗と運にも恵まれなかったが、外れ指名も中継ぎでまずまず活躍した須田を除き全員討ち死に。北方、柿田は一度も一軍マウンドに立てないまま戦力外となった。それが14〜18年は1勝4敗とクジ運は引き続きなかったにもかかわらず、5年続けて1位指名が成功。山崎は1年目から新人セーブ記録を樹立する活躍で、侍ジャパンの守護神に上り詰めた。15年は今永を単独で手に入れる会心の指名。17年の東の1位指名も意外だったが、翌年に新人王受賞で正当化。これに味を占めたか、近年はさらに単独指名狙いが加速している。
●広島 75点
2010 福井優也* 投手 早稲田大
2011 野村祐輔 投手 明治大
2012 高橋大樹* 外野手 龍谷大平安高
2013 大瀬良大地★ 投手 九州共立大
2014 野間峻祥* 外野手 中部学院大
2015 岡田明丈 投手 大阪商大
2016 加藤拓也* 投手 慶応大
2017 中村奨成★ 捕手 広陵高
2018 小園海斗★ 内野手 報徳学園高
2019 森下暢仁 投手 明治大
野村、大瀬良は新人王を受賞、森下も今季の新人王最有力候補と、かなり優秀な結果。3球団競合の大瀬良を引き当てた運の強さと、野村と森下を単独指名できた判断力の良さが合わさってのものだ。野村、大瀬良はその後も活躍しており、一発屋で終わらなかった点も評価できる。とはいえ、真の意味で活躍したと言えるのはこの3人しかいない。福井は楽天にトレードされるまで通算29勝を挙げたが、防御率がリーグ平均より良かった年は一度もなし。最初の2年は好投した岡田もその後は苦しんでいる。中村もやや伸び悩み気味と当たり外れは目立つが、当たった年の大きさを考慮して高得点をつけたい。
●阪神 75点
2010 榎田大樹* 投手 東京ガス
2011 伊藤隼太 外野手 慶応大
2012 藤浪晋太郎★ 投手 大阪桐蔭高
2013 岩貞祐太* 投手 横浜商大
2014 横山雄哉* 投手 新日鉄住金鹿島
2015 高山俊★ 外野手 明治大
2016 大山悠輔 内野手 白?大
2017 馬場皐輔* 投手 仙台大
2018 近本光司* 外野手 大阪ガス
2019 西純矢* 投手 創志学園高
ここ10年の結果を見る限り、ドラフト直後の評価が低かった選手の方が活躍する皮肉な現象が起きている。代表例が大山と近本で、いずれも指名当時は「2位以下で取れたのでは?」と言われていた。その指摘自体は間違いではないかもしれないが、2人とも当時のチーム事情を優先しての言わば繰り上げ指名。大山は本塁打王を争うまでに成長、近本も1年目でセ・リーグ新人最多安打記録を達成するなど活躍し、結果的には大成功だった。藤浪も最初の3年間は文句なしで、ここ数年は不振だったものの救援転向で復活の兆しも見えている。1位を2度外した年が4回もあったのに、ほとんど戦力にならなかったのは横山だけなのも特筆すべきだ。
●ヤクルト 70点
2010 山田哲人* 内野手 履正社高
2011 川上竜平* 外野手 光星学院高
2012 石山泰稚* 投手 ヤマハ
2013 杉浦稔大* 投手 国学院大
2014 竹下真吾* 投手 ヤマハ
2015 原樹理* 投手 東洋大
2016 寺島成輝 投手 履正社高
2017 村上宗隆* 捕手 九州学院高
2018 清水昇* 投手 国学院大
2019 奥川恭伸★ 投手 星稜高
このチームは決してドラフト上手ではない。一般的にはそれほど評価されていない選手を1位で取ったり、2位予定の選手を繰り上げたりする傾向が目立ち、しかもそうした場合は概ね失敗しているからだ。川上は一軍未出場、竹下も3年間でわずか1試合しか登板できずに戦力外となった。にもかかわらず70点を確保したのは、山田と村上という歴史的大当たりが2度あったから。しかも山田は外れ外れ1位、村上は外れ1位で、クジ運の悪さ(外れ1位を含めて通算4勝10敗)が却って功を奏した。2人ほどではないが、石山もクローザーとして活躍。清水もセットアップとして一軍に定着した一方、杉浦はトレード先の日本ハムで開花、原もここ数年は伸び悩み気味だ。
●中日 60点
2010 大野雄大 投手 佛教大
2011 高橋周平★ 内野手 東海大甲府高
2012 福谷浩司 投手 慶応大
2013 鈴木翔太* 投手 聖隷クリストファー高
2014 野村亮介 投手 三菱日立パワーシステムズ横浜
2015 小笠原慎之介* 投手 東海大相模高
2016 柳裕也★ 投手 明治大
2017 鈴木博志* 投手 ヤマハ
2018 根尾昂★ 内野手 大阪桐蔭高
2019 石川昂弥★ 内野手 東邦高
10年代は最初の8年中7年が投手、残りの2年は高校生野手に入札。クジ運も最初の入札では4勝3敗といい方で、18年は4球団競合で根尾、19年も3球団競合で石川を引き当てた。最大の成果は故障中だったのを敢えて指名した大野で、今や日本球界を代表する左腕になった。時間はかかったものの高橋も好選手に成長し、柳もまずまず。福谷も浮き沈みが激しいながら抑え、先発の両方で結果を出した。一方、単独指名した野村はわずか3年で戦力外。この時、山崎康晃(亜細亜大→DeNA)を指名予定だったのを直前で方針変更したとも言われ、歴史的な失敗となった。鈴木翔も浮上できぬまま戦力外となり、根尾や石川もまだ一軍の実績はないとあって、現時点では低い評価とならざるを得ない。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。