争奪戦必至のチェン・ウェイン。中日、ロッテ時代の”無援護”ぶりを振り返る

争奪戦必至のチェン・ウェイン。中日、ロッテ時代の”無援護”ぶりを振り返る

9年ぶりの日本復帰でもチェンの“病気”は治らず。ここまで援護がないのも、もはや驚異的なレベル? 写真:SLUGGER

「勝利数では、投手の実力は分からない」――セイバーメトリクスが浸透してきた昨今、この考え方は常識に近いものになっている。

 例えば、ある投手が9回1失点10奪三振で完投しても、味方打線が1点も取れなければ敗戦投手になってしまう。一方で5回5失点といまひとつの内容でも、打線がそれ以上に援護すれば勝利投手になれる。

 勝ち星は、投手の能力でコントロールできる領域とは言えないのである。そして「実力はあるのに勝てない」投手が、オフのストーブリーグを盛り上げている。今季メジャーから9年ぶりに日本球界復帰を果たしたチェン・ウェインだ。彼ほど”無援護病”な投手はなかなかお目にかかれない。
  10月14日の楽天戦で3282日ぶりの日本復帰マウンドを踏んだチェン。1回裏に藤原恭大が先頭打者ホームランで幸先よく先取点をプレゼントするなど、出足は最高だった。しかし4回に追いつかれると、6回には勝ち越し本塁打を献上してここで降板。6回2失点と試合を作って味方の反撃を待った。しかし、打線はその後沈黙して1対4で敗戦。チェンの復帰戦は黒星スタートになった。

 続く21日の西武戦も6回まで投げて1失点。打線もチェンが降板した後の7回に1点を加えたのみで、最後はサヨナラ負けを喫した。第3&4戦は最強ソフトバンク。チェンは8回を4安打2失点と素晴らしいピッチングで完投したが、打線は千賀滉大の前に無失点12奪三振に抑え込まれ、0対2で2敗目がついた。そして翌週も、ロッテ打線は千賀に封じられ、6回2失点のチェンは連敗。結果的に日本復帰初勝利はなく、シーズンを終えた。

 4先発で0勝3敗。この数字だけを見れば「失格」と言われそうだが、全登板QS(6回以上を投げて自責点3以下)を記録して防御率2.42。井口資仁監督が「申し訳ない」と口にしたのも納得で、チェンがマウンドにいる時に味方打線が得点を挙げたのは26イニングでわずか1点のみだった。どんな大投手でも、援護1点で勝ち星を重ねるのは不可能な話だ。

 もっとも、チェンの無援護病は中日時代から”発症”していたものなので、多くのファンには既視感すらあったのではないだろうか。特に大ブレイクした2009年、チェンはある意味、衝撃的な成績を残している。
  前年に先発ローテーション入りを果たしたチェンは、09年の開幕戦を6回無失点で初勝利、6点の援護ももらった。続く登板も7回無失点に抑えたが、今度は一転して援護ゼロ。「ここまでは良くあること」で済むかもしれない。

 しかし、チェンは7登板連続で7イニング以上を投げて3失点以下、その間の防御率は1.55と素晴らしい成績を残す一方で、勝ち星はわずか1勝(2敗)。唯一の白星は自身の9回完封のみという事態で、味方の援護はすべて2点以下とランサポートが異常に少なかった。

 結局、チェンはシーズン防御率1.54で 、2位の吉見一起(2.00)に大差をつけてタイトルを獲得したものの、わずか8勝(4敗)。チームメイトの吉見が16勝で最多勝を手にしたのとは対照的な結果だった。しかも8勝のうち4勝は完封で記録したものだったから、「自力で勝った」と言ってもいい試合が多かったのだ。

 しかも、この年の中日打線は両リーグ4位の得点数を誇り、決して貧打だったわけではない。実際、チェンが登板した7月17日の横浜戦では12点の大量援護をしたこともあった(もっとも、この時はチェンが完封しているというのも、皮肉めいているのだが)。しかし、12試合で援護点は2点以下とタイミングよく得点ができず、チェンが記録したQS19回のうち11度で勝ちがつかなかった。
  中日でも、ロッテでも、これが1シーズンに限らず、時が経ってもこれだけ援護がなく”勝てない”というのは、何か不思議な力は働いているようにすら思えてくる。そして、“チェン2世”と呼んでもいいような投手が出てきた。現球界を代表する本格派右腕・山本由伸(オリックス)だ。

 昨シーズン、史上8人目の高卒3年目以内での最優秀防御率に輝いた山本。しかし、その勝敗は8勝6敗。防御率1.95という数字からは想像できないほど、”勝てなかった”。7回以上を投げて1失点以下で白星がつかなかった試合が5回もあり、特に4月3日のソフトバンク戦では8回1死までノーヒッター、9回0封しながら勝利投手にもなれなかった。

 2リーグ制となった1950年以降、防御率1点台でタイトルを獲得した投手で2ケタ勝利ができなかったのは、チェンと山本を含めて5人しかいないというのも、両者の”無援護病”がいかに重症か分かるだろう。

 チェンを巡っては阪神をはじめ複数球団が獲得を狙っているという。もしチェンが新しい球団に移っても勝てないようだと、本当に「そういうもの」だと割り切るしかないのだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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