ホークスの元絶対エース・斉藤和巳が柳田でも千賀でもなくモイネロをMVPに推す理由【独占インタビュー】

ホークスの元絶対エース・斉藤和巳が柳田でも千賀でもなくモイネロをMVPに推す理由【独占インタビュー】

混戦が予想されるパ・リーグのMVPレース。下馬評では柳田(右上)、千賀(右下)が高い中で、ホークスをよく知る斉藤は、中継ぎ左腕のモイネロを大本命に挙げている。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

来る17日の『NPBアワーズ2020』で今季のMVPが発表される。パ・リーグでは、圧倒的な強さでリーグ優勝&日本一を達成したソフトバンク勢の受賞が有力視される。安打数、OPS(出塁率+長打率)リーグ1位をマークした主砲の柳田悠岐、あるいは勝利・防御率・奪三振の投手三冠に輝いた千賀滉大を推す声が多い中、かつてホークスで絶対的なエースとして君臨した斉藤和巳氏は“第三の男”をMVPに推している。

――斉藤さんが考える今年のパ・リーグMVPは誰でしょうか? また、誰が受賞するか“ガチ予想”もお願いします。

「モイネロ一択です。ガチな予想もモイネロだと思っています。もしMVPがモイネロでなければ、僕は『今年のMVP投票は何なんだ!』と疑ってしまう感じですよ。今年のモイネロでダメなら、『中継ぎがMVPを獲るのは無理』ということになると思うんです。

 打者なら柳田、投手では三冠の千賀が分かりやすいですね。ただ、千賀はシーズン当初は打たれることが多く、7回まで投げ切ることもできませんでした。確かに中盤以降は調子を上げて、後半の大事な試合で勝ったり、圧巻のピッチングを見せたりと、印象は確かにいいかもしれません。最終的に投手三冠を獲ったわけですし、もちろん僕も千賀を評価し、リスペクトしています。しかし、フルシーズン活躍していたか? と言われれば、そうではないと。
 ――確かに、千賀投手はパ・リーグでは斉藤さん以来14年ぶりの投手三冠を獲得した一方で、開幕に出遅れたこともあってイニング数は規定投球回ギリギリ(121.0回)でした。

「僕は、MVPは『トータルで判断』するものだと考えています。一時期に良かったというだけではなく、年間を通してしっかり成績を残し、『この選手がいてくれて本当に良かった』と思える選手がMVPと呼べるのではないでしょうか。そうなると、先に言った通り、序盤戦に不安定だった千賀はどうかと。

 一方、モイネロが開幕からいなかったらホークスはどうなっていたのかと考えると、ゾッとします。7回、8回は勝敗にダイレクトに直結する本当に大事なイニングです。今年のホークスは7回にいろいろな投手が起用されました。甲斐野央が故障し、代わりの投手も好不調が激しかった中でも、8回をモイネロがしっかり締めてくれた。もちろん、9回には抑えの森唯斗がいますが、今年は走者を背負う場面も多く、打たれることも少なくなかった。

 そもそも、中継ぎ投手というのは年間を通してのコンディション作りが本当に大変で、特にコロナ禍の今年は例年以上に難しかったと思います。個人的には、今年のモイネロのピッチングと存在感でMVPを受賞できなければ、『中継ぎの評価って何なのか』と、逆に記者の皆さんに問いたいくらいですね。

――MVPはMost Valuable Playerの略ですが、斉藤さんの考える「Valuable(価値のある)」な選手というのは、「一年を通して活躍した」ということですね。

 だから、今年のホークスにとって最も「Valuable」な存在はモイネロだと思います。もし記者投票で、柳田に票が流れるのであれば、まだ納得はできます。しかし、千賀も含めてモイネロ以外の投手に票が行くのは……。千賀がどうこう言っているわけではなく、それだけ今年のモイネロが際立っていた、ということです。
 ――では、斉藤さんの目に今年の“ギータ”はどう映りましたか?

「もちろん本当に素晴らしかったです。今年は印象的なホームランも多く、確かにMVPを獲っても不思議はないと思います。ただ、自分はピッチャー出身なだけに、モイネロの『価値』がより上に見えてきますね。もし僕が現役の時にモイネロと森がいたら、おそらく毎試合、2人に感謝していると思います(笑)。

 例えば、千賀の完投は今季1試合だけでした。他の17試合はすべてリリーフに託しているわけです。投手三冠も、モイネロというスーパーリリーフがいたからこそ成し遂げられたという点は見逃せません。僕には、どの角度から見てもMVPはモイネロ以外考えられないんだけどなぁ(笑)。

 今年はコロナの影響でコンディション管理が難しく、例年以上に慎重な投手運用をしていたのは間違いありません。ホークスの投手で規定投球回に乗ったのは千賀だけでしたが、それも最終戦でしたよね。それに、調整が難しかったのはリリーフ陣も同じです。しかも先発と違って、彼らは毎日球場に来てブルペンで待機しなければならない。僕は現役の時から、先発ピッチャーってこんなに優遇されていいのかなって思っていました。僕自身、完投が多いピッチャーではなかったので、いつも『この勝利は僕だけじゃない、みんなのおかげ』だと伝えていました。
  確かに投手三冠は素晴らしいことです。ただ、それはリリーフの助けがあったからこそだった、というのはファンの方にも忘れてほしくないですし、知ってほしいです。例えば、大野雄大(中日)、菅野智之(巨人)のように、完投完投、連勝連勝というのであれば、「モイネロには悪いけど、千賀かなぁ」となったかもしれませんけどね。

 もし、記者の方がモイネロではなく千賀を上にするようであれば、リリーフの評価はまだまだ低いんだなと感じるでしょう。これだけ1試合を投げ抜く投手が少なくなっている中、負担や重要度が増すリリーフはもっと評価されるべきで、いつまでも先発投手が花形だとは思えないですね。

 これは別の角度からの話ですが、モイネロのようなリリーフが大きな賞を受賞することで、多くの投手に新たな目標が生まれると思うんです。「ちゃんと評価してくれる人がいる」と伝わると思いますし、将来、プロ野球を目指す子供たちにも大きなメッセージになるはずです。そういう意味でも、モイネロがMVPを受賞するのかどうか注目したいですね。

【プロフィール】
さいとう・かずみ/1977年11月30日、京都府京都市出身。1995年ドラフト1位で福岡ダイエーホークスに指名されてプロ入り。2003年にパ・リーグ18年ぶりの20勝の大台をクリアし、最多勝・最優秀防御率・最高勝率のタイトルを獲得して沢村賞に選ばれた。06年にはプロ野球史上初の開幕15連勝を達成するなど、史上7人目の投手五冠を達成して自身2度目の沢村賞を受賞。13年限りで現役を引退し、現在は評論家・解説者として活躍。ツイッターIDは「@kazumi_saitoh」、YouTubeチャンネルも開設している。

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