秋山翔吾――メジャーの壁にぶつかった安打製造機がダルビッシュとの対決でつかんだ糸口【2020日本人メジャーリーガー総括】

秋山翔吾――メジャーの壁にぶつかった安打製造機がダルビッシュとの対決でつかんだ糸口【2020日本人メジャーリーガー総括】

日本ではコンスタントに3割を打っていたが、メジャー1年目は打率.245。来季は本領発揮に期待したい。(C)Getty Images

西武時代は2015年に216安打を放ってシーズン最多記録を樹立し、手にしたタイトルは最多安打4回、首位打者が1回。通算打率3割を超える打撃技術だけではなく、選球眼も備えた日本球界最高の安打製造機は、3年2100万ドルという好条件でレッズに迎えられた。

 過去の日本人打者と照らし合わせてもメジャーへの適応に苦慮しない巧打者として、球団は高く評価。パワーはあっても出塁能力が高くない選手が多い打線のリードオフとして白羽の矢を立てられる形となった。

 ところが、いざ開幕すると7・8月は打率.196の低空飛行。不慣れな高めへの速球にスウィングが合わず、9月上旬まで打率2割前後を行ったり来たりするなど精彩を欠いた。プレーオフ進出当落線上のチームで打順は徐々に下がり、スタメンを外れることも増えた。高くそびえ立ったメジャーの壁。それでも、巻き返しに向けての糸口はつかんでいた。

 転機は、8月29日に実現したダルビッシュ有(カブス)との邂逅だ。日本人初の最多勝を手にする投手との対戦を前に自らのバッティングを徹底的に見直し、ノーステップも試すなど、状況を変えようと必死になった。迎えた6回の第3打席、反応でインハイの速球をライト前へ弾き返した。
 「まだ数字は出ていないかもしれないけど、今の数字の打者じゃ絶対にない」。試合後にダルビッシュが残した言葉を裏付けるように9月は調子が上向き、月間打率.317と出塁率.456はチームベスト。遅ればせながら期待された役割を果たし、プレーオフ進出にも貢献した。

 短すぎたシーズンで苦しみ抜いた末に、2年目への光明もはっきりと見えた。打率こそ.245で額面通りの働きとは言えないが、「少しずつ投手のスピードに慣れてきている。相手がどういう投球をしてくるのか分かってきた」と語ったように、出塁率.357は及第点。開幕当初は不安を見せていたレフトの守備でも、8月にフェンスへ激突しながらの背走キャッチで魅せ、ゴールドグラブのファイナリストにノミネートされた。

 良い兆候を結果に変えていくには、一にも二にもレギュラーに定着して「走攻守すべてで、毎日できるだけ多くのプレーをアピールすること」が求められる。速球への対応も向上させたい。決して長距離タイプではないとはいえ、ハードヒット率(初速95マイル以上の打球の割合)はMLBでも最底辺クラス。ここでも、9月以降は改善の兆しを見せている。2年目の本領発揮に期待したい。

文●藤原彬

【著者プロフィール】
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

関連記事(外部サイト)