【1989世代の現在地】菅野と中田が投打で世代をリード、広島3連覇に貢献した「タナキクマル」、遅咲きの花を咲かせた阿部…

【1989世代の現在地】菅野と中田が投打で世代をリード、広島3連覇に貢献した「タナキクマル」、遅咲きの花を咲かせた阿部…

左から菊池、菅野、中田、阿部。30歳を超えた89世代は球界の中心的存在となっている。写真:徳原隆元、田中研治、塚本凛平(THE DIGEST写真部)

「1989年世代(1989年4月2日〜90年4月1日生まれ)」がいずれも30歳を過ぎて成熟期に差し掛かり、その多くがキャリアの岐路を迎えている。これまでの活躍と、彼らの現在地を確認しよう。

■明暗がくっきりと分かれた“ビッグ3”×2
 この世代でプロ入り前から大きな関心を呼んだのが、2組の“ビッグ3”だ。まずは、2007年高校生ドラフトで1位指名を独占した3人が世間の耳目を集めた。

 大阪桐蔭高で1年時から注目を浴びた中田翔は、当時の高校生歴代最多となる通算87本塁打の記録を引っ提げて日本ハムに入団。本塁打王になかなか届かないもどかしさはあるが、昨季は3度目の打点王に輝くなど主砲の責務を果たしている。大きな故障もなく、12年間で記録した通算257本塁打と937打点は堂々の世代最多だ。

 成田高からロッテに入団した唐川侑己は、高卒1年目から先発ローテーション入りを果たした。だが、先発としては伸び悩み、18年の救援転向を境にカットボールを投球の軸に据えて新境地を開いている。昨季は初登板から17試合連続無失点を記録し、セットアッパーとして防御率1.19の好成績でチームの快進撃を支えた。
  佐藤由規は仙台育英高時代に唸りを上げるような剛速球で甲子園を沸かせた。ドラフトでは5球団から1位指名されてヤクルト入り。10年には当時の日本人最速161キロを叩き出すなどファンに夢を与えた。だが、翌年以降は故障に苦しみ、ヤクルトを自由契約になって移った地元球団の楽天でも輝きは取り戻せず。昨季終了後に2度目の戦力外通告を受けた。

 4年後の11年ドラフトでは、3人の大学生投手が即戦力として脚光を浴びた。

 菅野智之は東海大で世代トップの評価を集めるまで成長したが、11年ドラフトで交渉権を獲得した日本ハムへの入団を拒否し、翌年のドラフトで巨人入りした。開幕13連勝を飾ったプロ8年目の昨季は通算100勝の節目にも到達して、自身2度目のMVPに選出。沢村賞も2度受賞し、手にした個人タイトルは10個と、積み上げた実績は同世代で群を抜く。

 明治大から広島に入団した野村祐輔は、プロ1年目に防御率1.98の活躍で新人王を受賞。16、17年も2点台の安定感でチームのリーグ優勝に貢献した。通算77勝は菅野に次ぐ世代2位だが、近年は怪我がちでフルシーズンをまっとうできていない。
  東洋大で伸びのある速球に磨きをかけた藤岡貴裕は、ドラフトで3球団から1位指名された。ロッテ入団後は1年目から先発ローテーション入りを果たしたが、2年目以降は目立った活躍ができず。日本ハムを経て、巨人に所属した昨季限りで現役を終えた。

■投打とも玄人好みする実力派が目立つ

 プロ入り後に、めきめきと実力を伸ばしている選手が多いのは「89年世代」の特徴だ。

 丸佳浩(巨人)は広島時代に走攻守の三拍子揃ったバランス型として頭角を現した。2年連続でMVPを受賞した18年には、歴代4位の130四球を選びながらリーグ2位の39本塁打を放つなど、近年は打力での貢献度が高い。昨季までは5年連続でリーグ優勝を達成。ゴールデン・グラブ賞に7回選出され、通算1355安打と打率.282で世代をリードする。

 田中広輔と菊池涼介は、丸とともに“タナキクマル”として16年から広島のリーグ3連覇を牽引した。田中は16〜18年にいずれも全試合出場を果たして、17年には盗塁王を獲得。菊池はずば抜けた守備力を誇り、プロ2年目から8年連続でゴールデン・グラブを受賞。昨季は二塁手で史上初となる守備率10割の快挙を成し遂げた。
  抜群の選球眼とバットコントロールの良さが持ち味の中村晃(ソフトバンク)は、一軍での実働10年で6度も日本一を経験している。昨年はロッテとのクライマックスシリーズでMVPに選ばれると、日本シリーズで優秀選手賞を受賞。短期決戦で仕事人の存在感を存分に見せつけた。

 ロッテ時代にリーダーシップを発揮した鈴木大地は、楽天へ移籍した昨季に通算1000安打を達成。プロ2年目以降はわずか4試合しか欠場せず、チーム事情にあわせて内複数ポジションをこなす汎用性の高さでも貢献している。その鈴木と昨年からチームメイトになった島内宏明は、打率を大きく上回る出塁率の高さが売りで、印象よりも貢献度の高いいぶし銀と呼べる。このオフはFA権を行使せず新たに4年契約を結んだ。
 “アジャ”の相性で親しまれる井上晴哉(ロッテ)は、18〜19年に日本人では球団20年ぶりの2年連続20本塁打をクリア。しかし、昨季は思うような結果を残せず、涙を流す場面もあった。その井上と日本生命でチームメイトだった小林誠司(巨人)も、昨季は怪我などで苦しんだ。かつて侍ジャパンに選ばれた実力で正捕手の座を奪い返したい。

 新人年からフル回転した益田直也(ロッテ)の通算526登板は世代最多だ。昨季は史上5人目の通算100ホールド&100セーブに到達した。嘉弥真新也(ソフトバンク)は4年連続で50登板をクリアして防御率2点台の成績を残し、左のワンポイントとして立場を確立している。
  89世代の「変わり種」は阿部寿樹(中日)だろう。26歳でプロ入りするも、最初の3年間は鳴かず飛ばず。しかし、29歳で迎えた19年に二塁のレギュラーをつかむと、打率10傑入り。昨季はチームの日本人で最多の13本塁打を放った。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

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