藤浪晋太郎が開幕投手を託された必然。奪三振率「12.60」が示す“かっこいい”ドクターKへの期待

阪神は今季開幕戦で藤浪晋太郎を開幕投手に指名 矢野燿大監督の決断は必然か

記事まとめ

  • 阪神は今季開幕戦となるヤクルト戦の先発マウンドに、藤浪晋太郎を指名することを決定
  • 過去2年間で挙げた白星はわずか1勝だが、矢野燿大監督の決断は“必然"とも
  • 昨季は開幕前に女性らとの会食を行い、自身を含めて新型コロナに罹患している

藤浪晋太郎が開幕投手を託された必然。奪三振率「12.60」が示す“かっこいい”ドクターKへの期待

藤浪晋太郎が開幕投手を託された必然。奪三振率「12.60」が示す“かっこいい”ドクターKへの期待

阪神の開幕投手が内定した藤浪。苦しみ続けた右腕が新たに達した境地とは。写真:山手琢也

ついにこの男が開幕投手の大役を手にすることになった。阪神は今季開幕戦となる3月26日のヤクルト戦の先発マウンドに、藤浪晋太郎を指名することを決めたようだ。過去2年間で挙げた白星はわずか1勝。しかし、阪神の、矢野燿大監督の決断は“必然”だったようにも思えてくる。

 大阪桐蔭高で春夏連覇の偉業を達成した藤浪は、2012年ドラフトで阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテの4球団競合の末に阪神への入団が決まった。そして高卒1年目からその才能を遺憾なく発揮し、セ・リーグ高卒新人では江夏豊以来46年ぶりとなる10勝をマーク。そして3年目の2015年には、史上9人目の高卒1年目から3年連続2ケタ勝利に加え、リーグ最多7完投&4完封、221奪三振王で初タイトルを手にした。しかも、高卒3年目での200奪三振突破は、自身が比較されてきたダルビッシュ有以来2人目の快挙でもあった。
  あまりに順調な歩みを見せていた天才だったが、この年をピークに成績は徐々に悪化していく。イップスが疑われるほど制球難が深刻になり一軍と二軍を行き来。2015年オフの契約更改では球団史上最速で1億7000万円まで昇給していたが、わずか1登板に終わった19年オフには半減以上となる6300万円まで下がった。

 さらに昨季は開幕前に女性らとの会食を行い、自身を含めて新型コロナに罹患。ピッチングで見返したかったが4連敗スタート、9月5日の広島戦では球団ワースト11失点の大炎上で涙するなど、あの頃の輝きは消え失せたかに思えた。

 だが、ここで藤浪は終わらなかった。9月末にリリーフ配置換えで一軍再昇格を果たすと、自慢の剛速球がうなりを上げてセットアップに就任。そして10月19日のヤクルト戦では、球団最速記録を更新する162キロをマークしてみせる。こうして自信をつかんでいくと、10月28日の中日戦はブルペンデーの“先発”として再転向。押し出し四球こそあったが4回1失点にまとめ、次の先発登板は6回無失点、そして最終11月11日のDeNA戦も5回ゼロ封の好投を見せたのだった。
  中継ぎ配置換え後の3先発は15イニングを投げて自責点ゼロ、21三振。奪三振率は驚異の12.60に達し、セ・リーグ平均(7.70)を上回るのはもちろん、昨季NPB1位の千賀滉大(ソフトバンク/11.08)をも凌駕する数字だった。もちろん少ないイニング数とはいえ、19年に千賀が樹立した奪三振率のプロ野球記録「11.33」を塗り替える可能性があるとしたら、そのポテンシャルを含めれば藤浪しかいないのではないか。

 そして研鑽も惜しまない。キャンプでは頻繁にトラックマン(弾道測定機器を差し、球速はもちろんリリースポイントやボールの回転数、回転軸などの情報も見ることができる)のデータで投球をチェックし、真っすぐとカットボールの中間球“スラッター”やスプリットの精度を高める姿を見せた。さらに、今季から高校時代を思い出すワインドアップも導入。大きく振りかぶる姿に、「かっこいい」と誰よりも“メロメロ”だったのが他でもない矢野監督だった。
 “ニュー藤浪”の今季の実戦登板は12回を投げて1失点。3月5日のソフトバンク戦では4回3安打2四球無失点、ピンチの場面もあったが以前のように崩れることなく封じ切り、最速158キロ、149キロの高速スプリットで絶対王者を抑え込む姿は、まさにエースのそれだった。

 今シーズンはストレートの割合を減らし、昨季被打率.107のカットボール(スラッター)の割合を増やす予定だという。空振りを取る球種だけでなく、ゴロを打たせて長打のリスクを減らすという意味でも確かな選択に思われる。

 持っている資質は間違いなく球界トップクラスだった。しかし、それを生かせない時期にもどかしさを感じたファンも少なくなかっただろう。ただ、もがき苦しんだことで、天才に新たな気づきをもたらした。「知」と「経験」が融合した藤浪に期待しているのは、阪神ファンにとどまらないのではないか。9年目の再ブレイクに、注目していきたい。

構成●新井裕貴(THE DIGEST編集部)

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